嵐のような4日目を経て、5日目。未だ前日のショック忘れられずまったく寝付けなかった。(その理由はこちらから)妻に言わせると、それはパリに移るまで続いていたようなので、相当なものだったに違いない。そんなこともあって宿泊したホテルThe Goringについて触れるのを忘れていた。このホテルは1910年に創業。昨今チェーン展開に与するホテルが多いなか、4代に渡りグループに属さずに家族経営されている。キャサリン妃が結婚式前夜に宿泊されたホテルとしても知られており、2013年には王室御用達の認可証を受けたホテルだ。ドアマンの英語が丁寧でわかりやすく、「My pleasure」、「Good afternoon」、「Lovely」など、ここまでなかなか耳にすることがなかった言葉を披露してくれたのが印象的だった。併設する喫茶室にも定評があり、伝統的なアフタヌーンティーを楽しむはずだった。しかしながら、くどいようだが前日のアクシデントでその存在すらも忘れてしまっていた。 さて、この日はロンドンの中心部であるSoho、Mayfair界隈をぶらりと散歩した。まず訪れたのはGeorge CleverleyとFoster & Son。スーツ類に興味を持ったころから両者の靴に憧憬の念を抱いていたからだ。店内には、創業者の写真やビスポークに携わった著名人の木型が飾られていた。それらの軌跡を直接肌で感じながらソファーに腰を下ろし、靴を試着する瞬間には思わずため息が出た。 次に訪れたのはスーツの名店が軒を連ねるSavile Row。初っ端から面食らったのは、1番地Gieves & Hawkes付近にはアバクロが騒音を奏でながら陣取っていたり、おそらくキングスマンの影響だろうか、名店Huntsmanの軒先にはセルフィーの群れができていたりと、なかなかの騒々しさ。書籍やWEBから想像していたイメージとは若干異なっていた。実際にスーツを作ってもらうためにはどのくらいの期間が必要なのかを直接質問したかったので、いくつかの店に足を踏み入れた。一見な上に予約も取っていなかったため、恐らく相手にされないだろうと悲観的に考えていたが、訪れたどのテーラーも丁寧に応答してくれて意外だった。時間が限られていたため、じっくり見物できなかったのが悔やまれるが、再びここに訪れる明確な理由ができた。 ロンドンの街を歩いているとショーウィンドウを見入る人々をよく見かける。流し見ではなく足を止めて吟味したあと、その店舗に足を踏み入れる者。はたまた名残惜しそうに立ち去る者。選択するという行為を楽しんでいるように見えてより一層購買意欲は刺激された。
たっぷりとショッピングを楽しみ、夜には平素お世話になっているBRITISH MADE のプレス坂本さんも交え、氏のお勧めするSohoのレストランに連れて行ってもらった。店内は活気に満ち溢れていて、店員も気さくだ。坂本さんを待つ間にはワインの試飲やその説明をしてくれた。下戸であることが残念だ。どの料理も美味い上にとにかくボリュームがある。終盤、名前を忘れてしまったが、注文した肉厚のローストビーフ?2人前を注文した結果、あまりの量の多さに大変なことになったものだ。ディナータイムは大変混み合っているので予約をすることをお勧めする。 最後に宿泊したのは、The Rookeryというバービカン近くにある古風なホテルだ。チェックインの時間には少々早く到着してしまったにも関わらず、紅茶や珈琲と焼き菓子でもてなしてくれた。応接間に居座る優雅なクロネコも愛くるしい。数種類の焼きたてのパンやグラノーラが楽しめる朝食は見事だ。有料になるが必ずいただくべきだ。
あっという間のイギリス滞在も最終日を残すのみとなった。基本的に旅行の際には荷物を減らしたいので、下着や衣類は半分程度しか持って行かない。「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」でいう蛭子さんスタイルだ。ゆえに現地で調達するか、洗濯をしないとストックがなくなってしまう。せっかくなので、現地のコインランドリーを利用してみた。マシンでは紙幣が使えないので、店番のマダムに両替をお願いしたところ、差し出したのがスコティッシュ紙幣だったらしく受け取ってもらえなかった。そういえば、関口智宏さんの「ヨーロッパ鉄道の旅 イギリス編」でも同じような発言があったことをふと思い出した。勝手がわからず困っている姿を見兼ねたのか、結局店番のマダムに手取り足とりで乾燥機の使い方まで面倒見ていただいた。 エディンバラから始まり湖水地方を経由してロンドンまでのおよそ一週間の旅。次回は東側経由で周回するのか、はたまた北アイルランドやウェールズに向かうのか…そんなことを考えながら13:31発のユーロスターにて最終目的地パリへ向かった。ドーバー海峡を楽しみにしていたが、緊張が解けたせいか眠りに落ち、気がつけばフランスに入ってしまっていた。旅自体はここからさらに一週間続くのだが、BRITISH MADEではなく“FRENCH MADE”になってしまうためここで終わりとする。
関連リンク
ヨーロッパ満喫日記 湖水地方篇
ヨーロッパ満喫日記 エディンバラ篇
ヨーロッパ満喫日記 ストーク・オン・トレント篇
あっという間のイギリス滞在も最終日を残すのみとなった。基本的に旅行の際には荷物を減らしたいので、下着や衣類は半分程度しか持って行かない。「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」でいう蛭子さんスタイルだ。ゆえに現地で調達するか、洗濯をしないとストックがなくなってしまう。せっかくなので、現地のコインランドリーを利用してみた。マシンでは紙幣が使えないので、店番のマダムに両替をお願いしたところ、差し出したのがスコティッシュ紙幣だったらしく受け取ってもらえなかった。そういえば、関口智宏さんの「ヨーロッパ鉄道の旅 イギリス編」でも同じような発言があったことをふと思い出した。勝手がわからず困っている姿を見兼ねたのか、結局店番のマダムに手取り足とりで乾燥機の使い方まで面倒見ていただいた。
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ヨーロッパ満喫日記 湖水地方篇
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ヨーロッパ満喫日記 ストーク・オン・トレント篇
部坂 尚吾
1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。毎月第三土曜日KRYラジオ「どよーDA!」に出演中。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com