イギリスのデザインを語るうえで、真っ先に取り上げておかなければいけない場所がある(笑)「デザイン・ミュージアム」がそれだ。大英博物館も、ナショナルギャラリーも、自然史博物館もいいが、ロンドンを訪れたならぜひとも足を運んでほしい隠れた観光名所。ここを見学した後に街を歩けば、この国のデザイン・コンシャスな一面をより繊細に感じ取れるはずだ。僕自身、あまりに好きすぎてロンドンに来てから気晴らしに何度も訪れているほど。
常設展のタイトルは「DESIGNER MAKER USER」という。ウェブサイトの記載によれば、「デザイナー、メーカー、ユーザーという三者の関係性を通して、モダンデザインにおける発展の歴史を見ていく」のが狙いだそうだ。展示セクションもこれにあわせて役割ごとに三つに分かれているので順を追って見ていこう。
冒頭でも少し触れたが、ここを訪れた後にロンドンを歩くと、グッドデザインがこれでもかというくらいに目に飛び込んでくるだろう。ひとつひとつ、デザインに込められた意味を考えながら観光するのも悪くはないんじゃないかな。
高級住宅も数多く並ぶケンジントンの一角にある
さて、いうまでもなくデザイン・ミュージアムは「デザイン」をテーマにした博物館。コンラン・ショップでおなじみのテレンス・コンラン氏が創設者で、およそ1年前に場所を移してリニューアルオープンしたばかりだという。1階と地下では企画展が催され、3階には常設展が置かれる。常設展はロンドンにある多くの美術館や博物館と同じく無料だ。これはとてもうれしい。ちなみに企画展は有料(だいたい15ポンドぐらい)だが、値段以上の内容が楽しめる、と個人的には感じている。今までに3回ほど企画展を見ているが、キュレーションがどれも素晴らしかったという記憶しかない(笑) 天井は吹き抜けで開放感がある
閑話休題。今回は、とにもかくにも常設展について紹介できればと思う。常設展のタイトルは「DESIGNER MAKER USER」という。ウェブサイトの記載によれば、「デザイナー、メーカー、ユーザーという三者の関係性を通して、モダンデザインにおける発展の歴史を見ていく」のが狙いだそうだ。展示セクションもこれにあわせて役割ごとに三つに分かれているので順を追って見ていこう。
常設展の入り口には数々のグッドデザインが飾られている
まずはデザイナーだ。ここではイタリアの建築家アーネスト・ロジャースの言葉が引用される。「都市からスプーンまで」。あらゆるスケールの設計に対してデザイナーがたどる思考回路(プロセス)を紹介している。例えば、写真のようにどのようにして道路標識のタイプグラフィーが出来上がっていったか、は非常に興味深かった。 洗練されたタイポグラフィ
次にメーカー。プロダクトを実現する方法、すなわち「どう作るか」をビジュアルで見せるセクションだ。革靴が作られる工程をわかりやすく並べたり、テクノロジーによって製品がどう形となっていくかを表現したり。それぞれにクラフトマンシップを感じさせる展示となっている。 一点ずつ丁寧に展示されている
そして、ユーザー。製品の前に、ユーザーは決定的な力を持つ存在だ。われわれが「どのように使うか」によって製品のデザインも変わるだろう。その「人間と製品の間にある緊張関係」を展示によって明らかにするのがこのセクションの売り。アップルやブラウン、ソニーなどの歴代の製品が並べられており、これだけでも一見の価値があるだろう。 歴代のマック製品がずらり
このように、デザイン・ミュージアムの展示からは多くのことが学べるはずだ。コンパクトにまとまっているので、どれだけ時間をかけても1時間から1時間半ほどで全てを見て回れるだろう。子供と行くのも楽しそうだ。冒頭でも少し触れたが、ここを訪れた後にロンドンを歩くと、グッドデザインがこれでもかというくらいに目に飛び込んでくるだろう。ひとつひとつ、デザインに込められた意味を考えながら観光するのも悪くはないんじゃないかな。
ショップも充実
なお、開催中の企画展『CALIFORNIA Designing Freedom』(2017年10月17日まで)の評価もすこぶる高いようだ。僕自身も実際に行ってきたので、次回はこれにふれたいと思う。 Yuichi Ishino
イギリスをはじめ、欧州と東京を拠点にするデジタルプロダクション/エージェンシー「TAMLO」代表。企業に向け、ウェブメディアの戦略コンサルティング、SNS施策、デジタル広告の運用、コンテンツの制作などを日英を含めた多言語でサポートする。好きな英国ドラマは『フォルティ・タワーズ』。ウィスキーはラフロイグ。