次のイギリス旅行で訪ねたいイングランドの隠れた名所|レイコック | ブリティッシュメイド

English Garden Diary 次のイギリス旅行で訪ねたいイングランドの隠れた名所|レイコック

2025.03.25

イギリスで日本人観光客に人気の場所といえば、なんといってもコッツウォルズ。丹念に手入れされていながらも、ナチュラルな植栽が花と緑の美しさを際立たせるイングリッシュガーデンや、ハニーストーンと呼ばれるハチミツ色の石でできた家々の並ぶ様子が、まるで絵本に出てきそうな美しさです。ここはまさに日本人がイメージする「イギリスのカントリーサイド」そのもの。穏やかで、どこか懐かしい雰囲気に惹かれて、訪れる人が後を絶たないのかもしれません。

マクギネス真美 レイコック 英国旅行 イギリス200年前とほぼ変わらないというのがレイコックの村。
そんなコッツウォルズの中でも、地域全体が、イギリスの景観や歴史的建築物の保護に尽力しているチャリティ団体ナショナル・トラストによって管理されているという、特別な村があります。それが今回ご紹介するレイコックです。

13世紀から続く修道院

レイコックは人口が推定500人前後といわれる小さな村です。とはいえ、観光地としては大変人気があり、春から夏にかけては、住人以上かと思う数の人々がつめかけます。村ではなんといってもその中心にある修道院、レイコック・アビーが有名です。

マクギネス真美 レイコック 英国旅行 イギリスまさに『ハリー・ポッター』の世界を彷彿とさせるゲート。
ここは、当時大変な権力を有していたソールズベリー伯爵夫人であったイーラ(Ela of Salisbury)が、1232年に夫を亡くした時、尼僧として余生を捧げるために建てた修道院です。13世紀に建てられたこの建物は、現在でも森の静寂に囲まれた敷地の中にあります。そして、長い歴史があるという以上にこの修道院が有名な理由のひとつは、映画『ハリー・ポッター』の撮影ロケ地だということです。今でも、日本人はもとより世界中のファンがまるで聖地巡礼というばかりにこの地を訪れています。

マクギネス真美 レイコック 英国旅行 イギリス観光客が必ず記念撮影をするという回廊部分。
私がここを訪ねた日は、まだ寒い初春のウィークデーで観光客は少なかったのですが、回廊で写真を撮っていると、イギリス人女性が近寄ってきて

「あなたもハリー・ポッターのファン? 日本から来たの?」

と話しかけてくれました。

「ほら、ここがハリーが『みぞの鏡』を見た場所よ。」

ハリー・ポッターファンの彼女は、もう何度もここを訪ねているらしく、私にいろいろ教えてくれました。

マクギネス真美 レイコック 英国旅行 イギリス『みぞの鏡』があった部屋。
我が家の子どもたちは小学生の頃『ハリー・ポッター』の本が大好きで、何冊もあるシリーズを繰り返して読んでいましたが、私は映画『ハリー・ポッターと賢者の石』を見たことがあるだけ。でも、レイコックを訪ねるにあたって、前日に映画を見直して予習してきたので、イギリス人女性の熱心な語りに話を合わせることができ、ほっとしました。

マクギネス真美 レイコック 英国旅行 イギリス『ハリー・ポッター』のなかでもスネイプファンには見逃せない、魔法薬学の行われた部屋。
このように、『ハリー・ポッター』ファンにとって巡礼地ともいえる大切な場所ですが、ゴシック様式とチューダー様式が混在した建物、中世の雰囲気を色濃く残す中庭に広がる回廊など、『ハリー・ポッター』ファンでなくてもこの修道院を訪れる時間は、やはりこの村でのハイライトといえます。

マクギネス真美 レイコック 英国旅行 イギリス修道院周辺の自然のなかの散策も楽しい。

13世紀から続く修道院

そんなレイコック修道院ですが、1539年にはヘンリー8世による修道院解散令によって閉鎖されるという事態になりました。その後、この場所は富裕な貴族のカントリーハウスへと姿を変え、時代ごとに、ルネッサンス様式、ゴシック様式の部分が付け加えられていくこととなります。

マクギネス真美 レイコック 英国旅行 イギリス建築史的にも興味深い修道院の建物。
そして、ビクトリア時代にこの家に住むようになったのが、世界で初めてネガフィルムの写真を撮影したウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット(William Henry Fox Talbot)とその家族でした。つまりこの修道院は、19世紀には写真の歴史において大変重要な場所となったのです。

マクギネス真美 レイコック 英国旅行 イギリス写真に興味がある人にとっては見逃せないフォックス・タルボット博物館。
敷地内にあるフォックス・タルボット博物館では、彼の実験や当時の機材などを見ることができます。現代ではほとんどの人が携帯電話のカメラを使って、いつでも撮影を行える時代となりましたが、つい200年前には、写真というものはほとんどの人にとって未知の存在だったのがこの展示を見るとよくわかります。そのことを思うと、博物館内の展示物を携帯のカメラに収めながら、人間の探究心と私たちが生きている時代の変化の速さを感じずにはいられませんでした。

絵になる村

レイコックの村全体は、ひと回りするだけなら30分くらいで歩くことができるほどのこじんまりとした場所です。この村は『ハリー・ポッター』だけでなく、『ダウントン・アビー』や『プライドと偏見』『クランフォード』『ウルフ・ホール』など、たくさんの映画やドラマのロケ地として頻繁に登場しています。というのも、レイコックの村には電柱やアンテナといった現代的なものがほとんどなく、18世紀や19世紀の雰囲気をそのまま再現できるからです。

マクギネス真美 レイコック 英国旅行 イギリスポストや道路のサインがなければ、まるで中世にいるような街並み。
14世紀から続くパブも現存し、村を散策していると、まるでイギリスの時代劇の中にタイムスリップしたような気になります。

マクギネス真美 レイコック 英国旅行 イギリスSign of the Angelというレストランの前もロケ場所として有名。
レイコックは小さな村ですが、訪れる人によって何に魅力を感じるかはそれぞれ。歴史が好きな人には修道院や街の建物に感銘を覚えるでしょうし、映画やドラマのファンなら、ロケ地に立つだけで感激するでしょう。また、自然の中を散策することで穏やかな気持ちになり、イギリスのカントリーライフを想像して幸せな気分を味わう人もいるでしょう。

マクギネス真美 レイコック 英国旅行 イギリス小さな村の中にはインスタ映えする可愛いお店が点在。
春から夏にかけての季節は最もおすすめですが、どの季節に訪れても、イギリスの歴史と自然の美しさに浸るにはピッタリの場所。ぜひ次のイギリス旅行には訪ねてみてください。

*レイコック村へのアクセス:
ロンドン・パディントン(London Paddington)駅から電車でチッペナム(Chippenham)駅まで(約1時間15分)。チッペナム駅からバスまたはタクシー
*レイコック・アビーNational Trust Lacock Abbey, Fox Talbot Museum and Village
住所: Lacock, Chippenham SN15 2LG
入場料:時期によって変動があるため、事前にウェブサイトにて確認を

Photo&Text by Mami McGuinness


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マクギネス真美

英国在住22年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物、人物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。ポッドキャスト"The Real You with Mamita"および音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。

ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』ではコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。

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