1990年代の初めと言えば、まだネット以前の時代です。出張で何年かぶりの日本行きが決まったので、かつてロンドンに駐在していた日本人の親友と東京で再会しようと手紙を送りました。すると、F&M(フォートナム&メイソンズ)のケーキを買って来てくれという依頼付きの返信。病気になってしまった義母のために、彼女が以前から好きだった「あのケーキ」を買って来てもらいたいとのこと。しかし、「あのケーキ」とはどんなものであるのか、日本に帰国して数年経った友人は頭の中でそのケーキをイメージできるものの、その特定は困難でした。出発まで時間も無いので、国際電話で話すと、「スポンジ・ケーキなの?それともドライフルーツの入ったローフかな?ティ・ブレッドかな?」と尋ねたところ、「四角い缶に入っていて、どちらかと言えば、たくさんのドライフルーツが入ったパウンド・ケーキかなあ」というぼんやりした回答。
「イギリス人がパウンド・ケーキを知らない」という予想外の展開に困惑した当方は、「パウンド・ケーキってイギリスの伝統的なデザートじゃないの?紅茶と一緒に出される午後茶の定番のひとつじゃないの?」と、質問の枠を広げてみましたら、「ショートブレッドとか、スコーンとか、ビッキー(ビスケット)のことかしら? それなら、あの辺にいろいろとありますよ」とのこと。「いやいや、そういうもんじゃなくて、ドライフルーツのたくさん入った缶入りのローフはどの辺にありますか? 日本では、1ポンドの重さの材料を混ぜてケーキ・ティンの型で焼かれたものがパウンド・ケーキと呼ばれていますので、それを手掛かりにします」 と質問を変えると、店員はドライフルーツのローフを扱う売り場まで案内してくれました。しかし、そのパッケージには、ドライフルーツ・ケーキとティ・ブレッドが併記されていて、どこにもパウンド・ケーキとは書いてありませんでした。仕方なく、ドライフルーツのティ・ブレッドを購入して日本の友人の土産にしました。そして、友人曰く、「これじゃないけど、‥‥まあ、ありがとう」という顛末に至りました。
もしかしたら、イギリスでは、パウンド・ケーキという呼び名の変化には、技術革新やらレシピの変更やら、歴史的な背景があるのかもしれないという気もしていました。「イギリス人がパウンド・ケーキを知らない」ことは、たまに話題になることですので、当方の周囲のイギリス人たちに数十年に渡って聞き続けた結果、聞いたことはあるけど使わない、あるいは知らないとのこと。 イギリスで現地化した当方のコネクションは、仕事関係、交友関係、親類など、それなりに広範囲のイギリス人です。むしろ、カナダ、豪州などコモン・ウェルス(イギリス連邦)内やアメリカなどの英語文化圏で使われている呼び名で、イギリス国内ではスポンジ・ケーキと呼ぶことが一般的のようです。実際には4種の材料を1ポンド分ぶち込んだだけではおいしいスポンジ・ケーキにはなりません。イギリスのスポンジ・ケーキとパウンド・ケーキとでは、見た目は似ているかもしれませんが、レシピが異なるのだったら、食感も異なるはずです。
以下、引用。
昔のコトバが、本場以外の場所で根付いてしまうことは歴史的にも随所で起きています。たとえば、ネット以前の時代では、駐在などで本国を離れた時点で、本国文化との接触を完全に断つことになります。あるいは、日本の情報が在外邦人に届くまで、かなり時間が掛かります。そして、在外日本人は日本出国以前に使われていた何年も前の流行り言葉(死語や古いギャグ)をそのまま使い続けるので、数年後に帰国すると、時代と流行と現実から乖離した言葉を使っていることに気づかされます。いわゆる浦島太郎状態ですね。当方の例を言えば、70,80年代の「ナウい」とか、「そーなんです、川崎さん」という死語を90年代に使っていたり、日本に戻るその度におニャン子クラブとかAKB48とかが、新鮮だったりして、帰郷後しばらくの間は意味不明の存在でした。そしてなお、在外生活者同士では、昔の価値観と昔の流行語で言葉を交わし合うのです。ブラジルの日系移民とその子孫たちが、古き良き正しい日本語を使うこともその一例です。つまり、イギリスではパウンド・ケーキのレシピと呼び名が変化していても、いくつかの理由によって、今日までにその呼び名が日本、アメリカ、そしてイギリス連邦内で定着し、パウンド・ケーキ自体はイギリスを離れた土地で、独自に展開をしていったという可能性が考えられます。
また、戦後から1970年ごろまで六本木に存在したイギリス大使館女子寮「レイディズ・メス」(拙著「イギリス大使館の地下室から」を参照)で、賄いシェフをされていた鈴木沙奈枝さんの話では、日本人の言うパウンド・ケーキというコトバは、寮に住むタイピストや秘書などのイギリス人女性職員には通じなかった。やはり、ティ・ブレッドやローフと呼んでいたということです。歴代の大使夫人たちは、知っていても、使わなかったのかもしれませんが、戦後直後の女性職員たちは知らなかった可能性が考えられます。
そして、先日(2021年5月)、現役の大使公邸シェフの吉田さんに伺ったところ、彼らシェフの間では、紅茶フレーバーやドライフルーツを入れたものでもパウンド・ケーキと呼ぶとのことです。一方で、当方のお茶仲間だった前大使のマデン夫人はローフと呼んでいました。
さらに、コロナ以前のことですが、たくさんのイギリス人が集まる立ち席のドリンクス・パーティに、招待された日本人が手作りのパウンド・ケーキを持ち込んでいました。それを摘まむイギリス人に“Do you fancy the pound cake?” 「そのパウンド・ケーキは好きかい?」と聞いてみたら、“Pound cake? Never heard of it. It`s just a fruit cake” 「パウンド・ケーキ?なにそれ?聞いたことがないよ。これはフルーツ・ケーキでしょ」と言い切られました。日本のパウンド・ケーキ事情を彼らに説明すると、「日本人は知っているけど、イギリス人は知らない英語」として、当方の所属組織内のイギリス人の間でしばらく話題になっていました。
パウンド・ケーキという呼び名が、イギリスではほとんど使われなくなったことと、イギリス以外の英語圏と日本に残されたことには、言葉の歴史の妙味を感じます。長年日本を離れて生活してきた当方の場合は、プロ野球の横浜ベイスターズを、無意識に川崎大洋ホエールズと言ってしまうことと似ているような気がします。如何なものでしょうか。
イギリスの義妹がつくったレモン・ケーキ。レモン・パウンド・ケーキと呼びたい方はどうぞご自由に。アイシングとかシュガーコーティングとは、和食で言えば「追い砂糖」になるわけです。イギリス人は男女問わず、この甘さを強く求めます。当方は勧められて(そんなに甘いもんばかり食べられないよ、と)困ります。2016年の統計では、イギリス人一人当たりの砂糖消費量は世界第7位です。ご参考まで
イギリス人はパウンド・ケーキを知らない?
親友の言葉を手掛かりに、日本に出張する数日前、当時事務所のあったハノヴァ―・スクウェアからF&Mまで足を運んでみました。午後茶(アフタヌーンティ)のお茶菓子として、いろいろなケーキ類が売られていますが、まったく見当がつかないので、さっそく店員に質問。「パウンド・ケーキはどこ?ドライフルーツのいっぱい入ったやつ」ところが、イギリス人の女性店員に返された言葉は意外なものでした。「パウンド・ケーキ?聞いたことがありませんねぇ」と応えるなり、近くを通りかかった他の女性店員に、彼女が同じ質問をしてみると 「パウンド・ケーキ?叩き潰したケーキ?(笑)それは何?」という反応。もちろん、その彼女もイギリス人です。「イギリス人がパウンド・ケーキを知らない」という予想外の展開に困惑した当方は、「パウンド・ケーキってイギリスの伝統的なデザートじゃないの?紅茶と一緒に出される午後茶の定番のひとつじゃないの?」と、質問の枠を広げてみましたら、「ショートブレッドとか、スコーンとか、ビッキー(ビスケット)のことかしら? それなら、あの辺にいろいろとありますよ」とのこと。「いやいや、そういうもんじゃなくて、ドライフルーツのたくさん入った缶入りのローフはどの辺にありますか? 日本では、1ポンドの重さの材料を混ぜてケーキ・ティンの型で焼かれたものがパウンド・ケーキと呼ばれていますので、それを手掛かりにします」 と質問を変えると、店員はドライフルーツのローフを扱う売り場まで案内してくれました。しかし、そのパッケージには、ドライフルーツ・ケーキとティ・ブレッドが併記されていて、どこにもパウンド・ケーキとは書いてありませんでした。仕方なく、ドライフルーツのティ・ブレッドを購入して日本の友人の土産にしました。そして、友人曰く、「これじゃないけど、‥‥まあ、ありがとう」という顛末に至りました。
日本人の思い込み…でもなさそうな…
ところで、「イギリス人がパウンド・ケーキを知らない?」とはどういうことだろう。と、F&Mで買い物したその日の夕方、狐につままれたような気持ちで帰宅し、妻(英人)にF&Mでの事と次第を告げると、「パウンド・ケーキね。あれは日本人の使う英語。私たちはローフとかケーキとかティ・ブレッドとは呼んでも、パウンド・ケーキと言うことはありませんよ」 とのこと。この時点で、当方はイギリス生活を8年間経験していましたが、はじめてパウンド・ケーキというコトバを使ったわけです。一方で、妻は日本で4年間生活したことがあったうえに、彼女の仕事関係では、日比谷界隈のホテルなどで高級なアフタヌーンティを頂く機会もあったので、日本のパウンド・ケーキ事情を知っていました。当方が質問しなかったために、それまで話題にのぼらなかったようです。思い返してみれば、よくケーキを作る義母の口からも、イギリスで誰かにティに呼ばれた時でも、「パウンド・ケーキ」というコトバは聞いたことがありません。 日本人の皆様なら、思わず「パウンドケーキ」と呼びたくなる代物でしょうか。家人(イギリス人)が焼いた飾り気のないすっぴんのローフです。家人は週一のペースでなにかしらのデザートを作っています。たくさんのナッツやソルタナスなどドライフルーツを入れて焼いたり、気が向いたらアイシングしたり、いろいろな技を見せてくれます。
もしかしたら、イギリスでは、パウンド・ケーキという呼び名の変化には、技術革新やらレシピの変更やら、歴史的な背景があるのかもしれないという気もしていました。「イギリス人がパウンド・ケーキを知らない」ことは、たまに話題になることですので、当方の周囲のイギリス人たちに数十年に渡って聞き続けた結果、聞いたことはあるけど使わない、あるいは知らないとのこと。 イギリスで現地化した当方のコネクションは、仕事関係、交友関係、親類など、それなりに広範囲のイギリス人です。むしろ、カナダ、豪州などコモン・ウェルス(イギリス連邦)内やアメリカなどの英語文化圏で使われている呼び名で、イギリス国内ではスポンジ・ケーキと呼ぶことが一般的のようです。実際には4種の材料を1ポンド分ぶち込んだだけではおいしいスポンジ・ケーキにはなりません。イギリスのスポンジ・ケーキとパウンド・ケーキとでは、見た目は似ているかもしれませんが、レシピが異なるのだったら、食感も異なるはずです。
家人はデザートをほとんど食べない当方のリクエストにも応えてくれます。果物とジェリーが混ざった、見た目も爽やかなトライフルだけは好物なのです。作り方によっては、干からびたスポンジケーキやスポンジ・フィンガーズを入れて、ソースに含ませてジェリーで固める技もあります。
真相はベーキング・パウダーに隠されている?
パウンド・ケーキは、英語圏以外でも次のような名前で知られています。フランスでは、Gâteau Quatre-Quarts。卵、小麦粉、砂糖、バターを均等に使うとのこと。 “4つの4分の1 “を意味します。 スペインでは ケーク・セコ。ドイツではサンドクーヘン。どれも識字率の低い近世以前に付けられたネーミングとレシピであることは判りました。そして、出版年代不明で、且つ出典も定かではないのですが、アメリカで発行されたある料理レシピの中に、次のような無署名のガイダンスを見つけました。以下、引用。
パウンド・ケーキは、バター、砂糖、卵、小麦粉をそれぞれ1パウンドずつ使用していたことに由来し、生地に混ぜる空気以外の材料は一切使っていない。文字の読めない人が多かった(識字率の低い)時代には、レシピを覚えるのに便利だった。 起源は18世紀初頭にさかのぼり、4種類の材料を同じ分量だけ使うという覚えやすさが好まれた。やがて、19世紀になって膨らし粉(ベーキング・パウダー)が開発されてからは、ケーキのスポンジ化(ふわふわ化)が進んだ。この文献(原文は英文)からは、パウンド・ケーキはベーキング・パウダーの開発と導入によって、イギリスでは、スポンジ・ケーキとその呼び名を変えたのではないかと察せられます。つまり、イギリス人たちは、レシピ名そのもののパウンド・ケーキと、ベーキング・パウダーを含んだスポンジ・ケーキとを区別するために、次第にパウンド・ケーキと呼ばなくなったと考えられます。その一方で、明治時代に日本でパウンド・ケーキが紹介された時点では、まだ使われていて、完全には忘れ去られていなかったのかもしれません。あるいは、本国からの輸入に頼るしかない海外生活ではベーキング・パウダーが使えない、あるいは不足することもあったので、1800年代末期から1900年代前半までの日本に駐在するイギリス人の社会では、まだパウンド・ケーキという呼び名を使っていたことが考えられます。
すなわち、パウンド・ケーキは1700年代にイギリスで生まれ、 ハンナ・グラッセの「アート・オブ・クッカリー」(1747年に出版)で紹介されている。 やがて、1800年代半ばには、パウンド・ケーキのレシピは他の材料を追加し始める。1900年代には、ベーキング・パウダーが追加され、イギリス国内ではパウンド・ケーキではなく、スポンジと呼ぶ者も増えてきた。 そして、バター、卵、小麦粉、砂糖はまだ使用されているが、その割合はケーキが重たくならないように、いろいろなレシピで調整されるようになった。
理想的なパウンド・ケーキは、ベーキング・パウダーを使わなくても、テクスチャ(食感)がスポンジ状で繊細でバランスが良く、しっかりした仕上がりになるべきである。自家製ケーキにありがちな、ふくらみすぎて乾燥した感じや、紙のようなごわごわ食感になってはならない。店頭の箱ものにありがちな、エクストラ・モイストや、焼きたてのプリンのようなしっとり感でもなければ、パサパサ感もない調和のとれたテクスチャに仕上がることが理想であり、それには手慣れた技術と(新鮮な)粉の質が決め手となる。
スライスした甘さ抑えめのローフをトーストしていただくというのは、地味だけどオシャレだなあと身も心も満足したことがあります。当方は溶かしバターとメイプルシロップで頂きました。
昔のコトバが、本場以外の場所で根付いてしまうことは歴史的にも随所で起きています。たとえば、ネット以前の時代では、駐在などで本国を離れた時点で、本国文化との接触を完全に断つことになります。あるいは、日本の情報が在外邦人に届くまで、かなり時間が掛かります。そして、在外日本人は日本出国以前に使われていた何年も前の流行り言葉(死語や古いギャグ)をそのまま使い続けるので、数年後に帰国すると、時代と流行と現実から乖離した言葉を使っていることに気づかされます。いわゆる浦島太郎状態ですね。当方の例を言えば、70,80年代の「ナウい」とか、「そーなんです、川崎さん」という死語を90年代に使っていたり、日本に戻るその度におニャン子クラブとかAKB48とかが、新鮮だったりして、帰郷後しばらくの間は意味不明の存在でした。そしてなお、在外生活者同士では、昔の価値観と昔の流行語で言葉を交わし合うのです。ブラジルの日系移民とその子孫たちが、古き良き正しい日本語を使うこともその一例です。つまり、イギリスではパウンド・ケーキのレシピと呼び名が変化していても、いくつかの理由によって、今日までにその呼び名が日本、アメリカ、そしてイギリス連邦内で定着し、パウンド・ケーキ自体はイギリスを離れた土地で、独自に展開をしていったという可能性が考えられます。
これらは、いわば四角いケーキ・ティンを使っていないだけで、パウンドケーキ類とほぼ同じレシピですね。我が子らも14,5歳になるまでに、週末になると台所に立って、誰かのためによく作っていました。作る理由は、誕生日や親類の家へのお土産。お父さんは要らないからね、と伝えても、イギリスでは高価なそば粉を見つけて作ってくれました。残念ながら、味は覚えていません。
さて、イギリス大使館のシェフたちは…
東京のイギリス大使館で、2008年ごろまでの約40年間大使公邸の料理番をされていた元ヘッド・シェフの畠山さんに伺った話では、「我々には料理を教えてくれるイギリス人シェフがいませんでした。そのため、明治時代から日本人の先輩たちが書き溜めてきた料理文献に頼るしかなかったのです。我々料理人は公邸の厨房内でパウンド・ケーキというコトバは使っていました。しかし、歴代の大使夫人たちは常にティ・ブレッドとかローフと呼んでいて、決してパウンド・ケーキというコトバを使うことはありませんでした」とのこと。 パウンドケーキには、何かが足りません。実際のところ、バターや卵が高価な時代もあったわけです。
また、戦後から1970年ごろまで六本木に存在したイギリス大使館女子寮「レイディズ・メス」(拙著「イギリス大使館の地下室から」を参照)で、賄いシェフをされていた鈴木沙奈枝さんの話では、日本人の言うパウンド・ケーキというコトバは、寮に住むタイピストや秘書などのイギリス人女性職員には通じなかった。やはり、ティ・ブレッドやローフと呼んでいたということです。歴代の大使夫人たちは、知っていても、使わなかったのかもしれませんが、戦後直後の女性職員たちは知らなかった可能性が考えられます。
そして、先日(2021年5月)、現役の大使公邸シェフの吉田さんに伺ったところ、彼らシェフの間では、紅茶フレーバーやドライフルーツを入れたものでもパウンド・ケーキと呼ぶとのことです。一方で、当方のお茶仲間だった前大使のマデン夫人はローフと呼んでいました。
さらに、コロナ以前のことですが、たくさんのイギリス人が集まる立ち席のドリンクス・パーティに、招待された日本人が手作りのパウンド・ケーキを持ち込んでいました。それを摘まむイギリス人に“Do you fancy the pound cake?” 「そのパウンド・ケーキは好きかい?」と聞いてみたら、“Pound cake? Never heard of it. It`s just a fruit cake” 「パウンド・ケーキ?なにそれ?聞いたことがないよ。これはフルーツ・ケーキでしょ」と言い切られました。日本のパウンド・ケーキ事情を彼らに説明すると、「日本人は知っているけど、イギリス人は知らない英語」として、当方の所属組織内のイギリス人の間でしばらく話題になっていました。
スポンジフィンガーの替わりになるのはスティック状のビスケット類です。この作り方にも飽くなき甘さへの追及の精神が伺われます。
パウンド・ケーキという呼び名が、イギリスではほとんど使われなくなったことと、イギリス以外の英語圏と日本に残されたことには、言葉の歴史の妙味を感じます。長年日本を離れて生活してきた当方の場合は、プロ野球の横浜ベイスターズを、無意識に川崎大洋ホエールズと言ってしまうことと似ているような気がします。如何なものでしょうか。
Mary Berryはイギリスのデザートの権威。目次にはFamily cakesというカテゴリーのひとつとしてPound Cakeを載せています。まったく使われない呼び名ではないのですね。実際のレシピでは1/2poundずつの分量を使います。彼女の名前とPound cakeで検索すれば、レシピ動画が観られます。
マック木下
ロンドンを拠点にするライター。96年に在英企業の課長職を辞し、子育てのために「主夫」に転身し、イクメン生活に突入。英人妻の仕事を優先して世界各国に転住しながら明るいオタク系執筆生活。趣味は創作料理とスポーツ(プレイと観戦)。ややマニアックな歴史家でもあり「駐日英国大使館の歴史」と「ロンドン の歴史散歩」などが得意分野。主な寄稿先は「英国政府観光庁刊ブログBritain Park(筆名はブリ吉)」など英国の産品や文化の紹介誌。