3月18日の規制変更により、海外からイギリスへの渡航者に対する渡航前、到着後のPCR検査の義務(ワクチン未接種者)がなくなりました。また、イギリス国内での滞在先を届け出る必要もなくなり、ようやく以前と変わらぬ気軽さでイギリス渡航が可能になりましたね。
さっそくイギリス旅行のチケットを手配した、あるいは旅行を計画しているという方もいらっしゃると思います。
そんな皆さんのためにも、今月は、前回ご紹介したウェルズ大聖堂に続き、「次のイギリス旅行で訪ねたいイングランドの隠れた名所」第2弾をお届けしたいと思います。
リントンとリンマスは小さな海辺の町ですが、ビクトリア時代の観光地として人気の高かった場所の一つ。もともとこの二つのエリアは、石炭や食料品を含む生活必需品を船による海上輸送に頼っていました。ただ、海に近いリンマスから、急勾配の坂道をのぼってリントンに行くのは困難だったことと、馬車を使ったとしても、馬にとっても厳しい条件の場所だったため馬の寿命が短く、動物愛護の視点からも、代替の交通機関が必要とされていました。
そこで二つの村をつなぐ交通手段として設置されたのが、57%という急勾配に敷かれた約260メートルの線路を二つの車両が行き交うクリフ·レイルウェイ。断崖に作られたこの鉄道は、イギリス国内では唯一という、水力によって動く珍しいものです。
近年は、環境に配慮したグリーンツーリズム、エコツーリズムといった言葉をよく耳にしますが、水力のみで動くザ·リントン&リンマス·クリフ·レイルウェイは、ビクトリア時代においてすでに、サステナブル·ツーリズムを先駆けていたことになります。
鉄道の建設工事は1887年後半に始まりましたが、当時は掘削機械などはないため、すべて人力で行われました。3年に及ぶ工事は、8500ポンド(現在だと約100万ポンド)の費用がかかったそうです。そして、1890年に開業したのちは当地の観光産業に大きく貢献しました。
*クリフ·レイルウェイが動く様子は、こちらの動画からご覧ください。
さっそくイギリス旅行のチケットを手配した、あるいは旅行を計画しているという方もいらっしゃると思います。
そんな皆さんのためにも、今月は、前回ご紹介したウェルズ大聖堂に続き、「次のイギリス旅行で訪ねたいイングランドの隠れた名所」第2弾をお届けしたいと思います。
ビクトリア時代から続く水力鉄道
今回おすすめしたいのは、デヴォン州にあるザ·リントン&リンマス·クリフ·レイルウェイ(The Lynton & Lynmouth Cliff Railway)です。 コンパクトな車両は、遊園地のアトラクションを思わせる。
水力鉄道を簡単に説明すると、リントン側となる断崖の上にある車両のタンクに水がいっぱいになると、その重みで車両が坂下へと進み、それと入れ違いに下の車両が上に引き上げられるというシステム。動力となる水は車両の下に据え付けられたウォータータンクに送られるのですが、ここには700ガロン(約3182リットル)の水が貯められるようになっています。この水は約2.6キロメートル離れたところにあるウェスト·リン·リバーのものが利用されています。水で一杯になったタンクの重みを使って列車を走らせたあと、無事に車両がリンマス側に到着すると、その水は海へ排出されるという仕組みです。近年は、環境に配慮したグリーンツーリズム、エコツーリズムといった言葉をよく耳にしますが、水力のみで動くザ·リントン&リンマス·クリフ·レイルウェイは、ビクトリア時代においてすでに、サステナブル·ツーリズムを先駆けていたことになります。
鉄道の建設工事は1887年後半に始まりましたが、当時は掘削機械などはないため、すべて人力で行われました。3年に及ぶ工事は、8500ポンド(現在だと約100万ポンド)の費用がかかったそうです。そして、1890年に開業したのちは当地の観光産業に大きく貢献しました。
ジェットコースターに負けない迫力(?)
では実際にクリフ·レイルウェイに乗ってみましょう。 夏の観光シーズンには順番待ちの列ができるほどという。
崖の上にあるリントン側から車両に乗り込むと、エンジニアで車両操作もしているアシュレイさんに促されて、外の小さなデッキに立ってみました。目を少し遠くへやると、水面が白く光っている海が広がっています。また、線路の両脇には崖が迫ってきていて、こんな急斜面に手作業で線路を作ったビクトリア時代の人々の労苦を想像せずにはいられません。 木造の車両には犬の同乗も許可されている。
「リン、リン。」という出発の鐘が鳴ると、車両はゆっくりと動き始め、動き出して30秒ほどしたあたりから加速がついてきます。ジェットコースターのような速度はありませんが、傾斜具合が急なため、かなりスリルがあります。 クリフ鉄道から見る圧巻の景色。
線路の途中には3つほど橋がかけられていて、橋の上で列車を見守る人たちと、列車に乗っている乗客がお互いに手を振り合います。そして、ちょうど線路の途中あたりで、下から昇ってきた客車とすれ違い、みるみる近づいてくる海の景色を楽しみながら、約2分ちょっとの旅は完了します。あっという間の時間ですが、ビクトリア時代に生きた人々も同じ景色を見ていたのだと思うと、車両を降りる時には、まるでその頃にタイムスリップしたかのような気分になりました。 「ピクチャレスク」という形容がぴったりのリンマスの小さな港。
到着先のリンマスは、川と丘と海に囲まれた、どこを切り取っても美しい絵画になるような小さな町。「ナショナルトレイル(National Trail)」と呼ばれるウォーキングのためのコースが設置されているため、海を眺めながらのウォーキングのために訪れる人もたくさんいます。ウォーキングを楽しみたい方は、着るもの、シューズや水筒など、準備を整えていくのをお忘れなく。 どこをとっても絵になる風景。ビクトリア時代の人々が魅せられたのも納得。
リントンもリンマスも、日本のガイドブックにはあまり出てこない、秘境ともいえる小さな町ですが、イギリスの大自然と同時にビクトリア時代の面影を感じるには格好の場所。次のイギリス旅行では、ぜひ旅程に入れてみてください。*ザ·リントン&リンマス·クリフ·レイルウェイ(The Lynton & Lynmouth Cliff Railway)
住所:The Esplanade, Lynmouth, EX35 6EQ
電話番号:+44 1598 753486
チケット料金:大人3.30ポンド、子ども2.20ポンド、犬1ポンド
営業時間:季節によって異なるため、事前にウェブサイトにて確認を
ウェブサイト:https://www.cliffrailwaylynton.co.uk
マクギネス真美
英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。
ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。
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