ロンドン・パディントン駅から列車で西へ1時間半の場所に、「Bath(バース)」という街があります。ここでは上品なクリーム色の石造りのジョージアン様式の建築が愉しめます。
比較的シンプルで端正な顔立ちの印象で、ペディメント(三角形の切妻壁)、オーダー(柱)、ピラスター(付け柱)等、ルネサンスの影響を受けた古典的な装飾要素を含んでいます。
ひび割れや破損した部分を修復・交換し、汚れた部分は洗浄して、再び蘇らせるのです。
今回ご紹介したいのは、ロイヤル・クレッセントの一番手前の家、「No.1 Royal Crescent」。ここでは、ジョージアン様式の建物を詳しく見学ができるのです。
目の前の芝生の庭も気持ちが良い場所です。バースへ訪れた際は是非ご見学下さい。
ロイヤル・クレッセントへ向かう途中には、父親のジョン・ウッド(同じ名前ですがJon Wood, the Elderと表記されます)がデザインし、息子が引き継いで完成させたジョージアン・タウンハウスの「サーカス」も建っており、こちらは円型に建てられた建築です。親子揃ってバースの街並みを魅力的にデザインしており、道中も楽しく歩けます。
次回は、「ロイヤル・クレッセント・ホテル」をご紹介いたします。
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コッツウォルズに誘われて
とろけるアーモンドクロワッサンを
降車駅は「Bath Spa(バース・スパ)」。
名前からもわかる通り、温泉の街として栄えたことで有名です。
ジョージアン様式とは、1714年~1811年に建てられた、シンメトリー(左右対称)を基本としたデザインが特徴の建物のデザインです。名前からもわかる通り、温泉の街として栄えたことで有名です。
比較的シンプルで端正な顔立ちの印象で、ペディメント(三角形の切妻壁)、オーダー(柱)、ピラスター(付け柱)等、ルネサンスの影響を受けた古典的な装飾要素を含んでいます。
美しいクリーム色の石で建てられたジョージアン様式の建物が街を形成しています。
エレガントな街並みを生み出す石「Bath Stone」
バースの建物は、バース・ストーンと呼ばれる、クリーム色の石灰岩で出来ています。前回ご紹介したコッツウォルズ地方の石と同じ石灰岩ですが、ここバースで採れる石の色味は、ハチミツ色よりも淡いクリーム色で、街全体として大人っぽく洗練された印象に見えます。この石はとても柔らかく加工や彫刻がしやすい為、細かい装飾も全てこの石で表現されています。 軒下の装飾や、アカンサスの葉をモチーフにしたコリント式の柱も石の彫刻で出来ています。
玄関ポーチ上のペディメントや柱もバース・ストーンで出来ています。
この玄関ドアの6枚パネルのデザインは、ジョージアン様式の特徴のひとつです。
ドアのデザインだけで、その建築の建てられた時代がわかるのも愉しみです。
この玄関ドアの6枚パネルのデザインは、ジョージアン様式の特徴のひとつです。
ドアのデザインだけで、その建築の建てられた時代がわかるのも愉しみです。
中央のアーチ型窓の両サイドに長方形を備えた3連窓は「ヴェネチアン・ウィンドウ」と呼ばれ、同じくジョージアン時代に流行したデザインです。窓下のアイアン製の柵(Balconette/バルコネット)は外に出られるバルコニーの原形です。
石造りの建物のメンテナンス
日本のように大きな地震の無いイギリスでは、何百年も前の建物が数多く残っています。バースの街にも、古いもので築300年の建物も現存しています。歴史ある美しい街並みを保つため、イギリスにはRepair & Restoration Company(復元専門の会社)やStone Mason(石の加工屋)と呼ばれる職人集団がいます。バースの建物の装飾材はすべてが天然石バース・ストーンで出来ているので、スペシャリストである彼らが、細かい装飾を切断工具や研磨工具、そして機械では不可能な部分を鑿(ノミ)と金槌で叩きながら彫刻して修復をします。ひび割れや破損した部分を修復・交換し、汚れた部分は洗浄して、再び蘇らせるのです。
このように部分的に足場を立て、修復の必要な箇所を直していきます。
数か月後に足場が外れると、修復できれいな色に復活した部分が良くわかります。ひび割れ程度のものは石灰とモルタルを練ったパテで埋め、破損がひどい場合は交換します。汚れは高圧洗浄で落とします。
18世紀の建物を見学「No.1 Royal Crescent」
バース・スパ駅から車で10分(徒歩20分)ほど北西に「ロイヤル・クレッセント」という有名なジョージアン・テラスハウスがあります。この建物は1767~1774年に建築家ジョン・ウッド(John Wood, the Younger)が手掛けた三日月状に弧を描いた建物です。今回ご紹介したいのは、ロイヤル・クレッセントの一番手前の家、「No.1 Royal Crescent」。ここでは、ジョージアン様式の建物を詳しく見学ができるのです。
三日月状の建物の一番手前が「No.1 Royal Crescent」です。18世紀のジョージアン様式のインテリアを隅々までご覧いただけます。素晴らしいですね。
入口前に飾ってある建物の断面図。早速ワクワクします。
エントランスホールです。アーチの縁取りの装飾は、ジョージアンスタイルで多用されたエッグ&ダート(卵と矢)型のモールディングです。
優雅な渦巻き手摺り「ヴォリュート」もジョージアンスタイルによく用いられました。
こちらのお部屋はWithdrawing Roomと言い、食事の後、先に退室した女性達が寛ぐ部屋です。カーキグリーン色のダマスク柄の壁紙に、石膏の装飾材や大理石の暖炉、クリスタルのシャンデリア、そして美しい家具の数々・・・
色使いが比較的淡く、全体的に華美になり過ぎない印象も、ジョージアン様式のインテリアの特徴です。
色使いが比較的淡く、全体的に華美になり過ぎない印象も、ジョージアン様式のインテリアの特徴です。
ダイニングルーム。装飾は抑え目でシンプルながらも、ミルクティー色にペイントされた壁が、なんとも優しく上品な印象の部屋です。
こちらはLady’s Bedroom。シャーベットのような淡いグリーンの壁紙に、白のアクセントが清々しい部屋です。同じく白とグリーンを基調とした爽やかな印象のファブリックのベッドとカーテンは、女性らしい柄とデザインで、程よい甘さが素敵です。
The Gentlemen’s Bedroomです。
天井付近のモールディングは「スワッグ&ドロップ」と呼ばれるデザインで、ジョージアンスタイルで流行しました。また、暖炉に使われたリボンや壺形のデザインモチーフも人気がありました。
その他のお部屋もたくさんご覧いただけます。天井付近のモールディングは「スワッグ&ドロップ」と呼ばれるデザインで、ジョージアンスタイルで流行しました。また、暖炉に使われたリボンや壺形のデザインモチーフも人気がありました。
目の前の芝生の庭も気持ちが良い場所です。バースへ訪れた際は是非ご見学下さい。
ロイヤル・クレッセントへ向かう途中には、父親のジョン・ウッド(同じ名前ですがJon Wood, the Elderと表記されます)がデザインし、息子が引き継いで完成させたジョージアン・タウンハウスの「サーカス」も建っており、こちらは円型に建てられた建築です。親子揃ってバースの街並みを魅力的にデザインしており、道中も楽しく歩けます。
次回は、「ロイヤル・クレッセント・ホテル」をご紹介いたします。
No.1 Royal Crescent
住所: No. 1 Royal Crescent, Bath, BA1 2LR
URL:http://no1royalcrescent.org.uk
関連リンク
コッツウォルズに誘われて
とろけるアーモンドクロワッサンを
小尾 光一
工学院大学工学部建築学科卒業後、輸入住宅会社、リフォーム会社勤務を経て、「地面から生えたような」と形容されるイギリスの家に魅了されて渡英を繰り返し、デザイン・知識の習得とともにイギリス建材の開拓を重ね、2000年にコッツワールドを設立。イギリスであれば何処のエリアの建物も、そしてインテリアも実現するイギリス住宅専門の建築家として活動中。日英協会、イギリスを知る会所属。
著書「英国住宅に魅せられて」
ホームページ:
www.cotsworld.com
ブログ:
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