SF映画の世界!ピカデリーサーカスの広告看板に搭載された最新技術に仰天 | BRITISH MADE

英国クリエイティブの窓  SF映画の世界!ピカデリーサーカスの広告看板に搭載された最新技術に仰天

2017.12.26

「どこでもいいからロンドンの駅名を挙げよ」と言われたら、パディントン、ウォータールー、キングスクロスやヴィクトリアといったターミナル駅のほかに、繁華街にあるという理由でオックスフォードサーカス、ボンドストリート、ピカデリーサーカスなどの駅名がすぐ思い浮かぶのではないだろうか。
20171226_regent01ed 地下鉄を出てすぐ。クリスマスイルミネーションに輝くリージェントストリート
そのうちピカデリーサーカスといえば、僕は日本でいうところの渋谷だと理解しているのだけれど、もちろん異論はあるだろう。ただ、月間で1億人が通行するというこの界隈が、欧州屈指の交通量を誇る場所であるということは間違いない。そして、だからこそともいえるが、ピカデリーサーカスの屋外広告はかなり目立つ。それはつまりリージェント・ストリートの角にある巨大なネオンサインのことなのだけれど、ビッグベンやセントポール大聖堂に並ぶロンドンのアイコンに数えていいのではないかと思うくらいの存在感を放っている。大きさにして790平方メートル。テニスコートおよそ4面分に匹敵するものだと言うから、いかに人目をひくものかということがおわかりいただけると思う。
20171226_sign01ed 画面があまりに明るくて、写真だと周りが暗く写るほど
さて、そんなピカデリーサーカスの巨大サインなのだけれど、実は今年(2017年)から長いリニューアル工事に入っていて、しばらく白い幕が覆いかぶさったままやや寂しい雰囲気だった。(ちなみに、このネオンサインは、ダイアナ妃の葬儀時など特別な事情を除いて、戦後以来スイッチが切られることがなかったのだそうだ)

その白い幕が取れたのは本当に最近のことで、たしか10月の下旬ごろだったと思う。完成まで9ヶ月もかかったなんて、さすがイギリスだけあってのんびりとした作業だなぁ(笑)と嫌味な感心をしていたのだけれど、これにはわけがあり、どうやらただの工事ではなかったようだ。

どういうことかというと、新しく生まれ変わった看板はもうびっくりするぐらいのハイテク技術が詰め込まれたものらしく、これはいろんなメディアで話題となっていた。4K(解像度のこと)のLEDというスペックは、まぁそれほど珍しいものではないとして、驚かされたのが顔認識装置が埋め込まれているという点だ。看板にそんなテクノロジーなんて必要ないと思うかもしれないが、ここにSF的な未来の実現がある。すなわち、この装置によってピカデリーサーカスの交差点を歩く人の性別や年齢、それから通行する車の色を識別し、最適な広告を出すことを可能にするというのだ。まさしく映画『マイノリティ・リポート』の世界。監視カメラが多いロンドンとはいえ、これには僕自身、少し背筋が凍った。どこまでもターゲティングされることの怖さ。公式発表によれば、取得したデータが貯蔵されることはないというけれど、それでも……。
20171226_sign02ed 圧巻のフルスクリーン
20171226_sign03ed 近くで見ると余計に画像のきめ細かさがわかる
ちなみにこのデジタル看板に掲載されるのは6ブランド。僕が写真を撮った時はコカ・コーラやSAMSUNG、ebayなどそうそうたるブランドが枠を買っていた。面白いのが、ローテーションでそれぞれ映し出される場所が変わるという点、それからおよそ10分に一度の頻度で、一つのブランドがフルスクリーンで大きく掲載されるという点だ。このほか、ニュース、スポーツなどの生放送が流されたり、ツイッターやフェイスブック投稿もリアルタイムで同期して投影することも可能だという。いまはまだ、実験的なことを試すに至っていないようだが、果たして今後、このテクノロジーを使ってどんなクリエイティブが登場するのだろうか。怖さを感じると同時に、新しい物好きとして楽しみがないわけでもない。

Text&Photo by Ishino Yuichi

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Ishino Yuichi

Yuichi Ishino

イギリスをはじめ、欧州と東京を拠点にするデジタルプロダクション/エージェンシー「TAMLO」代表。企業に向け、ウェブメディアの戦略コンサルティング、SNS施策、デジタル広告の運用、コンテンツの制作などを日英を含めた多言語でサポートする。好きな英国ドラマは『フォルティ・タワーズ』。ウィスキーはラフロイグ。

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