イギリスの人気ドラマ「ダウントン・アビー」のロケ地めぐりPart.3 | BRITISH MADE

イギリス建築を愉しむ。 ダウントン・アビーのロケ地めぐりPart.3

2018.08.17

グランサム・ハウス

今回ご紹介するロケ地建築は、Berkshireにある「Basildon Park(バジルドン・パーク)」というカントリーハウスです。2005年の映画「プライドと偏見」および、イギリスの人気ドラマ「ダウントン・アビー」のシーズン4と5で登場したクローリー家のロンドンにある邸宅「Grantham House(グランサム・ハウス)」として使われました。グランサム・ハウスの外観はロンドンのセント・ジェームズのBridgewater Houseというタウンハウスの前で撮影されているのですが、ドラマの中で何度も登場する華やかなインテリアは、実はこのバジルトン・パークで撮影されていました。ロンドン・パディントン駅から列車で1時間のPangbourne駅で降り、そこから北西へ4km行った場所にあります。(駅からは遠いのでバス、タクシーまたはレンタカーをお薦めします。)
ゲートから10分以上歩いてようやく見えてくる館「バジルドン・パーク」。実は私は駅から歩いたので、この姿が見えた時の「やっと会えた!」という感動は格別でした。
バジルドン・パークは、1776年~1783年に建築家ジョン・カーによって建てられました。ジョン・カーはヨーク出身の建築家で、ジョージアン様式の中でもパラディアン様式を得意とする建築家でした。
パラディアン様式の特徴は、神殿風のペディメント(三角の妻壁)とそれを支えるコラム(柱)、ポルティコ(回廊)が建物中央に配置され、左右対称にデザインされます。
柱の奥の天井を見上げると、美しい模様の天井細工が!遠目に見ると比較的シンプルに見える外観ですが、こんなところに細やかな装飾が施されているのも愉しい発見です。
ドアを開けると、天井と壁の石膏装飾が美しいエントランスホールがお出迎えです。最初の部屋から早速このインテリアなので、石膏装飾が大好きな私にはたまりません。淡いピンク、クリーム、ライラック、グリーンのペイントに金色のアクセントカラーを上品に施してあります。壁と天井の境目を直角にせず、曲線でつなげるCoved Ceiling(コーブ天井)によって、装飾の細部や色味を見やすくさせ、落ち着きある優しい空間を作っています。
このネオ・クラシカルな石膏装飾デザインは同時期に活躍したスコットランドの建築家ロバート・アダムの影響を受けています。
階段ホールは吹抜けになっており、上部に設けた半円型のたくさんの窓からの光が1階まで届く、気持ちの良い空間になっています。オフホワイトのすっきりした壁面をバックに、凝ったデザインのアイアン製バラスター(階段子柱)が良く映えています。中央に吊るされた照明器具はジョージアン様式で多用された代表的なホール・ランタンです。
ドアのデザインにも注目です。ジョージアン様式の6枚パネルドアですが、框(かまち)の内部に廻してある彫刻のボーダー装飾が素晴らしいです。材質はスペイン産マホガニー。
こちらはダイニング・ルームです。エントランスホール同様に天井と壁の石膏装飾が美しく、加えて随所に様々な絵が挿入されています。部屋の片側(写真奥)に4本のコラム(柱)がありますが、その昔キッチンから運ばれた食べ物は、この奥の空間に一旦置き、そしてテーブルへ運ばれたそうです。
その他、ドラマの中でも登場したオクタゴン・ドローイング・ルームと呼ばれる赤いヴェルヴェットで覆われた壁の八角形の部屋など、たくさんの素晴らしい部屋を見学することができます。18世紀後期のインテリアを愉しめるバジルトン・パークへ是非訪れてみてはいかがでしょうか。 次回もお楽しみに。

Basildon Park
住所: Lower Basildon, Reading, Berkshire, RG8 9NR
URL: www.nationaltrust.org.uk/basildon-park
Photo & Text by Koichi Obi

関連リンク
ダウントン・アビーのロケ地めぐりPart.2
ダウントン・アビーのロケ地めぐりPart.1
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小尾 光一

小尾 光一

工学院大学工学部建築学科卒業後、輸入住宅会社、リフォーム会社勤務を経て、「地面から生えたような」と形容されるイギリスの家に魅了されて渡英を繰り返し、デザイン・知識の習得とともにイギリス建材の開拓を重ね、2000年にコッツワールドを設立。イギリスであれば何処のエリアの建物も、そしてインテリアも実現するイギリス住宅専門の建築家として活動中。日英協会、イギリスを知る会所属。
著書「英国住宅に魅せられて」

ホームページ:
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