前回に引き続き、コッツウォルズの建築を愉しんでいただくべく、お薦めのホテルを建築家の目線からご紹介いたします。
急勾配の屋根が連なった外観デザインは、この時代のコッツウォルズの建物に多く見られます。
美味しくて美しい館「ローズ・オブ・ザ・マナー」
コッツウォルズのアッパー・スローターという村にある4つ星のマナーハウス・ホテルです。 17世紀に建てられたこの館は8エーカー(約32,000㎡)の広大な敷地に建っていて、前面に広がる美しい芝生の庭の他、中庭と裏庭もあり、緑に包まれた濃厚なハチミツ色の立派な佇まいは圧巻です。ここは料理の美味しさでも有名です。ミシュランの星付きの料理を食べられるということで、レストランの予約は満席になることも多く、ホスピタリティ溢れるスタッフが旅の疲れを癒してくれます。 もともとは牧師の館だった建物を増築・改装を重ね、現在の姿になっています。1972年にホテルとして開業しました。
シックな壁の色が落ち着きと洗練さを与えるラウンジ。
クリーム色のストライプの壁紙が施されたロビー。古い石の暖炉が風格満点です。
コンテンポラリーテイストを程よく取り入れたベッドルーム。この館のイメージを崩さぬよう上品なクラシックさを残しつつ上手にコーディネートされています。
Lords of the Manor
住所: Upper Slaughter, Gloucestershire GL54 2JD
URL:www.lordsofthemanor.com
コッツウォルズの高台に建つ館「ウィック・ヒル・ハウス・ホテル」
コッツウォルズのストウ・オン・ザ・ウォルド中心部から4kmほど離れたところにある、18世紀に建てられたカントリーハウスホテルです。ストウ・オン・ザ・ウォルドは、コッツウォルズの中でも高台に位置するエリアですが、この建物は、その中でも特に高台に建っていて、ここから見下ろすコッツウォルズの景色は最高です!100エーカー(約40.5万㎡)の敷地内には、本館のほかにコーチハウス(元馬車小屋だった建物)やオランジェリー(温室のような別館)が建っています。お食事はクラシックなジョージアン様式のお部屋「Adams Room」又はコッツウォルズを見下ろすコンサバトリーで。 ハチミツ色の石「ハニーストーン」で玄関ポーチの柱や窓上のペディメントなどクラシックな要素を加えた凝った外観です。
コッツウォルズを見下ろすコンサバトリー。
「Adams Room」と呼ばれる部屋。名前の通りアダム・スタイル(18世紀に活躍した建築家のデザイン)を取り入れた素敵なインテリアです。天井に施された繊細な石膏装飾は見惚れてしまう美しさです。
天井の高いベッドルームには、壁の一面をアクセントとする大きな柄の壁紙が貼られておりお洒落です。
Wyck Hill House Hotel
住所: Stow-on-the-Wold, Gloucestershire GL54 1HY
URL:www.wyckhillhousehotel.co.uk
築700年のハチミツ色の館「チャリングワース・マナー」
700年前に建てられたコッツウォルズの建物に泊まることができるなんて想像したことがあるでしょうか。ハチミツ色の石の色味が最も美しい場所として有名なチッピング・カムデンという村にあるこのホテル「チャリングワース・マナー」です。車でB4035道路を走り「CHARINGWORTH MANOR」の看板から小道に入るのですが、なかなか建物は見えてきません。くねくねとおよそ500m丘を上がったあたりでようやく古い石造りの建物が現れます。急勾配の屋根が連なった外観デザインは、この時代のコッツウォルズの建物に多く見られます。
歴史を感じる外観が周囲の緑に包まれて一体化しています。手前のキノコ型も石造り。もとは倉庫のネズミ避けの脚として使われていたものですが、今ではコッツウォルズのあちこちでガーデンの愛らしいアクセントとして置かれています。
年季を感じる重厚な玄関ドア。イングリッシュオーク材のドアには、黒塗りのアイアン金物が良く似合います。
天井はオークの梁材がむき出しになっています。石造りの暖炉も築年数を物語っています。
屋根裏に位置するベッドルーム。現在はファブリックも家具も少しモダン&エレガントになっていますが、700年の年月を経た構造を直に感じられるお部屋です。
Charingworth Manor
住所: Charingworth, Chipping Campden, Gloucestershire GL55 6NS
URL:www.classiclodges.co.uk/charingworth-manor
静寂に溶け込む館「ザ・スローターズ・マナーハウス」
コッツウォルズのロウアー・スローター村に建つ1658年に建てられた建物。背の高い大きなゲートの奥にひっそりと佇む館「ザ・スローターズ・マナーハウス(旧ロウアー・スローター・マナー)」は、玄関が少し高い位置にあり、ワクワクしながら上がる階段も魅力の一つです。アーチ型に開口された玄関ポーチと、その奥のアーチ型の両開きのドアも外観の素敵なポイントになっています。 寄棟の屋根と端正な顔立ちで、大きくても上品な印象の外観です。
玄関ホール。鉛の格子が入った幅の広い窓からは前庭が見え、ベンチシートに座って寛げる至極のスペースです。
ベージュ系のストライプの壁紙が貼られたドローイング・ルーム。同系色でまとめられたファブリックは、昔からある豪華な天井装飾も引き立てる、落ち着きあるインテリアです。
部屋はコンテンポラリーなインテリアになっていますが、バスルームには猫脚のバスタブがあったりと楽しめます。
The Slaughters Manor House次回もイギリスの建築を愉しめる、お薦めの場所をご紹介致します。
住所: Copsehill Road, Lower Slaughter, Gloucestershire GL54 2HP
URL:www.slaughtersmanor.co.uk
小尾 光一
工学院大学工学部建築学科卒業後、輸入住宅会社、リフォーム会社勤務を経て、「地面から生えたような」と形容されるイギリスの家に魅了されて渡英を繰り返し、デザイン・知識の習得とともにイギリス建材の開拓を重ね、2000年にコッツワールドを設立。イギリスであれば何処のエリアの建物も、そしてインテリアも実現するイギリス住宅専門の建築家として活動中。日英協会、イギリスを知る会所属。
著書「英国住宅に魅せられて」
ホームページ:
www.cotsworld.com
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