秋といえば日本では「読書の秋」「食欲の秋」「芸術の秋」ですが、イギリスでは「芸術の秋」に加えて「文化の秋」「歴史の秋」「建築の秋」というフレーズが浮かびます。
というのも、この時期のイギリスでは、各地で貴重な文化遺産である建造物や、普段立ち入ることのできない場所を内覧することのできる機会がたくさんあるからです。
有名なところでは、歴史的建造物やモダンで革新的なビルディングを無料で一般公開する、ロンドンのオープン・ハウス・フェスティバル(Open House Festival )があります。2022年まではオープン・ハウス・ロンドン(Open House London)の名前で開催されていたこのイベントは、昨年から名称を変え、Airbnbとのコラボレーションで、個性的な外観やインテリアの個人宅も、これまで以上に多くリストアップされています。
イベントが始まった1992年にはわずか20の建物から始まったといいますが、年々規模を拡大し現在では800以上の建築物や家を無料で楽しむことができるので、観光客はもちろん、イギリス国内からもたくさんの人が詰めかける9月の人気行事となっています。
イギリスでは、本コラムでも何度かご紹介しているナショナル・トラスト(National Trust)という歴史的建造物や自然環境の保護を目的とする団体が中心となり、1994年にイングランドで初めてヘリテージ・オープン・デイズを開催しました。その後、この取り組みはイギリス全土に広がり、現在ではイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドのそれぞれで独自のヘリテージ・オープン・デイズが開催されています。
このイベント最大の魅力といえば、ロンドンでのオープン・ハウス・フェスティバルと同様に、普段は一般公開されていない歴史的建造物や文化施設に入れることです。古城、貴族の邸宅、教会、美術館、庭園など、通常はプライベートな空間や有料でしか観覧できない施設が、この期間中は無料で開放されています。
このようにヘリテージ・オープン・デイズは、イギリスに暮らしている者にとっても、地元にいてもなかなか訪ねる機会のなかった場所を知ることができる絶好の機会になっているのです。
そういうわけで、この秋は、私の住むイングランド南西部の街ブリストルにあるフォスターズ・アームズハウスの“三王の礼拝堂(The Chapel of the Three Kings at Fosters Almshouses)”に出かけてきました。
アームズハウスというのは、貧しい人々(や高齢者)のための慈善住宅で、こうした施設を建てることは、イギリスの富裕層の間ではよく行われていたチャリティ活動のひとつです。
さて、フォスターズ・アームズハウスは、1483年に当時ブリストルの市長をしていたジョン・フォスターによって創設されました。フォスターは、貧しい人々に住む場所(アームズハウス)を提供するだけでなく、彼らの精神的なケアも重要だと考えたそうです。そこで、アームズハウスの一角に、今回公開された美しい礼拝堂を建設したのだといいます。
今回一般公開されたのは、建物の一角にある礼拝堂と、建物の前面、ガーデンの部分でした。小さな礼拝堂なので、ツアーというよりは、見学者が来るたびに個別に説明をしてもらうことができました。
もしあなたが、この季節にイギリスを旅するのであれば、ぜひ、こうしたオープン・ハウス、オープン・ヘリテージの機会を利用して、さらに奥深くイギリスの文化や歴史に触れてみてはいかがでしょう?
というのも、この時期のイギリスでは、各地で貴重な文化遺産である建造物や、普段立ち入ることのできない場所を内覧することのできる機会がたくさんあるからです。
有名なところでは、歴史的建造物やモダンで革新的なビルディングを無料で一般公開する、ロンドンのオープン・ハウス・フェスティバル(Open House Festival )があります。2022年まではオープン・ハウス・ロンドン(Open House London)の名前で開催されていたこのイベントは、昨年から名称を変え、Airbnbとのコラボレーションで、個性的な外観やインテリアの個人宅も、これまで以上に多くリストアップされています。
イベントが始まった1992年にはわずか20の建物から始まったといいますが、年々規模を拡大し現在では800以上の建築物や家を無料で楽しむことができるので、観光客はもちろん、イギリス国内からもたくさんの人が詰めかける9月の人気行事となっています。
イギリス国内の隠された宝物に出会える
ヘリテージ·オープン·デイズのマークを目印に
さらにイングランド全土で開催されるのが、ヘリテージ・オープン・デイズ(Heritage Open Days)です。そもそもの始まりといえば、1985年、欧州評議会が欧州の文化遺産に対する認識と理解を高め、その保護と管理の必要性を訴えるために「欧州文化遺産の日(European Heritage Days)」を制定したことによります。現在では50カ国が参加し、それぞれが独自の方法で、ヨーロッパの遺産のめくるめく多様性と異文化間のつながりを強調するイベントを実施しています。 イギリスでは、本コラムでも何度かご紹介しているナショナル・トラスト(National Trust)という歴史的建造物や自然環境の保護を目的とする団体が中心となり、1994年にイングランドで初めてヘリテージ・オープン・デイズを開催しました。その後、この取り組みはイギリス全土に広がり、現在ではイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドのそれぞれで独自のヘリテージ・オープン・デイズが開催されています。
このイベント最大の魅力といえば、ロンドンでのオープン・ハウス・フェスティバルと同様に、普段は一般公開されていない歴史的建造物や文化施設に入れることです。古城、貴族の邸宅、教会、美術館、庭園など、通常はプライベートな空間や有料でしか観覧できない施設が、この期間中は無料で開放されています。
イギリス全土に「ヘリテージ」と呼ぶにふさわしい建物が残っている
また、多くの会場では、建築家、歴史家、あるいは所有者自身によるガイドツアーが行われています。こうしたツアーでは、建物の歴史や建築様式、そこで起こった重要な出来事など、普段は聞くことのできないエピソードなども含め、興味深い話を聞くことができるのも魅力の一つで、私はできるだけ、このツアー時間に合わせて訪問するようにしています。 このようにヘリテージ・オープン・デイズは、イギリスに暮らしている者にとっても、地元にいてもなかなか訪ねる機会のなかった場所を知ることができる絶好の機会になっているのです。
そういうわけで、この秋は、私の住むイングランド南西部の街ブリストルにあるフォスターズ・アームズハウスの“三王の礼拝堂(The Chapel of the Three Kings at Fosters Almshouses)”に出かけてきました。
アームズハウスというのは、貧しい人々(や高齢者)のための慈善住宅で、こうした施設を建てることは、イギリスの富裕層の間ではよく行われていたチャリティ活動のひとつです。
さて、フォスターズ・アームズハウスは、1483年に当時ブリストルの市長をしていたジョン・フォスターによって創設されました。フォスターは、貧しい人々に住む場所(アームズハウス)を提供するだけでなく、彼らの精神的なケアも重要だと考えたそうです。そこで、アームズハウスの一角に、今回公開された美しい礼拝堂を建設したのだといいます。
15世紀から約600年を経た建物が今も一般の人の住居として使われているのがイギリスらしい
実は、現在このフォスターズ・アームズハウスの建物内は18戸のフラット(日本でいうマンション)となっていて、普段は住居者のみしかこの敷地に入ることはできません。 今回一般公開されたのは、建物の一角にある礼拝堂と、建物の前面、ガーデンの部分でした。小さな礼拝堂なので、ツアーというよりは、見学者が来るたびに個別に説明をしてもらうことができました。
この小さなチャペルが、これまでどれほど多くの人たちの心を癒してきたかを思う
解説によれば、礼拝堂の名前になっているThe Three Kingsというのは、キリスト教の教えにでてくる東方の三賢者たちのことを表しています。マタイ福音書によれば、彼らは幼子イエスのために金、乳香、没薬の贈り物を携えて東方からやってきたと伝えられています。この東方の三賢者たちについては、イギリスでは、クリスマスに小学校などで子供たちが演じるナティビティ(イエス・キリストの降誕)の物語の重要な人物たちとして、誰もが知っている存在ですが、三賢者たちを祀ったチャペルはイングランド内ではここだけという貴重な建物です。 チャペルの外壁には、三賢者の彫像が
チャペル内の三賢者を表したステンドグラスの歴史は新しく、1963年に設置されたもので、デザインは著名なステンドグラス・アーティスト、パトリック・ポーレンという人物によるものです。10人も入ればいっぱいになってしまいそうな空間ですが、静謐な空気につつまれて薄暗いチャペルの中に日がさしこんで輝くステンドグラスの光を見つめていると、500年前の人々は、ここでどんな祈りを捧げたのだろうと想像が広がっていきました。 修復を終えたばかりの左側建物の屋根は色も鮮やか。今後も建物の修復を重ね、貴重なヘリテージを未来へ引き継いでいく
この後、フォスターズ・アームズハウスから歩いて5分ほどのところにある、セント・ジョン・バプティスト教会(Church of St John the Baptist)も訪ねてみました。こちらはゴシック様式の城門と、優美な尖塔が美しい、ブリストル市内でもアイコニックな存在の教会です。教会は14世紀に建てられましたが、教会自体は中世に作られた城壁の中にあるという珍しい建物。そのため、セント・ジョンズ・オン・ザ・ウォールとも呼ばれているというのも、今回、ボランティアの方のガイドで初めて知りました。 14世紀に作られた教会の年間維持費は4486 ポンド(約92万円)。寄付が教会維持に大きく影響するため、こうしたイベントで人々にその存在、そして貴重な遺産だということを知ってもらうことが大切
日頃、何度も目にしていてもなかなかその歴史や文化的意味を知ることのないこうしたヘリテージを大切にし、守っているのは、イギリスの素晴らしいところの一つだと思います。 もしあなたが、この季節にイギリスを旅するのであれば、ぜひ、こうしたオープン・ハウス、オープン・ヘリテージの機会を利用して、さらに奥深くイギリスの文化や歴史に触れてみてはいかがでしょう?
*ロンドンオープンハウスフェスティバル
ウェブサイト:programme.openhouse.org.uk
*ヘリテージ・オープン・デイズ
ウェブサイト:heritageopendays.org.uk
マクギネス真美
英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。
ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。
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