クリスマス・ソングと言うと、歌手の稲垣潤一さんや山下達郎さんなど、恋人との出会いをロマンチックに歌いあげる日本の歌謡曲も含まれるのでしょうが、クリスマス・ソングの一部クリスマス・キャロルとは讃美歌を主にクリスマスの時期に歌うことです。
敬虔なキリスト教信者として近所で認められている義両親は、地域の日曜学校の先生をしていますし、彼等にとって年間の宗教行事のすべてが生活の一部になっているので、12月の土曜日の夜になると「8時だよ!全員集合」という老舗のコメディ番組でもないのですが、近所の信者数名(大体8~10名)と伴にキャロル・シンギングに出掛けます。このキャロリングとも言われる活動には地域差があるようで、本来はクリスマス・イヴの24日の晩にだけ行われる地域が多いようです。
この在英邦人も80年代に住み始めた頃は、毎年クリスマス前には義両親と一緒に夜な夜な出掛けたものです。つまり、英語の讃美歌を彼等と一緒に歌うのです。各家庭をランダムに訪れノックをします。その家人がドアを開けた瞬間に玄関先でキャロルを合唱するのです。そして、一曲歌い終えると、家人は献金してくれます。そして、歌う側はもちろん、訪問されて聴く側もどちらも幸せな気分になります。実はキャロル・シンギングの目的はこのお金集めなのです。そのお金はクリスマスでも家を持たない人々のために行われる炊き出しなどのチャリティ資金になるのです。
“ Mr. Bean ” Carol singingの場面(ご参考)
https://www.youtube.com/watch?v=XhaSA4uSuMw
当方のような仏教徒には、托鉢をしてお布施を頂くようにも見えましたが、実のところは隣人や他人など困っている人たちのために行われる活動ですから、ロイヤル・アルバート・ホールなどの大会堂でもファンド・レイジングの目的で大々的なコンサートも行われます。人々の心を一ヵ所に集め、同時に資金も集めるなど、音楽には不思議な魔力さえ感じます。キャロルの場合には人々の気持ちを幸せな方向に同化させる求心力があるのですね。
キャロルは本来、ケルトなどの原住民の民族舞踊曲を発祥としていましたが、キリスト教が普及するにつれ現地文化と融合し、その言葉の意味合いを宗教的に変えていったものです。何万とあるキャロルの歌詞を眺めると、十字軍などの戦争や闘いに勇ましく望む内容もありますが、全体的には歌う者自らが励まされる奨励歌であり、教訓歌でもあります。いくつかのキャロルを歌い終えてから歌詞の意味を考えると教訓本や啓発本を読んだような気分になるのですが、その理由は後ほど…。
ところで、拙娘が赤ん坊の頃、彼女が泣くたびに歌った讃美歌があります。この歌を聴くと、彼女は何故か泣き止んだのです。“ Away in A Manger ”という曲で、歌詞の内容はイエス・キリストの誕生を静かに祝うものです。この歌の特徴は赤ん坊を慈しむ優しさです。「仔牛の嘶(いなな)きで目が覚めても赤子イエスは泣かない」という歌詞は幼子イエスが既に智者であることを示しています。
Away in A Manger from Youtube
https://www.youtube.com/watch?v=9v8vBmbGlis
Away in A Manger song by Julie Andrews
https://www.youtube.com/watch?v=xEWH_M9rZnQ
拙娘がなぜこの歌に特に反応したのかは定かではありませんが、優しさを込めて歌う曲ですので、大人たちの気持ちと心地良さの波長が赤ん坊の娘に伝わったのかもしれません。因みに今年24歳になった娘はこの歌で泣き止んだことなどまったく覚えておりません。
心温まる話の一方で、新約聖書のマタイ伝には幼児殺戮という物騒なくだりが載っています。イエスが生まれた頃のユダヤ国のヘロデ王が「新しい王(イエスは地上の王として考えられたのです)の誕生」を聞くなり、自分の将来を案じて「2歳以下の男児すべてを処刑せよ」と臣下に命じたのです。イエスは両親に連れられて、エジプトへ難を逃れたということです。ただ、この記述があるのはマタイ伝だけで、受難ドラマの材料としてコヴェントリー・キャロルとして紹介されたことや、映画にもなっています。
文字の読めない人々が多かった時代、教会はキリストの物語や聖書の教えを民衆に印象付けるためにいくつかのアイテムを使っています。聖書の話を彫像や絵画やステンドグラスに示し可視化したこともその一つです。歌や合掌はその教えを繰り返し口にすることで、教義を確認するアイテムのひとつとしてキャロルが機能したのです。国家と教会は人心教育のために、神の教えを伝える美しい声や、楽器の奏でる荘厳な音色を民衆に聞かせたのですね。
キャロル・コンサートは毎年11月終わりから12月にかけて開かれます。今年はもう終わってしまったスケジュールですが、今年は以下のウェブのようなイベントがあちらこちらで開かれていましたので、来年のご参考になさって下さい。
クリスマス・キャロル・コンサート
http://www.timeout.com/london/opera-classical/christmas-carol-concerts-in-london-choral
敬虔なキリスト教信者として近所で認められている義両親は、地域の日曜学校の先生をしていますし、彼等にとって年間の宗教行事のすべてが生活の一部になっているので、12月の土曜日の夜になると「8時だよ!全員集合」という老舗のコメディ番組でもないのですが、近所の信者数名(大体8~10名)と伴にキャロル・シンギングに出掛けます。このキャロリングとも言われる活動には地域差があるようで、本来はクリスマス・イヴの24日の晩にだけ行われる地域が多いようです。
教会で行われるキャロル・シンギング。画像はあるパブリック・スクールの聖歌隊に拠るもので、相当上手でした。歌が上手いと褒められて、プロになる人、敬虔なクリスチャンへと導かれる人も少なくありません。
この在英邦人も80年代に住み始めた頃は、毎年クリスマス前には義両親と一緒に夜な夜な出掛けたものです。つまり、英語の讃美歌を彼等と一緒に歌うのです。各家庭をランダムに訪れノックをします。その家人がドアを開けた瞬間に玄関先でキャロルを合唱するのです。そして、一曲歌い終えると、家人は献金してくれます。そして、歌う側はもちろん、訪問されて聴く側もどちらも幸せな気分になります。実はキャロル・シンギングの目的はこのお金集めなのです。そのお金はクリスマスでも家を持たない人々のために行われる炊き出しなどのチャリティ資金になるのです。
“ Mr. Bean ” Carol singingの場面(ご参考)
https://www.youtube.com/watch?v=XhaSA4uSuMw
凍てつく冬の風景の筈ですが、リージェント・ストリートを飾るクリスマス・デコレーションは見事な輝きです。12th nightの1月6日まで飾り付けられます。90年代の初めまで、この銀座並みの街でも不景気に喘いでいたことが嘘のような光景です。サッチャー政権の効果が出て来たのは、ディズニー、ユニヴァーサル・スタジオなどアメリカ資本の導入がひとつのきっかけでした
当方のような仏教徒には、托鉢をしてお布施を頂くようにも見えましたが、実のところは隣人や他人など困っている人たちのために行われる活動ですから、ロイヤル・アルバート・ホールなどの大会堂でもファンド・レイジングの目的で大々的なコンサートも行われます。人々の心を一ヵ所に集め、同時に資金も集めるなど、音楽には不思議な魔力さえ感じます。キャロルの場合には人々の気持ちを幸せな方向に同化させる求心力があるのですね。
キャロルは本来、ケルトなどの原住民の民族舞踊曲を発祥としていましたが、キリスト教が普及するにつれ現地文化と融合し、その言葉の意味合いを宗教的に変えていったものです。何万とあるキャロルの歌詞を眺めると、十字軍などの戦争や闘いに勇ましく望む内容もありますが、全体的には歌う者自らが励まされる奨励歌であり、教訓歌でもあります。いくつかのキャロルを歌い終えてから歌詞の意味を考えると教訓本や啓発本を読んだような気分になるのですが、その理由は後ほど…。
ロイヤル・アルバート・ホールではいくつものキャロルコンサートが開かれます。
この中にはティーン・エイジャーだった拙娘も。何のチャリティであったかは忘れましたが、各校でこのようなコンサートを行い、慈善事業や社会貢献の志を養います。
ところで、拙娘が赤ん坊の頃、彼女が泣くたびに歌った讃美歌があります。この歌を聴くと、彼女は何故か泣き止んだのです。“ Away in A Manger ”という曲で、歌詞の内容はイエス・キリストの誕生を静かに祝うものです。この歌の特徴は赤ん坊を慈しむ優しさです。「仔牛の嘶(いなな)きで目が覚めても赤子イエスは泣かない」という歌詞は幼子イエスが既に智者であることを示しています。
Away in A Manger from Youtube
https://www.youtube.com/watch?v=9v8vBmbGlis
Away in A Manger song by Julie Andrews
https://www.youtube.com/watch?v=xEWH_M9rZnQ
拙娘がなぜこの歌に特に反応したのかは定かではありませんが、優しさを込めて歌う曲ですので、大人たちの気持ちと心地良さの波長が赤ん坊の娘に伝わったのかもしれません。因みに今年24歳になった娘はこの歌で泣き止んだことなどまったく覚えておりません。
クリスマスのお菓子ミンス・パイ。中身はドライフルーツを煮込んで甘くしたものです。クリスマスに相応しく星形が好まれます。拙妻はミンス・パイの中身を自ら作っていました。隠し味は羊羹や柿(または干し柿)です。味にうま味が加わるそうです。
心温まる話の一方で、新約聖書のマタイ伝には幼児殺戮という物騒なくだりが載っています。イエスが生まれた頃のユダヤ国のヘロデ王が「新しい王(イエスは地上の王として考えられたのです)の誕生」を聞くなり、自分の将来を案じて「2歳以下の男児すべてを処刑せよ」と臣下に命じたのです。イエスは両親に連れられて、エジプトへ難を逃れたということです。ただ、この記述があるのはマタイ伝だけで、受難ドラマの材料としてコヴェントリー・キャロルとして紹介されたことや、映画にもなっています。
文字の読めない人々が多かった時代、教会はキリストの物語や聖書の教えを民衆に印象付けるためにいくつかのアイテムを使っています。聖書の話を彫像や絵画やステンドグラスに示し可視化したこともその一つです。歌や合掌はその教えを繰り返し口にすることで、教義を確認するアイテムのひとつとしてキャロルが機能したのです。国家と教会は人心教育のために、神の教えを伝える美しい声や、楽器の奏でる荘厳な音色を民衆に聞かせたのですね。
クリスマスは恋人たちだけのお祭りではありません。家族のお祭りです。ボーイフレンドやガールフレンドが家族のクリスマス・ディナーに混ざることもあります。クリスマスディは12月25日から1月6日までなので、その間に行われる何度かのディナーにこうして家族間で招き合い、将来の結婚に繋がることもあるのです。
キャロル・コンサートは毎年11月終わりから12月にかけて開かれます。今年はもう終わってしまったスケジュールですが、今年は以下のウェブのようなイベントがあちらこちらで開かれていましたので、来年のご参考になさって下さい。
クリスマス・キャロル・コンサート
http://www.timeout.com/london/opera-classical/christmas-carol-concerts-in-london-choral
マック木下
ロンドンを拠点にするライター。96年に在英企業の課長職を辞し、子育てのために「主夫」に転身し、イクメン生活に突入。英人妻の仕事を優先して世界各国に転住しながら明るいオタク系執筆生活。趣味は創作料理とスポーツ(プレイと観戦)。ややマニアックな歴史家でもあり「駐日英国大使館の歴史」と「ロンドン の歴史散歩」などが得意分野。主な寄稿先は「英国政府観光庁刊ブログBritain Park(筆名はブリ吉)」など英国の産品や文化の紹介誌。