人とのつながり、自然の偉大さと厳しさなど、普段の都会の生活では忘れていることを思い出させてくれます。
この週末はロンドンから北東に電車で約3時間の場所にあるカントリーサイド、ノーフォーク西部に来ています。イギリスの有名なジョークに「ノーフォークに行ってきたって?どうだった?」「Flatだったよ。」(ここでのflatは平らというだけでなく、何もない、つまり、つまらないところだという皮肉も含んでいます。)というものがありますが、確かに山や丘がなく、見渡す限りの平野が広がっています。もう何度も来ていますが、季節ごとに違う表情を見せる自然の美しさに「つまらない」と思ったことは一度もありませんが。
到着してから今までに私がしたことを通してノーフォークをほんの少しですがご紹介したいと思います。
到着して最初の仕事はお茶を入れることと暖炉に火を入れることです。暖炉の火には電気やガスの暖房とは違う、自然な暖かさがあります。暖炉の前には自然と人が集まり、そこで会話が始まります。
夜になると外に出てみます。ロンドンの夜とは違い、外は本当に真っ暗です。空を見上げると、たくさんの星がはっきり見えて、フクロウの声が遠くに聞こえます。
夫が釣りに行っている間、私は少し長い散歩に出かけました。どこまでも広い畑が広がっています。途中、牛がいる牧場を通り過ぎ、いつも生みたての卵を売っているニワトリのいる家の前まで来て、雨が降り始めたので折り返しました。前回大好物のリンゴをあげたのを覚えてくれていたのでしょうか、これまで何度か会っている馬が近寄ってきたので、草をあげると食べてくれました。
私は特にクリスチャンではないのですが、日曜日の朝はみんなと教会へ行きます。礼拝の後は、お茶を飲みながら立ち話が始まります。教会は村人たちの交流の場所でもあるのですね。
私がここでいつも思うことを一言で表現するならば「原点回帰」です。火の暖かさや美しさ、夜の本当の暗さ、動物の命を食べ物としていただいていること、人とのつながり、自然の偉大さと厳しさなど、普段の都会の生活では忘れていることを思い出させてくれることで溢れていて、本当に大切なことは何かについて考えさせられます。こうして時々物事の原点に立ち返ってもう一度自分の生活を見つめ直す機会を与えてくれる、この場所が私は大好きです。
私の仕事についても考えてみました。羊を育てる人、さらにそれを糸にする人がいてこの美しい毛糸がここにあるということ、そして、それを形にしてお客様に届ける役目を担う私は、ものづくりの原点、「使う人を思って心を込めて」いい仕事をしなければと改めて思います。
最後は少し硬い話になってしましたが、少しでも私の大好きな場所の空気をみなさまにお届けできていたら嬉しいです。
アムスベリー加恵
ロンドン留学中にヴィンテージウエアを販売する「Old Hat」ロンドン店でアルバイトをしたことをきっかけに、紳士服に興味を持ち始める。職人の技を身近に見る機会にも恵まれ、英国のクラフツマンシップにも刺激を受ける。カレッジを卒業後、いったん帰国。結婚を機に2012年10月に再渡英、現在ロンドン在住。
夫に作ったニットタイが好評で、夫の友人たちから注文が相次ぎ、2013年11月にオーダーメイドの手編みニットタイを販売する「Bee’s Knees Ties」を立ち上げる。
Bee’s Knees Ties
ロンドンを拠点に、オーダーメイドの手編みのニットタイを制作、販売しています。
色はもちろん、ステッチや結び目の大きさ、長さや太さなど、お客様のお好みをおうかがいお伺いしてから、1本1本、手で編みあげます。素材にもこだわり、大量生産の糸にはない魅力を持つ糸を探し求め、何度も試作を繰り返した後に、品質が良く、ユニークで、長く愛用していただける糸だけを採用しています。手編みならではの親しみやすい風合いが、スーツだけではなく、ニットウエアやツイードにもよく合い、日常の色々なシーンでお使いいただけます。
ロンドンではサヴィル・ロウのテーラー「L G Wilkinson」にてお取り扱いいただいております。
facebook.com/bees.knees.ties
現在、BRITISH MADE青山本店にてオーダーを承っております。また実際にいくつかお手にとって店頭にてご覧頂けます。詳細はお気軽に店頭スタッフまでお訪ね下さい。