
ハーブを“治療薬”として処方してもらう国、イギリス

ハーブの “薬効”は古くから知られ、中世以来ヨーロッパ世界ではメディカルハーブの知識が体系化されてきた。イギリスは、現代でも国が認定する資格を有した「メディカルハーバリスト」が存在し、人々の体調の不調や体質に合わせたハーブを“治療薬”として処方している国である。すでに処方箋が処方されていたり、病名が付くなどの場合を除き、風邪や心体のだるさ、喉の痛みなどのちょっとした不調に関しては、資格や知識を持つメディカルハーバリストに相談し、体質に合ったハーブを処方してもらうことが多いのだ。
ハーブを有効に使い、暮らしに役立てるすべを学ぶ

冬の入り口の12月には、イギリスのハーブ薬局では喉の痛みや冷えなど、風邪の症状を相談しに訪れる人々が後を絶たない。そんな風邪の初期症状によくおすすめされるのが、エルダーフラワーというハーブだ。エルダーはヨーロッパの森林や川岸に自生する針葉樹で、成長すると10mほどの高さにまで成長する。鼻水、鼻づまり、喉の痛みなどの粘膜・粘液の浄化や呼吸を楽にするなど、風邪の諸症状からインフルエンザ、気管支炎の諸症状の緩和や花粉症、余計な水分や毒素の排出などにも効果がみられるといった、高い薬効が知られるハーブだ。
冬の体調不良には「万能の薬箱」エルダーフラワーを

エルダーは初夏にクリーム色の花を一斉に咲かせる。日本ではまだ馴染みが薄いが、イギリス人はエルダーフラワーの開花に夏の訪れを感じると言われるほど、親しみのあるハーブだ。そのマスカットのような甘い芳香から、花をドライにしてハーブティーにするほか、柑橘やショ糖類と漬け込んだコーディアル(シロップ)にされることが多い。エルダーフラワーコーディアルは、イギリスでは水やお湯割りにしたり、ジンで割って飲まれている。お酒の苦手な人へのカクテルとして炭酸で割ったりと様々に愛されるコーディアルは、さわやかな香りとジューシーな甘味に心がホッとする味わいだ。もちろん美味しいだけではなく、薬草としての効用を期待して、冬の時期のイギリスの一般家庭で愛飲されている。

Text by K.Tateishi / 立石 郁