読書の秋ですね。今回はイギリスの本好き、本屋好きなら知らない人はいないというくらい有名で人気、そして私が大好きな本屋さんをご紹介します。本好きの方に満足していただけること間違いなしの2軒は、街全体が世界遺産に指定されているイギリス南西部の美しい街、バースにあります。
ロバート&ルイーズ・トッピング夫妻は、2002年にイングランド東部のイーリーという地で最初の書店をオープンして以来、2007年にこのバース、2014年にセント・アンドリュース、そして2019年にはエディンバラにも書店をオープンしました。
外観がいかにもイギリスらしいバース店ですが、もとは市内の別の場所にあり、当時から本好きのお客さんたちはもちろんのこと、イギリスの作家たちからも大変人気の書店でした。というのも、トッピング&カンパニーでは著者を招いての朗読会のイベントを頻繁に行っているのです。2021年にバース修道院のすぐそばに移転したのですが、一階と地下、そしてギャラリーもあるという新店舗の広々とした空間は、本好きにとっての天国とも言えそうなほどに魅力にあふれた場所となっています。
また、ゆっくり読書を楽しんでもらうように、店内のあちこちにテーブルと椅子が並んでいて、誰もが自由に座って本をじっくり読んだり選んだりすることができます。その上、本を読んでいると、コーヒーや紅茶まで無料でサービスしてくれるのですから、ここに来るとあっという間に2~3時間経ってしまっていた、ということになるのも当然です。
著者の朗読会のイベントが目白押しで、マーガレット・アトウッドをはじめとする有名作家のトークを聞けたり、サイン本を購入できるのも、本好きにはたまりません。
その上、お店はドッグフレンドリーなので、犬を連れての本探しもオッケー。そして店内にある美しいデザインの掲示板や、店頭にあるイベントなどについての看板が、すべてスタッフによる手作りというのも、このお店が本好きの人たちの情熱でつくられていることを感じさせます。
一歩足を踏み入れた瞬間、思わず高い書棚を見上げて「わぁ」と声をあげること間違いなしの、bookworm(本好き)のための場所。訪ねるときには、滞在時間が長くなるのを覚悟していくのをおすすめします。
「こんなにたくさん本があるのに、よく日本の、それもPoetry(詩)というジャンルの本のことを覚えているわね」と伝えると、「Tanka(短歌)のことでしょう? 興味があって読んでいたから覚えているの。ほかにもおすすめの日本の作家がいたら教えて」と逆に質問されてしまいました。
こんな風に、好奇心旺盛にさまざまな種類の本に触れているスタッフだからこそ、どんなお客さんに対しても的確な本選びのアドバイスができているんだろうな、と感心してしまいました。
また、子どもたちの本を集めた一角は、まるでそこだけ別世界のよう。子どもたちだけでなく、大人が本を読み耽っている姿も目にするマジカルな空間です。
そして、お店のロゴが入った布バッグやTシャツは、他では買うことのできないイギリス土産として最適です。
ブックラバーの巡礼地ミスター・ビーズ・エンポリアムは、わざわざこのお店にくるためだけにバースを訪れる甲斐があるといっても言い過ぎではないと思います。
『英国本屋めぐり 本と本を愛する人に出会う旅』(著者:ルイーズ・ボランド、翻訳:ユウコ・ペリー 発行:サウザンブックス社)には、今回ご紹介した2店を含め、イギリスにある、個性の光る魅力的な独立系書店がたくさん紹介されています。本屋さんとともにそのエリアの美しい風景写真が豊富に掲載されていて、見ているだけでもイギリスの本屋さん巡りをしている気分になれる一冊。イギリスの本屋さん巡りのガイドとしてもおすすめです。
*トッピング&カンパニー Topping & Company
観光名所バース修道院から徒歩1分の場所にある厳かな佇まいの建物。
一軒目は、1817年に設計された美しいジョージアン様式の建物の中にある、イングランド最大の独立系書店といわれるトッピング&カンパニー(Topping & Company)。ロバート&ルイーズ・トッピング夫妻は、2002年にイングランド東部のイーリーという地で最初の書店をオープンして以来、2007年にこのバース、2014年にセント・アンドリュース、そして2019年にはエディンバラにも書店をオープンしました。
外観がいかにもイギリスらしいバース店ですが、もとは市内の別の場所にあり、当時から本好きのお客さんたちはもちろんのこと、イギリスの作家たちからも大変人気の書店でした。というのも、トッピング&カンパニーでは著者を招いての朗読会のイベントを頻繁に行っているのです。2021年にバース修道院のすぐそばに移転したのですが、一階と地下、そしてギャラリーもあるという新店舗の広々とした空間は、本好きにとっての天国とも言えそうなほどに魅力にあふれた場所となっています。
本に溢れた空間だが、開放感も感じる明るい店内。
たとえば、このお店の特徴の一つとも言える梯子。書棚の右から左へとスライドが可能なこの梯子を使えば、高い書棚にある本も自由に抜き出すことができるという優れもの。また、ゆっくり読書を楽しんでもらうように、店内のあちこちにテーブルと椅子が並んでいて、誰もが自由に座って本をじっくり読んだり選んだりすることができます。その上、本を読んでいると、コーヒーや紅茶まで無料でサービスしてくれるのですから、ここに来るとあっという間に2~3時間経ってしまっていた、ということになるのも当然です。
著者の朗読会のイベントが目白押しで、マーガレット・アトウッドをはじめとする有名作家のトークを聞けたり、サイン本を購入できるのも、本好きにはたまりません。
高い所にある本は梯子を使って自由に取ることができる。
そして何より素晴らしいのはフレンドリーで、本についての知識が豊富なスタッフの方たちです。欲しい本が見つからないときには、声をかければすぐに探してくれますし、もちろん、プレゼントにおすすめの本を探しているときの相談にものってもらえます。その上、お店はドッグフレンドリーなので、犬を連れての本探しもオッケー。そして店内にある美しいデザインの掲示板や、店頭にあるイベントなどについての看板が、すべてスタッフによる手作りというのも、このお店が本好きの人たちの情熱でつくられていることを感じさせます。
コーヒーを淹れてテーブルまで運んでくれたのは、アルバイトから始めてフルタイムで働くようになったというミリーさん。
地下には子どもの本のコーナーも充実している。
こんな書斎があったら最高。
店内の掲示、案内のボードは、すべてスタッフの手書きによるもの。
地下に向かう階段の壁に本がディスプレイされている様子も美しい。
お店の看板や店内の案内板について説明してくれたメイさんは作家でもある。スタッフと話していると、誰もが本への情熱に溢れているのが伝わってくる。
オリジナルの布バッグは、日本へのお土産にも。
*Topping & Company
住所:York street, Bath, BA1 1NG
営業時間:月~日曜 午前8時半~午後9時
ウェブサイト:www.toppingbooks.co.uk
*ミスター・ビーズ・エンポリアム Mr B’s Emporium
本好きの聖地ともいえるミスター・ビーズ・エンポリアムの外観。
もう一軒、見過ごすことができないのがミスター・ビーズ・エンポリアム(Mr B’s Emporium)です。同じくバースの中心地にあるこの書店は、ドアを開けて店内に入った途端に、天井に貼り付けられたたくさんのペンとペンに吊り下げられたタグに圧倒されます。これは、このお店で作家や著者が本にサインをしてくれたときのペンと、それぞれの方たちの名前が手書きされたタグなのだそうです。 天井に貼り付けられたペンはどれも作家や著者が自著にサインをしたときに使ったもの。
こんな独特の店づくりが目をひくこのお店は、2006年に開店して以来、イギリス国内の「ベスト独立系書店」に二度も選ばれ、2015年には「世界のブックショップベスト10」に選ばれたという大人気のお店。お客さんが店に入ってくるなり「何か本探しでお手伝いできることはありますか?」と必ず聞いてくれる、本についての知識が豊富な、筋金入りの本好き店員さんたちが集まっていることでもよく知られています。 すべてのお客さんににこやかに声をかけてくれる信頼のおけるスタッフ。
そして、何より有名なのが「ミスター・ビーズ・リーディング・スパ」と呼ばれるもの。これは、コーヒーや紅茶とケーキをお供に、このお店のスタッフと読書や本について語りあった後に、読書セラピストが本を選んで紹介してくれて、お客さんが自分の気に入ったものを持ち帰れるというサービスです。これを本好きの家族や友人へのプレゼントにする人が多く、あまりの人気のために予約できるのが6ヶ月以上先になってしまうとのこと。でも、それだけ待ってもぜひ受けてみたいと思うのは、やはりこのお店に信頼をおいているファンが多いということなのでしょう。 俵万智さん『サラダ記念日』以外にも、店内では日本人作家の翻訳本がたくさん売られていた。
実は取材中に私が「以前、俵万智さんという日本人著者の翻訳本をここで買ったんですよ」と伝えると「ああ、『サラダ・アニバーサリー』でしょ!」と、スタッフの方の口からすぐに書名が出てきてびっくりしました。「こんなにたくさん本があるのに、よく日本の、それもPoetry(詩)というジャンルの本のことを覚えているわね」と伝えると、「Tanka(短歌)のことでしょう? 興味があって読んでいたから覚えているの。ほかにもおすすめの日本の作家がいたら教えて」と逆に質問されてしまいました。
こんな風に、好奇心旺盛にさまざまな種類の本に触れているスタッフだからこそ、どんなお客さんに対しても的確な本選びのアドバイスができているんだろうな、と感心してしまいました。
二階には友人の家にでもやってきたような雰囲気の空間も。
店内は各部屋(エリア)ごとにジャンルの違う本が置かれているのですが、どの場所も椅子やライト、壁の色や絵が個性的で、まるで誰かの家を訪ねたような雰囲気です。また、子どもたちの本を集めた一角は、まるでそこだけ別世界のよう。子どもたちだけでなく、大人が本を読み耽っている姿も目にするマジカルな空間です。
そして、お店のロゴが入った布バッグやTシャツは、他では買うことのできないイギリス土産として最適です。
ブックラバーの巡礼地ミスター・ビーズ・エンポリアムは、わざわざこのお店にくるためだけにバースを訪れる甲斐があるといっても言い過ぎではないと思います。
クリスマスの本が映えるディスプレイ。
児童書のコーナーにはシンボルツリーが。
子どもたちがゆっくり本を読めるように、椅子とクッションもスタンバイ。
トイレのドアには人気イラストレーター、クリス・リデルさんによるイラストが。
*Mr B’s Emporium
住所:13-15 John Street, Bath, BA1 2JL
営業時間:月~土曜:午前9時30分 ~午後5時30分
日曜:午前11時~午後5時
ウェブサイト:https://mrbsemporium.com
マクギネス真美
英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。
ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。
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