イギリスのアンティークやヴィンテージの雑貨には様々なものがありますが、私がマーケットを見ていて、どうしても見逃すことができないものがあります。それは木と金属を組み合わせたもの、特に真鍮を使った雑貨です。この素材の組み合わせは、特に道具として使われるものに多く見られます。木のブラウンと真鍮のゴールドカラーのツートーン。私は、なぜかこの組み合わせが好きで、それが何のためのツールか分からないものでも、ついつい手に取ってしまうのです。そこに時代の流れや道具としての安心を感じているのかもしれません。
今回はそんな雑貨の中で、「天秤ばかり」をご紹介致します。
そして画像は「Postal Scales」。文字通り、郵便物の重さを量る秤です。画像の2つのスケール、年代は違うのですが同じ構造です。「Postal Scales」というと、これは「郵便局で使われていたもの?」とも思いましたが、実際に郵便局で使われていた業務用と思われる大きなものも存在するようです。あくまでも想像なのですが、私の手元にあるものは、当時のオフィスで使われていたものではないでしょうか。現代と違って、郵便物が通信手段として大切だった時代、このスケールは日々の業務でとても大事な役割を果たしていたと思われます。
そしてもう一つの魅力が、実際にバランスが取れた時のゆらゆらとした動きです。実際に動きをご覧ください。
その素材やカラーから見た目はややカタい武骨なイメージですが、この動きには思わず見入ってしまいます。ゆっくりバランスを取りながら、振れ幅が少なくなっていく様子。まるで生きているモノのような感覚さえ覚えます。「武骨さ」と「ゆらゆら」、この2つが分銅式のスケールというアイテムの魅力ではないでしょうか。
年代は定かではありませんが、1900~1920年代ごろと思われます。1900年よりも前の可能性もあります。真鍮の色が年代を感じさせます。
右側の天秤部分に文字が入っており、重さと通貨の表記が見られます。1行目の「NOT EXCEEDING 2 oz 1 1/2 D」はおそらく、「2オンスまでは1 1/2ペンス」(1オンスは約28グラム、ペンスは現在とは違い「d」と表記された1ポンド=240ペンス時代のものと思われます)という意味ではないでしょうか。
支柱部分のデザインはラウンドデザインが特徴的で、細さも相まってとても繊細な感じです。台座の木の色もやや薄く木目が映えて、年代モノの雰囲気をとても感じます。
こちらは真鍮の色に黄色が強く出ているのと、台座の木の色がこげ茶であるために、全体的なトーンが暗めです。男性的な雰囲気、というと伝わるでしょうか。支柱のデザインはラウンドではありますが、太めのシンプルなラインを描いており、しっかりした構造を感じさせます。手前部分にイギリスで作られたという「MADE IN ENGLAND」とおそらく“このスケールはきちんと計測ができる”ことを示す「WARRANTED ACCURATE」の刻印が入っています。どんなサイズでも文字が入ると、引き締まります。
もちろん実際に本体の天秤部分を持っていれば、実用は問題ありません。私がこの分銅セットだけを手に入れたのは、真鍮という金属の魅力と単純にモノとしての魅力です。2つのセットはどちらも1930年代のものと思われます。手に入れた当初は経年変化もあり、かなりくすんでいました。それがアンティーク・ヴィンテージの魅力でもあると私も思うのですが、このアイテムを見た時、どうしても磨いてみたかったのです。そしてポリッシュしてみると・・・。
この輝きにはとても驚きました。これが作られた1930年代当時の姿がタイムスリップして現れたようです。およそ80年も前のものとは思えない魅力を感じます。
「今」という時間に何十年も前の「昔の時間」を取り入れられたら、日々「豊かな気持ち」も運んできてくれそうですね。
今回はそんな雑貨の中で、「天秤ばかり」をご紹介致します。
天秤で手紙を量る時代
「天秤ばかり」と書きましたが、イギリスでは「Scales(スケール)」と呼ばれます。スケールには分銅を使うものや、バネを使ったものなどがあります。どれも魅力的なのですが、私はこの分銅を使ったスケールが特に好きです。量りたいものと釣り合うだけの分銅を、足したり引いたりする作業はとても楽しいもの。置けばすぐに数字が表示されるデジタル式のスケールと違って、ゆったりした時間の中で「量る」ことを楽しむのは、忙しい現代においては贅沢と言えるのではないでしょうか。そして画像は「Postal Scales」。文字通り、郵便物の重さを量る秤です。画像の2つのスケール、年代は違うのですが同じ構造です。「Postal Scales」というと、これは「郵便局で使われていたもの?」とも思いましたが、実際に郵便局で使われていた業務用と思われる大きなものも存在するようです。あくまでも想像なのですが、私の手元にあるものは、当時のオフィスで使われていたものではないでしょうか。現代と違って、郵便物が通信手段として大切だった時代、このスケールは日々の業務でとても大事な役割を果たしていたと思われます。
分銅を使ったスケールの魅力とは
木と真鍮という組み合わせは、見た目の雰囲気としてやや武骨な感じがします。そして真鍮の分量によってはとにかく重い。私が好んで選ぶものはどうも重いものが多いのです。この重さにもモノとしての安心を感じるのです。買い付けでイギリスから日本に送るときに重さは送料にも反映するので、効率は良くないのですが、どうしてもスルーできません・・・。そしてもう一つの魅力が、実際にバランスが取れた時のゆらゆらとした動きです。実際に動きをご覧ください。
文字が入り、年代を感じさせるスケール
使い込まれた年輪を感じさせる真鍮と木
年代は定かではありませんが、1900~1920年代ごろと思われます。1900年よりも前の可能性もあります。真鍮の色が年代を感じさせます。
右側の天秤部分に文字が入っており、重さと通貨の表記が見られます。1行目の「NOT EXCEEDING 2 oz 1 1/2 D」はおそらく、「2オンスまでは1 1/2ペンス」(1オンスは約28グラム、ペンスは現在とは違い「d」と表記された1ポンド=240ペンス時代のものと思われます)という意味ではないでしょうか。
この料金体系はいつ頃まで続いたのでしょうか
そしてこのスケールには画像の分銅が5個ついていますが、単位がグラム(g)なのでオリジナルではないようです。ただもう一つ紹介するスケールと同じグラム単位の分銅セットなので、むしろ現代での使用には問題ありません。 支柱部分のデザインはラウンドデザインが特徴的で、細さも相まってとても繊細な感じです。台座の木の色もやや薄く木目が映えて、年代モノの雰囲気をとても感じます。
テーブルに置いてみたい、落ち着いた雰囲気のスケール
真鍮の直線と台座の曲線に表現されるデザイン性
年代はおそらく1930~1940年代と思われます。上のモデルと比較すると、真鍮の雰囲気や、パーツの形状でやや新しさを感じます。とはいえ、木と真鍮の組み合わせは、変わらぬヴィンテージの味わいを十分に作っています。 こちらは真鍮の色に黄色が強く出ているのと、台座の木の色がこげ茶であるために、全体的なトーンが暗めです。男性的な雰囲気、というと伝わるでしょうか。支柱のデザインはラウンドではありますが、太めのシンプルなラインを描いており、しっかりした構造を感じさせます。手前部分にイギリスで作られたという「MADE IN ENGLAND」とおそらく“このスケールはきちんと計測ができる”ことを示す「WARRANTED ACCURATE」の刻印が入っています。どんなサイズでも文字が入ると、引き締まります。
「MADE IN ENGLAND」
「WARRANTED ACCURATE」
そして台座の形状は手前・両サイドが曲線で作られています。このスケールは全体のダークトーンと真鍮が出す男性的な部分と、台座の曲線デザインの柔らかさのバランスが大きな魅力です。こんなスケールがテーブルにあると、「ちょっと座ってひと息つこうかな」、そんな気分にさせてくれる空間になりそうです。 テーブルに置いてみたい、落ち着いた雰囲気のスケール
スケール関連でもう一つご紹介します。スケールには当然欠かせない「Weights」=「分銅」です。 1ポンドから1/4オンスまで形よく揃った分銅
「VICTOR」「ENGLAND」と刻印された黒いメタルの台座
イギリスでスケールというと、実は台所用品として見つけることも多いです。そしてマーケットでは分銅だけのセットでもしばしば目にすることがあります。このセットは形状や「VICTOR」というブランドネームから、おそらくキッチン用のものです。もちろん実際に本体の天秤部分を持っていれば、実用は問題ありません。私がこの分銅セットだけを手に入れたのは、真鍮という金属の魅力と単純にモノとしての魅力です。2つのセットはどちらも1930年代のものと思われます。手に入れた当初は経年変化もあり、かなりくすんでいました。それがアンティーク・ヴィンテージの魅力でもあると私も思うのですが、このアイテムを見た時、どうしても磨いてみたかったのです。そしてポリッシュしてみると・・・。
この輝きにはとても驚きました。これが作られた1930年代当時の姿がタイムスリップして現れたようです。およそ80年も前のものとは思えない魅力を感じます。
ゴールドカラーが鮮やかな分銅は、まるで新品のよう
こちらのセットもキッチン用
私はこの分銅を「ペーパーウェイト」としてお使いいただくことをお勧めしています。例えばオフィスでは、その日の仕事の終わりに翌日のタスクを書き出したメモにこのペーパーウェイトを置いて一日を終える。例えば自宅では、ご家族への買い物や伝言メモの上にこれを置いてみる。このキラッとしたペーパーウェイトを置くことで、それを見た明日の自分やご家族がそのメッセージをしっかり受け取ろうと思うかもしれません。そんなコミュニケーションツールとして、この分銅を使うことができればと思います。 メモと共に置けば洒落たペーパーウェイトに
スケールというアイテムは「計測する」というややカタい語感のあるアイテムですが、昔のモノを見ると現代にはない魅力をとても感じます。「今」という時間に何十年も前の「昔の時間」を取り入れられたら、日々「豊かな気持ち」も運んできてくれそうですね。
富澤利彦
靴・服好きが高じ30代に初めて渡英。以来、会社員時代はずっとブリティッシュスタイル。ファッションから広告・雑貨にも興味は広がり、2016年から妻が始めた「Antiques Harmonics」に本格的に参加。新旧の英国モノを毎日楽しむ日々を過ごしています。
Antiques Harmonics
(アンティークス・ハーモニクス)
いつものファッションを“背伸びしないで新鮮に変える”Men’s/Ladies’アクセサリーをはじめ、企業ノベルテイ、ステーショナリー、レアな鉄道・Royal Mailグッズまで幅広くセレクト。「イギリスらしい/デザイン性がある/くすっと笑える」そんなココロを豊かに満たしてくれるアイテムたちを探し当てては、マーケットや蚤の市、イベントで販売しています。皆さまとお会いできることを楽しみにしております。
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