随筆:ケンブリッジで小舟の上から自転車を想う | BRITISH MADE

川合亮平、僕のUK観光道 随筆:ケンブリッジで小舟の上から自転車を想う

2017.10.17

こんにちは。セミ・ヴェジタリアンの川合亮平です。

セミの地上での活動期間よろしく、夏の限られた間だけヴェジタリアンになる人、という意味ではもちろんなく、ほぼヴェジタリアンということです。

自分で選択できる限りにおいてはヴェジタリアン食を選ぶんですが、人のご厚意という不可抗力によって目の前に現れた、生き物の肉に関しては、その肉が躍動していた生前の様子を少し考えつつ、ありがたく頂きます。

そんな僕だからこそ気付きやすいのかもしれませんが、イギリスって日本に比べるとヴェジタリアン文化が著しく発達してるんですよね。スケール感でいうと、イギリスのヴェジタリアン文化がコストコ(COSTCO:英語では“コスコ”って発音しますけど)だとすると、日本のそれは、家の冷蔵庫にある卵入れる部分、というくらいのスケールの違い。

良い観光地の定義とは?

イギリスのほとんどのレストランやカフェには大体ヴェジタリアン・メニューがありますし(ない方が珍しい)、それらがまた美味しいのだな。ふと考えてみると、僕がイギリス滞在を心地よいと思う理由の1つは、 “美味しいヴェジタリアン食にありつけるから”なんだとはたと思い至りました。正味の話が。

ところで、思うんですが、大体のケースにおいて、人が「行ってよかった」と思う観光地(場所)、つまりそれは“良い観光地の定義”とも言えるんだけど、それを決定づけるのは、“味と人”ではないでしょうかね。少なくとも僕はそうなんですよね。

言い換えれば、“五感を通じてどれだけポジティブなインパクトを受けたか”、で、自分の中でその場所の良さが決まってくると思うんですが、味覚って他の感覚に比べてすごく印象に残りやすい、インパクトを受けやすい部分だと思うんですよ。

僕はこれまで(幸運にも)イギリスの中で決して少なくない数の場所を訪れているんですが、それぞれの場所の“行って良かった度”と、その地で食べた食事(そして、出会った人)の好印象度は、比例してるような気がしています。それは、ホテルの満足度が朝食の満足度と比例しているのと一緒です(あくまで僕の場合、ですけど)。まあ、もちろん景色とか雰囲気とか、面白体験とかそういった要素も“訪れて良かった度”に貢献するにはするんですけどね。でも、パンチの破壊力としてはやっぱり多くの場合、“味”が強いのかな、と。

「どんだけ味を力説するんですか、川合さん。普段ロクなもの食べてないからだけちゃいますの?」という声が電脳空間のどこかから聞こえてきそうですが、それは完膚無きまでにスルーします。昨日の晩御飯がスティックパンだったこととかは、絶対誰にも言いませんし。

ケンブリッジに行ってきたよ

20171017-cambridge-01 ケム川に浮かぶパンティング・ボート
先日、初めてケンブリッジを訪れました。街はフレンドリーな雰囲気で、とても心地よかったです。評判通り、というか観光地として大人気なのが納得できました。良い街だった。
今回お世話になったホテルはこちら:Holiday Inn Cambridge
20171017-cambridge-004 20171017-cambridge-007 お部屋は広々として清潔だった
20171017-cambridge-009 朝食もヴァラエティに飛んだ品揃えで美味しかった!
20171017-cambridge-053 ケンブリッジの中心地からバスで20分程のちょっと郊外にあるだけあって、ものすごく広いマンモス・ホテルです。プールやジムや公園などの設備もしっかりそろってて、とってもよかったですよ。おすすめです。3つ星だから子供づれでも全然気を使うことなくリラックスして滞在できるしね。
さて、ケンブリッジって言わずと知れた、いわゆるStudents City(大学の街)ですよね。

Students Cityといえば、ケンブリッジの永遠のライバルであるオックスフォード、そして、僕が今夏訪れたセント・アンドリュース(ケイト妃とウィリアム王子はセント・アンドリュース大に通ってたんです)が思い出されまして、この3つを頭の中で軽く比較してみたんです。

すると、目下のところ、ケンブリッジは僕の中では銅メダルなんですよね。なぜかと考えると・・・・、あ、そうか、今回のケンブリッジ訪問は1泊だったこともあり、ちゃんとした食事をしなかったからだ。
(そして、オックスフォードとセント・アンドリュースにおいては、素敵な食体験があるんですよ)

そう、ここで、カワイの定義『食の印象=街の印象』に行き着くわけですね。

小舟の上から自転車を想う

20171017-cambridge-02 まあでも、ケンブリッジの名物アトラクションであるパンティングは(期待通り)とっても気持ちよかったです。ケンブリッジに来られた方は、これは絶対外せないと思いますよ。
パンティングを運営している会社もいろいろあるんですが、ケンブリッジ観光局のお墨付きなのは、こちらです。Scudamore’s Punting Company。
ぼくもこちらにお世話になりました。
20171017-cambridge-03 船着場
20171017-cambridge-04 20171017-cambridge-005 船頭のお兄ちゃんもナイスガイだった
20171017-cambridge-06 水の流れる音と、スローペースで進む船、目の前に流れる英国的風景、パンティングって本当にリラックスできるんですよね。思ってるより楽しいと思いますよ。
船の上はこんなにリラックスできるのに、街中は結構緊張感を強いられる場面もあったりしたんですよ。何が原因って、自転車。Bicycle。
びっくりしたんですが、ケンブリッジ、僕がこれまで歩いたイギリスのどの街よりも自転車の往来が桁違いに多い。

その無秩序感、走行のヤケクソ感、そしてそれ故に歩行者に緊張が強いられる感は、僕の生まれ育った大阪の下町を彷彿とさせました。

でも大阪よりマシだなと思ったのは、自転車が多い分、車の量が少ないこと。びっくりするくらい自転車量が多く、びっくりするくらい車の量が少ない。

聞くところによると、ケンブリッジ大の学生は、ケンブリッジ内での車の所持・レンタル・運転が一切禁止されているそうなんです。破った人には£175の罰金が課せられるとのこと。なるほど、だから、自転車と車の比率が、こんな珍しい感じになっているんだ。

僕はサイクリストであり、ウォーカーであるので、生活圏での車の量は少なければ少ないほど良いと思っているタイプなんで、このケンブリッジの法律は素晴らしいと思うんですが、しかし、車がなかったらないで、自転車がこんな無秩序な感じで街中をビュンビュン走ってるというケンブリッジの現実は、好ましくないと思います。僕みたいなアラフォーのおっさんはハッキリ言ってどんな状況でも良いんですが、子供とお年寄り、身体を俊敏に自由に動かせない人や妊婦さん、そういう人たちの目線が欠けた感じがクールじゃない。

ジャイアンにいじめられるから、ジャイアンを消したら、ジャイアンが存在しない世界ではスネ夫がいじめっ子になってて、「結局元と一緒かよ〜」と、のび太が嘆くあのドラえもんの名作エピソード「どくさいスイッチ」(てんとう虫コミックス15巻に収録)を思い出しました。
車がなかったら、自転車かよ〜、という。

兎にも角にも交通安全だぜ。

では、またアナザー観光地でお会いしましょう。
川合亮平でした。

♦ 使える英会話!

英国にいるとよく聞いたり、よく使う機会があるけど、多分少なくない数の日本人には馴染みの薄い英単語

その2:artisanal(アーテイザナゥ)
意味:職人技の

背景:食に対する意識が非常に高いイギリス、よく耳(目)にするのが、artisanalという言葉。この後に、いろんな単語がつくんですが、つまり、“職人が手作りで素材にもこだわって作った”という感じの意味なんです。例えば、cheese, chocolate, breadとかに付くんです。

例:
R: Here, I got you an artisanal chocolate bar.(はい、職人チョコあげるわ)
S: 4 pounds for one bar of chocolate? Oh, it’s expensive, isn’t it?(板チョコで4ポンド?たっかいな〜)

Text&Photo by R.Kawai

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川合 亮平

川合 亮平

(かわいりょうへい)

通訳者・東京在住

関西の人気テレビ番組で紹介され、累計1万部突破の『なんでやねんを英語で言えますか?』(KADOKAWA)をはじめ、著書・翻訳書・関連書は10冊以上を数える。

通訳者としては直近で東京五輪関連のビジネス会議、アスリート通訳に携わる。その他、歌手のエド・シーラン、映画『ファンタビ』シリーズのエディ・レッドメイン、BBCドラマ『シャーロック』のベネディクト・カンバーバッチ、マーティン・フリーマン、ヒットドラマ『ダウントン・アビー』の主要キャストなど、ミュージシャン、俳優への通訳・インタビューも多数手がけている。

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