少し気が早いが、コロナ後の世界を考えている。
イギリスでは3月20日に少し緩めのロックダウンとなり、生活必需品を扱う店以外は全てクローズ。外出していいのは食料・日用品や薬の買い物と、一日一回のエクササイズだけとなった。
実は20日以前から出ていた動きではあるが、自主隔離を余儀なくされる高齢者やハイリスクの慢性病などを抱える人たちを助けようと、ボランティアのサポート・グループが全国各地で立ち上げられ、自分たちのコミュニティを中心に「何か助けが必要なら連絡ください」と家にメモを投げ入れる活動が同時発生的に始まった。
SNSプラットフォームをベースに立ち上げられたオンライン・コミュニティの体裁をとるものが多いようだが、実際の活動の場となるのは、自分たちの地域だ。遠くまでは出かけられないので、活動の範囲も自然に自分が暮らすコミュニティ内に限られてくる。買い物代行、犬の散歩、デリバリーのための運転などサポート内容は多岐にわたり、こうしたサポートに助けられている人は多いと聞く。危機的状況において、コミュニティの動きが重要な役割を果たしているのだ。
家に引きこもるようになると、自分自身や家族について、改めて考える時間も自ずと増える。自分の本当に好きなことや、やりたいことはなんだろうか? 家族や友人の大切さをしみじみ感じる人もいるだろう。自主隔離生活が、自分の今いる場所について、目を見開かせてくれるきっかけになりうる、と考えてみてはどうだろうか。
現在、強制クローズさせられている業界の従業員へは、政府から上限月2500ポンドまで給与の8割保障が提示されており、事業オーナーへは最低3ヵ月は家賃の支払いをしなくてすむようサポートが入っている。ただし賃料の支払いは据え置きされているだけで、結局は借金となってのしかかっているわけで・・・。まだまだ業界のロビー活動は続く。
現場では、当初の意気消沈ダメダメ・モードから一転、小さなチャンスを生かしたサバイバル作戦や地域への貢献活動などが広く行われている。いったいどんな活動が行われているのか、飲食店をはじめ、人々の前向きな6つの取り組みついて紹介したい。
今、レストランに来られないなら、将来使えるバウチャーを買ってサポートしてほしい、そんな飲食店の思いが詰まったバウチャー作戦。オンラインで購入する。大好きなレストランを応援し、もう一度あの料理を食べられるようになるまで・・・もっと広まっていいサポート方法だと思う。
ロックダウン直後は完全にクローズしていたレストランが、持ち帰り&デリバリーに切り替えて営業を再開するケースが増えている。これは持ち帰り営業ライセンスがなくても、12ヵ月間は持ち帰りサービスを提供してもいいことになったから。また70歳以上で厳しい自宅隔離を言い渡されほとんど外出できない人のために、割引価格でパブ・メニューをデリバリーしたり、買い物代行をしたりするパブも。テイクアウェイもデリバリーも、安全な方法での受け渡しが工夫されている。
イギリス人が最も恋しがっているものの一つ。それは大勢と一緒にパブで一杯飲むこと。スコットランドが誇るクラフト・ビール・ブランド、BrewDogでは、Zoomを使ったオンライン・バーを設置。18歳以上の大人が登録し、BrewDogのビールを事前にオンライン購入して参加する。創業者2名によるビール・テイスティング、ビールについてのクラス、パブ・クイズ、ビンゴなどのゲーム、自家醸造へのアドバイスなどなど、盛りだくさんの内容だ。バーチャル・バーの設置をしている醸造所は他にもある。ちなみにBrewDogはアルコール消毒ジェルをいち早く製造し、必要な場所に無償提供し始めたブランドでもある。
https://www.brewdog.com/uk/onlinebar
東ロンドンを拠点にしているケータリング会社「Zoe’s Ghana Kitchen」はイベントのキャンセル続きで窮地に。地元チャリティ団体とチームを組み、地元コミュニティに暮らす社会的な弱者への食事を提供する計画を実行するため、クラウドファンディングをセットアップしている。食事の提供はデリバリーなどのサポートを必要とし、サポーターへの支払いをすることで雇用も生み出す仕組み。こういった地域社会への貢献活動は他にも多数見られる。
https://www.crowdfunder.co.uk/
イギリスが誇る無料の国民医療制度、NHSの病院は今、多くの患者を抱え、職員たちは一丸となってフル活動している。スタッフ用のカンティーンが整備されていない病院もあり、長い勤務時間の間に温かい食事にありつけないスタッフが多いことから無料や割引の食事をふるまうサービスが後をたたない。3月27日には「Feed the NHS」をスローガンにしたクラウドファンド・キャンペーンが立ち上がり、数多くのチェーン・ブランドや独立店が参加。クラウドファンドで集まった資金は直接NHS Trustへと送られ、参加レストランへ注文を送って料理を提供してもらう仕組み。また資金を募って一般ボランティアたちがNHSスタッフに無料の食事を提供する活動も全国的に定着している。
SNSにはコロナウイルスにひっかけたジョークやウィットがいっぱい。個人的に元気をもらったのは、「Little Britain」で知られるコメディアンのマット・ルーカスさんが自主隔離中にツイッターで発信した替え歌。手洗いや社会的距離をとることの大切さを、イギリス人が大好きなベイクト・ポテトが指南してくれるという歌で、なかなか楽しいのだ。興味ある方はマットさんのツイッターで。その他にも、たくさんのユーモアがネット上に飛び交っている。「手を洗いすぎて1995年の試験カンペが浮き上がってきちゃったよ」という写真付きのツイートも(笑)。ニヤリとさせられるトイレットペーパー・ネタも多い。
https://www.boredpanda.com/quarantine-coronavirus-jokes
さて、私がいつも観察している飲食業界の動きを少しだけレポートしてみたが、いかがだったろうか(最後のユーモアはおまけ)。
今、経済活動が強制的にストップさせられ、個人や企業への打撃は計り知れない。しかし見方を変えると、世の中がこれまでとは違う道を模索するきっかけになっているようにも見える。果たして経済的な成長だけが、人類の描くべき未来なのだろうか?
ロックダウンが長引けば長引くほど、経済は縮小する代わりに、人の移動が減り、地球は自浄作用を強めていくだろう。平日の昼間だけど、父親と子供の笑い声がどこかの庭から聞こえてくる。世の中は少しだけスローダウンし、家族は同じ食卓を囲む時間が増える。
さきほどコロナウイルスが、自分ができることについて、じっくりと考えるチャンスを与えてくれているのだと書いた。自分自身を幸せにするためにできることは何か。外に向いていた目を内側に向けることで、世界の見え方も変わってくる。人間が幸せに暮らしていくために、本当に必要なものはなんなのだろうか。助け合うことの意味。自分一人では生きられないと気づくこと。
コロナウイルスは、そんな大切なことを教えてくれているようだ。世界がコロナから目覚める頃、人の意識は少しだけ上に向かってシフトしているだろう。
イギリスでは3月20日に少し緩めのロックダウンとなり、生活必需品を扱う店以外は全てクローズ。外出していいのは食料・日用品や薬の買い物と、一日一回のエクササイズだけとなった。
実は20日以前から出ていた動きではあるが、自主隔離を余儀なくされる高齢者やハイリスクの慢性病などを抱える人たちを助けようと、ボランティアのサポート・グループが全国各地で立ち上げられ、自分たちのコミュニティを中心に「何か助けが必要なら連絡ください」と家にメモを投げ入れる活動が同時発生的に始まった。
SNSプラットフォームをベースに立ち上げられたオンライン・コミュニティの体裁をとるものが多いようだが、実際の活動の場となるのは、自分たちの地域だ。遠くまでは出かけられないので、活動の範囲も自然に自分が暮らすコミュニティ内に限られてくる。買い物代行、犬の散歩、デリバリーのための運転などサポート内容は多岐にわたり、こうしたサポートに助けられている人は多いと聞く。危機的状況において、コミュニティの動きが重要な役割を果たしているのだ。
風通しのいい住宅街。一日一回のエクササイズで散歩している人はいっぱいいます。
レストラン、パブ、カフェなどはお客さんに座って楽しんでもらうことができなくなったが、持ち帰りやデリバリーは許されているので細々と営業している飲食店も数は少ないが存在する。そして、そんな飲食店をサポートできるのは、やはり足で通える範囲にいる地元の人々。ここでもキーは、コミュニティ内の活動だと言える。 家に引きこもるようになると、自分自身や家族について、改めて考える時間も自ずと増える。自分の本当に好きなことや、やりたいことはなんだろうか? 家族や友人の大切さをしみじみ感じる人もいるだろう。自主隔離生活が、自分の今いる場所について、目を見開かせてくれるきっかけになりうる、と考えてみてはどうだろうか。
イタリアで始まった「虹のイラスト」運動。UKにも来ています。「すべてうまくいく」
なんてことを日々、考えているわけだが、実際、大打撃を受けているのはイギリスの飲食・小売業界なのだ。彼らはどのように生き残りを画策しているのだろうか。 現在、強制クローズさせられている業界の従業員へは、政府から上限月2500ポンドまで給与の8割保障が提示されており、事業オーナーへは最低3ヵ月は家賃の支払いをしなくてすむようサポートが入っている。ただし賃料の支払いは据え置きされているだけで、結局は借金となってのしかかっているわけで・・・。まだまだ業界のロビー活動は続く。
現場では、当初の意気消沈ダメダメ・モードから一転、小さなチャンスを生かしたサバイバル作戦や地域への貢献活動などが広く行われている。いったいどんな活動が行われているのか、飲食店をはじめ、人々の前向きな6つの取り組みついて紹介したい。
1. バウチャー作戦!
2. テイクアウェイ&デリバリー!
3. オンライン・バー!
https://www.brewdog.com/uk/onlinebar
4. 地元チャリティとチームアップ!
https://www.crowdfunder.co.uk/
5. NHS病院スタッフをサポート!
6. ユーモアで乗り切る!
https://www.boredpanda.com/quarantine-coronavirus-jokes
さて、私がいつも観察している飲食業界の動きを少しだけレポートしてみたが、いかがだったろうか(最後のユーモアはおまけ)。
今、経済活動が強制的にストップさせられ、個人や企業への打撃は計り知れない。しかし見方を変えると、世の中がこれまでとは違う道を模索するきっかけになっているようにも見える。果たして経済的な成長だけが、人類の描くべき未来なのだろうか?
ロックダウンが長引けば長引くほど、経済は縮小する代わりに、人の移動が減り、地球は自浄作用を強めていくだろう。平日の昼間だけど、父親と子供の笑い声がどこかの庭から聞こえてくる。世の中は少しだけスローダウンし、家族は同じ食卓を囲む時間が増える。
さきほどコロナウイルスが、自分ができることについて、じっくりと考えるチャンスを与えてくれているのだと書いた。自分自身を幸せにするためにできることは何か。外に向いていた目を内側に向けることで、世界の見え方も変わってくる。人間が幸せに暮らしていくために、本当に必要なものはなんなのだろうか。助け合うことの意味。自分一人では生きられないと気づくこと。
コロナウイルスは、そんな大切なことを教えてくれているようだ。世界がコロナから目覚める頃、人の意識は少しだけ上に向かってシフトしているだろう。
江國まゆ
ロンドンを拠点にするライター、編集者。東京の出版社勤務を経て1998年渡英。英系広告代理店にて主に日本語翻訳媒体の編集・コピーライティングに9年携わった後、2009年からフリーランス。趣味の食べ歩きブログが人気となり『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)を出版。2014年にロンドン・イギリス情報を発信するウェブマガジン「あぶそる〜とロンドン」を創刊し、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活について模索する日々。