英国ナショナル・トラスト プロが選ぶおすすめスポット | BRITISH MADE

英国ナショナル・トラスト プロが選ぶおすすめスポット

2021.03.24

英国のナショナル・トラスト(National Trust)をご存知ですか?
もしかしたら、あなたがこれまで訪れたことのある英国のあの観光地も実はナショナル・トラストの管理施設だったかもしれません。

ナショナル・トラストは、 イングランド、ウェールズ、北アイルランドに点在する、数々の風光明媚で、存在価値・意義があるとされる何マイルにも及ぶ海岸線、森林地帯、田園地帯、そして何百もの歴史的建造物、庭園、貴重なコレクションに至るまでを管理・保護している会員制組織です。
人と自然が何世代にもわたって繁栄できるよう、そういった特別な場所を保護し、ケアするための活動を続けています。

ナショナル・トラスト 村全体がナショナル・トラストで管理されているLacock(レイコック)のカフェ
簡単な内訳としては:

● 780マイル以上の海岸線

● 25万ヘクタール以上の土地

● 500以上の歴史的な家屋、城、公園、庭園

● 100万点近い美術品

などを、ナショナル・トラストは管理しています。

昨年2020年、ナショナル・トラストが1895年1月12日に設立されてから125年を迎えました。

設立の目的は「美しく、歴史的に価値のある土地や建物を国民の利益のために恒久的に保存することを促進する」で、
設立者は、社会活動家のオクタヴィア・ヒル、弁護士ロバート・ハンター卿、聖職者ハードウィック・ローンズリー司祭の三者です。

英国は産業革命の真っ只中だった設立当時、
ヒルはロンドンのスラム街での住宅改良運動で成功を納めており、
ハンターは環境保護団体での実績があり、
そして、ローンズリーは湖水地方の鉄道建設反対運動の指導者でもありました。

現在は、何百万人もの会員、ボランティア、スタッフによって構成されるヨーロッパ最大の自然保護慈善団体となっています。

Lacock(レイコック)の風光明媚な風景

映画・ドラマのロケ地としてのナショナル・トラスト

実は、ナショナル・トラスト(が管理する数々の場所)は、映画やドラマのロケ地としてもお馴染みです。

ナショナル・トラストがロケ地になっている作品、例えば・・・、

● Netflixの新作映画『The Dig』(レイ・ファインズ、リリー・ジェームズ主演)。
サフォークのサットンフーで行われた歴史的遺跡発掘調査を題材にした作品です。
映画のシーンの多くは、近くのButley(バトリー)、Thorpeness(ソープネス)、Snape(スネイプ)で撮影さました。


● ストウにあるTemple of Venus(ヴィーナス寺院)は、豪華な舞踏会のシーンの一部としてBridgerton(Nextflix最新ドラマ『ブリジャートン家』)に登場しました。


Lacock Abbey(レイコック アビー)は、『ダウントン・アビー』に登場するだけでなく、『ハリー・ポッター』でホグワーツの廊下や教室としても使用されています。


● ハートフォードシャーのAshridge Woodland(アシュリッジ森林地帯)は、『エノラ・ホームズの事件簿』、『マレフィセント』、『レ・ミゼラブル』、『スターダスト』に登場します。


● ロンドンのOsterley Park(オスターリー公園)は、『ドクター・ソーン』バットマン『ダークナイト ライジング』、『シークレット ガーデン』、『悪女(原題:Vanity Fair)』に登場します。


● サマセットのMontacute House(モンタキュートハウス)は、『ウルフ・ホール』、『リバティーン』、『いつか晴れた日に』に登場しました。


● 1911年に出版になった『The Secret Garden(秘密の花園)』の影響を及ぼしたとされるファウンテンズ・アビー。 同作が映画化された1993年と2020年の、2つともの作品でロケ地としても利用されました。


● ウェールズのTredegar House(トレデガーハウス)は、英国人気長寿SFドラマ『ドクター・フー』の複数のエピソードで紹介されました。


ナショナル・トラスト おすすめスポット

ナショナル・トラストと、映画・ドラマの結びつきの強さに驚いている方もいらっしゃるかもしれません。

このビジネスの影の立役者が、同団体『撮影・ロケ地部門』責任者であるハーヴィ・エッジントン氏です。


彼が率いる少数精鋭チームのお仕事は、映画やドラマのロケ地スカウト担当者から問い合わせ電話(またはメール)を受けるところから始まります。

その後、最初の現地視察から、現場でのケータリングトラックの駐車場所の確認まで、ロケ地選定だけでなく、スムーズな撮影の補助まで、エッジントン氏らが受け持つ仕事は多岐に及びます。

エッジントン氏は、2003年に同部門を設立してから、18年間、文字どおり数え切れないほどのナショナル・トラストでの撮影に携わってこられました。

ある意味で、『ナショナル・トラストに一番訪れた男』と言えるかもしれませんね。

そんなエッジントン氏が、“是非、プライベートでもう一度訪れたいナショナル・トラスト”の場所はどこか気になりませんか? この度、その質問を直接エッジントン氏に尋ねてみました。
(先日、僕は英国政府観光庁主催のエッジントン氏がスピーカーをつとめられたオンラインレクチャーに参加させていただく機会に恵まれたのです)

エッジントン氏のとっておきの場所を2つ挙げていただいたので紹介しますね。

1:Baddesley Clinton(バッダースリー・クリントン)

イギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピアの喜劇「お気に召すまま」の舞台にもなっている、ワーウィックシャー 州の“アーデンの森(フォレスト・オブ・アーデン)”。その森の中心に位置するのが、500年の歴史を持つ魅力的で貴族屋敷Baddesley Clinton(バッダースリー・クリントン)です。

Baddesley屋敷は、500年もの間ずっと同じフェラー家によって所有されてきました。
1980年代までは、実際に彼らがこの場所に住んでおり、現在はナショナルトラストの管理の元、観光地として解放されており、500年前の神父の隠れ場所や19世紀のアーティストのスタジオなどを垣間見ることができます。

橋、堀、格子状のゲートハウスの組み合わせや、様々な時代に制作された石細工や窓など、イングランドで最も美しい建築アンサンブルのひとつと謳われています。

1889年にエドワード・ヘネージュ・デリングによってデザインされた中庭も魅力的で、当時からその姿はほとんど変わっていません。

ちなみに、この場所は『エリザベス:ゴールデン・エイジ』や『高慢と偏見とゾンビ』などの作品のロケ地として使用されました。

2:Cragside(クラッグサイド)


1880年に「モダン・マジシャンの宮殿」と評されたクラッグサイド・ハウス、ガーデン&ウッドランドは、ノーサンバーランドの中心部にある、優雅でユニークな観光スポットです。
ヴィクトリア朝の邸宅のほか、季節を問わず、息を呑むような景観が楽しめるドラマチックな庭園も魅力です。

もともと、クラッグサイド・ハウスは、ヴィクトリア時代の発明家であり実業家、アームストロング卿の邸宅でした。
クラッグサイドは、世界で初めて水力発電による照明を導入した建築物でもあります。

ナショナル・トラストが管理するこの邸宅を囲む敷地内には、天才的な造形家だったアームストロング卿によって手がけられた、5つの湖、700万本以上の木、ヨーロッパ最大級のロックガーデン、などがいまだに残っています。

また、火災報知器のボタンや電話、乗客用エレベーター、トルコ式バスのスイートルームなど、当時のユニークな仕掛けや機器も発見することができます。

観光アクティビティとしての、プレイエリア、シャクナゲの迷路、滝、アスレチックコースなどもあり、また、30マイル以上に及ぶ湖畔の散歩道があります。

敷地内の大自然は、絶滅の危機に瀕しているアカリスの最後の避難所のひとつとなっていますので、リスを探してみるのも一興かと。

ちなみに、この場所は、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』や『エジソンズ・ゲーム』のロケ地としても使用されています。

今年こそ行きたいナショナル・トラスト


英国政府観光庁(VisitBritain)の調査によると、アンケート回答者の34%が、“休暇中の夢のアクティビティ”として、『お気に入りのテレビや映画のイギリス・ロケ地を訪れる』を選んだとのこと。

イギリスのお城や貴族屋敷は国内・海外の旅行者に人気のアトラクションで、年間約1,000万人が訪れているとのことです。

ナショナル・トラストの一部の公園や田園地帯は、現在も地元の人々には、運動スペースとして開放されています。

今後、規制がなくなれば、一般にも開放される予定ですが、実際に訪問される際は、営業時間や規制など、各施設のウェブサイトをご参照されることをおすすめします。

最後に、「ロケ地としてのナショナル・トラストのことをもっと知りたい!」という方に朗報です。

ハーヴィ・エッジントン氏がこれまで蓄えた撮影ロケーションでの裏話や豆知識を集めた書籍が発売されています。

イギリス全土の50以上の主要な撮影現場を紹介するガイド「ナショナル・トラスト・オン・スクリーン」
ご興味のある方はどうぞ↓↓↓
Amazon: 『National Trust on Screen: Discover the Locations That Made Film and TV Magic (English Edition) 』

今回の記事では、ロケ地というキーワードで、ナショナル・トラストの魅力的な場所の数々を紹介しました。

あなたが気になった場所はありましたか?
もしあったとしたら、旅行規制が緩和された後の旅行のために、“行きたいリスト”に入れておいてくださいね。
また、今後、映画やドラマを観ていて風光明媚な場所が出てきたら、ちょっと調べてみてください。
その場所が、実はナショナル・トラストだった、という確率は決して低くないはずです。


P.S.

先日、英BBCで興味深いニュース記事がアップされました。

タイトルは:『ナショナル・トラストが、都市に桜を植える計画』
概要としては、
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ナショナル・トラストは、英国内のさまざまな場所で、桜の木を含む数十本の開花樹を植える計画を立てています。
この計画の一環として、ロンドン首都圏では、33の各行政区とシティ・オブ・ロンドンを象徴する33本の木が植えられる予定です。
その他、ノッティンガム、ニューカッスル、プリマスの森への植樹も決まっています。
このプロジェクトは、町や都市に住む人々が自然に触れる機会を増やすことを目的としており、更に、日本の「花見」の概念を英国でも実現しようというものです。
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ナショナル・トラストが、日本の花見に注目している、という日本人としては心温まる内容だったので、紹介しました。

Sponsored by英国政府観光庁
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Text by R.Kawai


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川合 亮平

川合 亮平

(かわいりょうへい)

通訳者・東京在住

関西の人気テレビ番組で紹介され、累計1万部突破の『なんでやねんを英語で言えますか?』(KADOKAWA)をはじめ、著書・翻訳書・関連書は10冊以上を数える。

通訳者としては直近で東京五輪関連のビジネス会議、アスリート通訳に携わる。その他、歌手のエド・シーラン、映画『ファンタビ』シリーズのエディ・レッドメイン、BBCドラマ『シャーロック』のベネディクト・カンバーバッチ、マーティン・フリーマン、ヒットドラマ『ダウントン・アビー』の主要キャストなど、ミュージシャン、俳優への通訳・インタビューも多数手がけている。

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