ロンドンからのDay trip その7 靴の聖地を訪ねて | BRITISH MADE

London Yarns ロンドンからのDay trip その7 靴の聖地を訪ねて

2016.06.22

先日のSTORIESでノーザンプトンシューズについての対談が掲載されていましたね。
私も友人が行くと言うので、ずっと行きたいと思っていたノーザンプトンの博物館に行ってきました。お目当てはもちろん靴の展示です。

ノーザンプトンの駅から博物館のある町の中心まで約15分歩くのですが、ところどころに周りの建物に比べて古そうな建物があり、近づいて見てみるとそれぞれに説明書きがありました。説明書きによると1675年にノーザンプトンの街で大火事が起こり、多くの建物が焼けてしまったそうですが、大火を逃れた建物がいくつかあり、それに説明書きのプレートが付けられているようです。

20160622_main1 20160622_main2 大火を逃れた建物。通りをよく見ながら歩くとこのような建物が点在しています。

20160622_main3 建物の歴史が書かれたプレート。これには「エリザベス朝時代(1558年 – 1603年)に建てられた建物で、オリバー・クロムウェルがネスビーの戦いの前夜に泊まったことからクロムウェル・ハウスと呼ばれている」と書かれています。

短い歴史散策のあとに博物館に着きました。最初に向かったのはお目当ての靴のコーナーです。ここでは、靴そのものだけでなく、靴を作る工程や構造、歴史などに関する展示も充実しています。この日も2組の小学生のグループが校外学習に来ていて、子供たちが地元の産業について学べる場所でもあるようです。

ノーザンプトンが靴の聖地となった背景には諸説ありますが、一説には土地を流れる川が革のなめしに適していて、その革を求めて靴職人たちが集まり、革靴作りが盛んになったというものです。その後、17世紀のピューリタン革命で軍隊に革靴を供給する役割を担い、その後、1790年代にヨーロッパの各地で戦争があり、その際も軍隊用のブーツを供給していたそうです。最盛期には週に1万から1万2千足のブーツを作れるほどだったそうです。

ここからは少し写真で靴の展示をご覧ください。
*展示物保護のため。館内の照明が暗く、見づらい写真もあるかと思いますがご了承ください。

<靴の変遷>

20160622_main4ローマ時代から1200年代、1300年代の靴
20160622_main51500年代の靴
20160622_main61760年ごろの女性の靴
20160622_main71800年代、1900年代のボタン留めのブーツ
20160622_main8 20160622_main9 20160622_main10近年の靴の数々。某ブランドのアイコン的な靴も展示されています。

<目的別の靴>

20160622_main111920年代の水泳用の靴(現在のビーチサンダル)。
20160622_main12イギリス空軍用のブーツ。それにしても足が長い!
20160622_main13中央と左の茶色のブーツは1900年代に作られた矯正靴(足の長さが左右違う人のために造られた靴。おそらくポリオ患者用だと思います。)。緑のブーツは、見た目は似ていますが、強制靴をデザインに取り入れたもの。
20160622_main14中国の纏足(てんそく)用の靴。
20160622_main15フェティシュ用の靴。
20160622_main16象のために作られた靴。イギリスの技術者ジョン・ホイト氏が象を使ってアルプスを越え、ローマを攻撃したと伝えられるハンニバル将軍の足跡を再現する試みをした際に象の足を保護するために作られたそう。

<革以外の素材>

20160622_main17シルクや刺繍が施された布性の靴。
20160622_main18エイ革で作られたミュール
20160622_main19なんと象の革とサイの角(つま先の部分)で作られています。
20160622_main20ワニ革ではなくワニの足(!)をそのまま使った靴。

<靴にまつわる面白い話>

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この靴は1840年代に作られた靴で、古い家の壁の中から発見されました。15世紀頃から始まった風習に、新しく家を建てるときや改築を行う際に魔除けに壁や屋根などに一足の靴を埋め込むというものがあったそうです。実は最近隣人がお風呂の改装をした際に壁から靴が1足出てきたのですが、魔除けのためだったのでしょうか? 残念ながら隣人の見つけた靴は最近のものでしたが…。

靴の展示のほかには、企画展(この日は不思議の国のアリスの本の挿絵の原画展と子供向けの動物に関する展示が開催されていました。)や、ノーザンプトンの歴史の部屋などがあります。

さまざまなデザインや珍しい靴を見られたのも面白かったのですが、古い時代から現在の靴までの変遷を見ることで、機能性や美しさを求めて試行錯誤を繰り返してきた職人の方々の努力と誇りが感じられました。


Text&Photo by Amesbury Kae

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アムスベリー 加恵

アムスベリー加恵

ロンドン留学中にヴィンテージウエアを販売する「Old Hat」ロンドン店でアルバイトをしたことをきっかけに、紳士服に興味を持ち始める。職人の技を身近に見る機会にも恵まれ、英国のクラフツマンシップにも刺激を受ける。カレッジを卒業後、いったん帰国。結婚を機に2012年10月に再渡英、現在ロンドン在住。
夫に作ったニットタイが好評で、夫の友人たちから注文が相次ぎ、2013年11月にオーダーメイドの手編みニットタイを販売する「Bee’s Knees Ties」を立ち上げる。

Bee’s Knees Ties
ロンドンを拠点に、オーダーメイドの手編みのニットタイを制作、販売しています。
色はもちろん、ステッチや結び目の大きさ、長さや太さなど、お客様のお好みをおうかがいお伺いしてから、1本1本、手で編みあげます。素材にもこだわり、大量生産の糸にはない魅力を持つ糸を探し求め、何度も試作を繰り返した後に、品質が良く、ユニークで、長く愛用していただける糸だけを採用しています。手編みならではの親しみやすい風合いが、スーツだけではなく、ニットウエアやツイードにもよく合い、日常の色々なシーンでお使いいただけます。
ロンドンではサヴィル・ロウのテーラー「L G Wilkinson」にてお取り扱いいただいております。
facebook.com/bees.knees.ties

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