11月になるとイングランドでは広葉樹は紅葉することもなく、一斉に緑の葉のまま散り始めます。一説では、緑葉植物から生じる活性酸素を抑えるために光合成を停止するために葉が紅葉するということですが、冬をすぐに迎えるイングランドでは、紅葉するほどの陽光が無いために、広葉樹の葉は緑のまま、せいぜい黄葉になって落ちてしまうようです。当方、科学者ではありませんが、ざっくり述べるとそんなところでしょう。笑。
英国に住み始めて意外だったことのひとつとして思い出すのは、イングランドのかなり北東部にあるヨークシャー(カムチャッカ半島の南端とほぼ同緯度)まで、普通に栃の木などの広葉樹があることでした。義父の出身地なので、何度か足を運んだのですが、イングランドの植生とあまり変わらないかもなあ、と思ったものです。日本では秋田が広葉樹の北限と言われていますが、実際に秋田に行ってみるとドングリが小粒なので、これは寒冷地仕様なのかな、と子供心に思ったものです。
イングランドの秋は日本と比べて短く、東京の冬に相当する期間は、11月から4月までの半年間に当たると思います。もちろん、あくまで個人的な意見です。灼熱の陽光を浴びることもなく、ビタミンD不足な気分のまま秋や冬を迎えると、まだ日の出ている時間に散歩しようという衝動に駆られます。
英国の秋の空は低くてどんよりしています。落ち着いているとも言えますが、空に押し潰されてロング・フェイス(冴えない顔)になって、伏し目がちに足元だけを見ながら散歩している人たちもたくさんいます。
それでも、一緒に散歩する相手が犬だったり、幼い子供たちだったりすると、どんな人でもちょっと元気が出るようです。犬との散歩は単にルーティーンとなることも多いでしょうけど、我が子らと一緒の散歩は半ば遊びながら、そして語らいながらでした。先ほどのような広葉樹の北限や紅葉のメカニズムを子らに話したのは、彼らが小学生の高学年になってからだったと記憶しています。同時に、在英邦人が季節ごとの英国の習慣や文化に触れたのは、子供たちの学校や生活のお蔭だったと思います。
パブリック・フットパスの中には、放置された落ち葉が、やがて山積みの枯れ葉となってハイカーはその上をサクサクと歩きます。一方、何でも遊びにしてしまう子供たちは、その枯葉を脚で蹴り上げながら前進し、自分の身長の高さまで枯葉を舞い上げては「スウィッシ、スウォッシ」と元気な声を上げています。枯葉を勢いよく舞い上げることで、一緒に歩くロング・フェイスの大人たちも、いつの間にか元気になってきます。
途中に栃の実が落ちていれば、コンカーという遊びの道具に使うために数個拾って行きます。栃の実はドングリ同様に落葉樹の実ですから、食用になるとのことですが、英国人に聞くと「それは食糧難の時代の話」とのこと。
年中同じ場所に生息すると言われる鳥、マグパイ(カササギ)の声が聞こえてくると、英人たちは子供の時に教わった詩で韻を踏みます。 One for sorrow, Two for joy, Three for a girl, Four for a boy, Five for silver, Six for gold, Seven for a secret, Never to be told. (一度鳴いたら孤独、二度鳴くのは楽しいから、三度鳴いたら女の子が来た、四度鳴いたら男の子が来た、五回鳴いたら銀を見つけた、六回鳴いたらそれは金、七回鳴いたら(貴金属の在り処は)内緒です。絶対誰にも言いません)もちろん、深い意味のある内容ではありませんが、マグパイは貴金属など光るモノが好きで、勝手に人家に侵入して、指輪などを盗ってしまうから気を付けろという知恵を授ける詩でもあります。マグパイは、他にも信仰に関わる迷信にたくさん登場します。
ケント州の片田舎で育った英人の妻は、幼い頃の毎週末に彼女の父親と一緒に歩く近所の散歩がとても楽しみだったそうです。ゴルフ場と林檎農園沿いにある3,4キロほどの距離のパブリック・フットパスが定番だったとのことです。大人になってからのハイキングや散歩は、子供の頃の原体験の繰り返しです。英国人は家族と一緒に散歩しては、子供の頃の疑似体験を繰り返して心の安寧を図っているのかもしれません。
10月下旬、くまのプーさんで有名なアッシュダウン・フォレスト近辺の景色。
何気に義父が写り込んでいます。
路上の枯葉を一掃してくれる秘密兵器。ロンドンの街中で大活躍しています。
英国に住み始めて意外だったことのひとつとして思い出すのは、イングランドのかなり北東部にあるヨークシャー(カムチャッカ半島の南端とほぼ同緯度)まで、普通に栃の木などの広葉樹があることでした。義父の出身地なので、何度か足を運んだのですが、イングランドの植生とあまり変わらないかもなあ、と思ったものです。日本では秋田が広葉樹の北限と言われていますが、実際に秋田に行ってみるとドングリが小粒なので、これは寒冷地仕様なのかな、と子供心に思ったものです。
英国にも、紅葉ならぬ黄葉は観られます。
牧草地の向こうに見える広葉樹林は50年近く掛けて人工的に再生(?)されました。しかし、牧草地になってから200年以上を経ているため、景観は戻っても、絶滅種は戻って来ないので、生物多様性が伐採当時の状態まで復活することはないそうです。
イングランドの秋は日本と比べて短く、東京の冬に相当する期間は、11月から4月までの半年間に当たると思います。もちろん、あくまで個人的な意見です。灼熱の陽光を浴びることもなく、ビタミンD不足な気分のまま秋や冬を迎えると、まだ日の出ている時間に散歩しようという衝動に駆られます。
英国の秋の空は低くてどんよりしています。落ち着いているとも言えますが、空に押し潰されてロング・フェイス(冴えない顔)になって、伏し目がちに足元だけを見ながら散歩している人たちもたくさんいます。
季節は影の長さでも判ります。冬は皆の脚を長くしてくれると、幼い頃の息子は喜んでいました
それでも、一緒に散歩する相手が犬だったり、幼い子供たちだったりすると、どんな人でもちょっと元気が出るようです。犬との散歩は単にルーティーンとなることも多いでしょうけど、我が子らと一緒の散歩は半ば遊びながら、そして語らいながらでした。先ほどのような広葉樹の北限や紅葉のメカニズムを子らに話したのは、彼らが小学生の高学年になってからだったと記憶しています。同時に、在英邦人が季節ごとの英国の習慣や文化に触れたのは、子供たちの学校や生活のお蔭だったと思います。
パブリック・フットパスの中には、放置された落ち葉が、やがて山積みの枯れ葉となってハイカーはその上をサクサクと歩きます。一方、何でも遊びにしてしまう子供たちは、その枯葉を脚で蹴り上げながら前進し、自分の身長の高さまで枯葉を舞い上げては「スウィッシ、スウォッシ」と元気な声を上げています。枯葉を勢いよく舞い上げることで、一緒に歩くロング・フェイスの大人たちも、いつの間にか元気になってきます。
スウィッシ、スウォッシと枯葉を蹴り上げるついでに、美しいキノコ類も蹴り上げて、その胞子を吸い込み中毒になった例もあります。足元に注意して蹴り上げましょう。
途中に栃の実が落ちていれば、コンカーという遊びの道具に使うために数個拾って行きます。栃の実はドングリ同様に落葉樹の実ですから、食用になるとのことですが、英国人に聞くと「それは食糧難の時代の話」とのこと。
これがコンカ―(Konker)です。ほとんど栗の実と同じですが、もっと固くて、皮も剥き難くて、甘味に至っては栗ほどではありません。コンカ―を使った伝統的な遊びは、こちらのウェブでご覧ください。
年中同じ場所に生息すると言われる鳥、マグパイ(カササギ)の声が聞こえてくると、英人たちは子供の時に教わった詩で韻を踏みます。 One for sorrow, Two for joy, Three for a girl, Four for a boy, Five for silver, Six for gold, Seven for a secret, Never to be told. (一度鳴いたら孤独、二度鳴くのは楽しいから、三度鳴いたら女の子が来た、四度鳴いたら男の子が来た、五回鳴いたら銀を見つけた、六回鳴いたらそれは金、七回鳴いたら(貴金属の在り処は)内緒です。絶対誰にも言いません)もちろん、深い意味のある内容ではありませんが、マグパイは貴金属など光るモノが好きで、勝手に人家に侵入して、指輪などを盗ってしまうから気を付けろという知恵を授ける詩でもあります。マグパイは、他にも信仰に関わる迷信にたくさん登場します。
拙宅の庭にもよく現れます。一度は窓を開けていたら、その10㎝の隙間へと滑降して飛び込んで来ました。そのとき、テーブルの上にはきらきら光る新品のボルトとナットーが数個置かれていました。IKE〇社の組立家具を作る準備中だったと思います。
ケント州の片田舎で育った英人の妻は、幼い頃の毎週末に彼女の父親と一緒に歩く近所の散歩がとても楽しみだったそうです。ゴルフ場と林檎農園沿いにある3,4キロほどの距離のパブリック・フットパスが定番だったとのことです。大人になってからのハイキングや散歩は、子供の頃の原体験の繰り返しです。英国人は家族と一緒に散歩しては、子供の頃の疑似体験を繰り返して心の安寧を図っているのかもしれません。
マック木下
ロンドンを拠点にするライター。96年に在英企業の課長職を辞し、子育てのために「主夫」に転身し、イクメン生活に突入。英人妻の仕事を優先して世界各国に転住しながら明るいオタク系執筆生活。趣味は創作料理とスポーツ(プレイと観戦)。ややマニアックな歴史家でもあり「駐日英国大使館の歴史」と「ロンドン の歴史散歩」などが得意分野。主な寄稿先は「英国政府観光庁刊ブログBritain Park(筆名はブリ吉)」など英国の産品や文化の紹介誌。