「ヴィガニュアリィ(Veganuary)」。ネイティブでも初見で発音するのはちょっと難しいという言葉ですが、1月の間中(そして、今月に入ってからも)、イギリス国内で何度も目にし、聞きました。
これは、ヴィーガン(Vegan)と1月(January)を掛け合わせた言葉で、1月の1ヶ月間、ヴィーガン生活を送る、というキャンペーンです。
主催のチャリティ団体ヴィガニュアリィによれば、初めてこのキャンペーンを開始した2014年は3,300人が参加。それが年々増加の一途をたどり、今年の1月には約250,000人がヴィーガン生活にチャレンジしたという統計が出たそうです。
菜食主義として知られる「ヴェジタリアン」は日本でもかなり浸透していると思いますが、「ヴィーガン」というと、言葉自体にまだ馴染みがないかもしれません。
日本では、肉や魚だけでなく乳製品や卵など一切の動物性食品を口にしない「完全(絶対)菜食主義者」という風に紹介されていることが多いようです。
つまり、自分が日頃食べる物を野菜や果物に限るというだけでなく、生活用品の全てにおいて、動物性のものを避け、できる限り植物由来のものを選択するという考え方であり、行動をいうのです。
ヴィガニュアリィのキャンペーンの影響だけでなく、特にここ数年、イギリスではヴィーガンについての関心が高まり、メディアでも取り上げられることが多くなってきました。また、スーパーでもヴィーガン用の商品を扱うところが増えてきて、その種類もかなり豊富になってきています。さらに、レストランでも、ヴェジタリアンに加えて、ヴィーガン用のメニューを出す店を探すのにも、さほど苦労はしなくなったと、ヴィーガンの友人が教えてくれました。
珍しいものとしては、今年1月、ロンドンのヒルトン・バンクサイド・ホテルにヴィーガン・ライフスタイルにあった「ヴィーガン・スイート」という部屋が登場。新聞やインターネットでも話題になりました。
「人々はさまざまな理由でヴィーガン・ライフスタイルを選択しますが、最も一番多い動機としては動物の権利(アニマルライツ)を守るためであることがわかっています。 肉、乳製品や卵を生産する産業において、動物たちが残酷に扱われているのが広く知られるようになってきたことが、イギリスでヴィーガニズムが広がった理由だと思います。」
確かに、私の友人ジョーが10年ほど前にヴェジタリアンになったのも、養鶏場のドキュメンタリーをテレビで見て、鶏へのひどい扱いにショックを受けたからだと言っていたのを思い出しました。
「動物は精肉を生産するために特別に飼育され、殺されます。 乳牛は人工的に授精され、出産したすぐあとに乳児は連れ去られ、乳児が飲むはずだった乳汁を絞り、それを人間が飲んでいるのです。 また、生まれたばかりのオスのひよこは、卵を産むことができないという理由で、生きたまま細断されています。」
ドミニカさんによれば、このような事実を知り、卵や乳製品をも取らないヴィーガンになる人が多いのだそうです。他には、よりヘルシーなライフスタイルの選択のひとつとして、ヴィーガンを選ぶ人もいるとのこと。
ドミニカさんの言葉と同様、イギリスのメディアが伝えるところによれば、Netflix(ネットフリックス)で配信された工場的畜産に関するドキュメンタリー『Cowspiracy: The Sustainability Secret』などの映画も、人々がヴィーガニズムに興味を持つ大きなきっかけになっているともいいます。
ただ、いきなりヴィーガンになるといっても、いったい何を食べたらいいのか、あるいはどういったものがヴィーガンのライフスタイルにあったものなのかを知るのは難しいと思う人も少なくありません。
そんな人たちのために、ヴィーガン・ソサエティでは、VeGuide という無料のアプリを発表し、ヴィーガンに興味のある人たちに情報を提供しています。
「昨年のワールド・ヴィーガン・デイ(11月1日)に発表して以来、すでに23,000ダウンロードを超えています。このアプリでは、毎日ビデオで、レシピや買い物や料理のアドバイスなどを伝えています。多くの人がよりヴィーガン・スタイルを取り入れるのに役立っていると思いますよ。」
とドミニカさんからの答え。
また、イギリスではヴィーガンについての本やヴィーガンの食事のためのレシピ本なども多く出版されており、それらもヴィーガン初心者にとっては参考になっているようです。もちろん、YoutubeやInstagramといったSNSで、インフルエンサーと呼ばれる人々が投稿する動画や画像も、ヴィーガンに関心のある人々に大きな影響を与えています。
イギリスでのヴィーガニズムのムーブメントが今後どのようになっていくのか、注目していきたいと思います。
これは、ヴィーガン(Vegan)と1月(January)を掛け合わせた言葉で、1月の1ヶ月間、ヴィーガン生活を送る、というキャンペーンです。
主催のチャリティ団体ヴィガニュアリィによれば、初めてこのキャンペーンを開始した2014年は3,300人が参加。それが年々増加の一途をたどり、今年の1月には約250,000人がヴィーガン生活にチャレンジしたという統計が出たそうです。
菜食主義として知られる「ヴェジタリアン」は日本でもかなり浸透していると思いますが、「ヴィーガン」というと、言葉自体にまだ馴染みがないかもしれません。
日本では、肉や魚だけでなく乳製品や卵など一切の動物性食品を口にしない「完全(絶対)菜食主義者」という風に紹介されていることが多いようです。
大手スーパーM&Sでは、「プラントキッチン(Plant KItchen)」というヴィーガン向けの商品レンジを発売。ヴィーガンでない人からも好評のようだ。
1944年11月にイギリスで設立されたヴィーガン・ソサエティ(The Vegan Society)によれば、ヴィーガニズム(Veganism)とは、「食物、衣服、その他の目的において、動物から搾取したり、動物を虐待することを可能な限り、実行可能な範囲で排除しようとする哲学および生き方」とされています。つまり、自分が日頃食べる物を野菜や果物に限るというだけでなく、生活用品の全てにおいて、動物性のものを避け、できる限り植物由来のものを選択するという考え方であり、行動をいうのです。
ヴィガニュアリィのキャンペーンの影響だけでなく、特にここ数年、イギリスではヴィーガンについての関心が高まり、メディアでも取り上げられることが多くなってきました。また、スーパーでもヴィーガン用の商品を扱うところが増えてきて、その種類もかなり豊富になってきています。さらに、レストランでも、ヴェジタリアンに加えて、ヴィーガン用のメニューを出す店を探すのにも、さほど苦労はしなくなったと、ヴィーガンの友人が教えてくれました。
珍しいものとしては、今年1月、ロンドンのヒルトン・バンクサイド・ホテルにヴィーガン・ライフスタイルにあった「ヴィーガン・スイート」という部屋が登場。新聞やインターネットでも話題になりました。
商品にヴィーガンのマークがつけられていると、ヴィーガンになったばかりの人でもわかりやすく便利。
スーパーM&Sでヴィーガン商品として販売されているスイートポテトのカツカレーを試してみたが、かなりしっかりとスパイスが効いたカレーは風味もよく、ポテトカツも衣がさくさくとして、とてもおいしい。3.5ポンド。
なぜイギリスで今、ヴィーガニズムがこれほど広まってきたかについて、ヴィーガン・ソサエティの広報担当ドミニカさんに伺いました。 「人々はさまざまな理由でヴィーガン・ライフスタイルを選択しますが、最も一番多い動機としては動物の権利(アニマルライツ)を守るためであることがわかっています。 肉、乳製品や卵を生産する産業において、動物たちが残酷に扱われているのが広く知られるようになってきたことが、イギリスでヴィーガニズムが広がった理由だと思います。」
確かに、私の友人ジョーが10年ほど前にヴェジタリアンになったのも、養鶏場のドキュメンタリーをテレビで見て、鶏へのひどい扱いにショックを受けたからだと言っていたのを思い出しました。
「動物は精肉を生産するために特別に飼育され、殺されます。 乳牛は人工的に授精され、出産したすぐあとに乳児は連れ去られ、乳児が飲むはずだった乳汁を絞り、それを人間が飲んでいるのです。 また、生まれたばかりのオスのひよこは、卵を産むことができないという理由で、生きたまま細断されています。」
ドミニカさんによれば、このような事実を知り、卵や乳製品をも取らないヴィーガンになる人が多いのだそうです。他には、よりヘルシーなライフスタイルの選択のひとつとして、ヴィーガンを選ぶ人もいるとのこと。
ドミニカさんの言葉と同様、イギリスのメディアが伝えるところによれば、Netflix(ネットフリックス)で配信された工場的畜産に関するドキュメンタリー『Cowspiracy: The Sustainability Secret』などの映画も、人々がヴィーガニズムに興味を持つ大きなきっかけになっているともいいます。
ただ、いきなりヴィーガンになるといっても、いったい何を食べたらいいのか、あるいはどういったものがヴィーガンのライフスタイルにあったものなのかを知るのは難しいと思う人も少なくありません。
そんな人たちのために、ヴィーガン・ソサエティでは、VeGuide という無料のアプリを発表し、ヴィーガンに興味のある人たちに情報を提供しています。
アプリを使って、毎日、気軽にヴィーガン生活を始めることができる。Photo: ©︎ The Vegan Society
「どのくらいの人がこのアプリを利用しているのでしょうか?」と質問すると「昨年のワールド・ヴィーガン・デイ(11月1日)に発表して以来、すでに23,000ダウンロードを超えています。このアプリでは、毎日ビデオで、レシピや買い物や料理のアドバイスなどを伝えています。多くの人がよりヴィーガン・スタイルを取り入れるのに役立っていると思いますよ。」
とドミニカさんからの答え。
また、イギリスではヴィーガンについての本やヴィーガンの食事のためのレシピ本なども多く出版されており、それらもヴィーガン初心者にとっては参考になっているようです。もちろん、YoutubeやInstagramといったSNSで、インフルエンサーと呼ばれる人々が投稿する動画や画像も、ヴィーガンに関心のある人々に大きな影響を与えています。
人気のフードマガジンでも、数年前から野菜をテーマにするようになってきた。
イギリスのミレニアル世代の間では「サステナビリティ」「エシカル」「コンシャス」などが行動のキーワードになっていると言われ、現在、フード業界では、そうした層に向けての商品やレストランのメニュー開発が活発になってきています。 イギリスのレストラン業界では、ヴィーガンメニューを考えることが重要になってきている。Photo: ©︎ The Vegan Society
それを受けてか、かつてのヴィーガンといえば、ヒッピーや動物愛護活動家などによる、ニッチでマイナーな存在だといわれていましたが、今やトレンドを超えてメインストリームにまでなる勢いだという人もいます。イギリスでのヴィーガニズムのムーブメントが今後どのようになっていくのか、注目していきたいと思います。
ヴィーガンといえば、野菜、果物、豆類、穀類などが主要の食品となる。意外なようだが、蜂蜜はヴィーガン食品には入らない。Photo: ©︎ The Vegan Society
*アプリVeGuide:iOS版は こちら から | Android™版は こちら から
*ヴィーガンに興味を持って、始めてみたいという方には、ヴィーガンスターターキットというこのページから情報を得ることができます(無料/英語)。
*ヴィーガンソサエティのウェブサイト
*ヴィガニュアリィのウェブサイト
マクギネス真美
英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。
ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。
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