イギリスの家には、たいてい二つのガーデンがあります。玄関先にあるのがフロント・ガーデン。最近ではレンガやコンクリートを敷き詰めて車が乗り入れられるようにしてある家も増えてきましたが、花壇のある庭もまだまだ健在です。そこには、球根花、宿根草、一年草がとりどりに植えられていて、シーズンごとの花が咲く様子から季節の移り変わりを知ることができます。
また、春から秋まではドアのそばにハンギング・バスケットが飾ってあるお宅も多くあります。バスケットからこぼれ咲く花々は「welcome」と、ゲストをあたたかく迎えるシンボルのようにも思えます。
通りを行き交う人の目に触れるフロント・ガーデンですから、どこの家でも手入れが行き届いているのが普通。観光でイギリスを訪れた方たちは、こうした前庭を見て「さすがガーデニング好きのお国柄」などと感心することでしょう。
家に案内されて入っていき、ダイニングやキッチンの窓越しに見える、(たいていは)縦に長く広がった庭がそれ。そこには、玄関からは想像もしなかったような個性あふれる風景を見ることができます。
子どものいる家庭では一面に芝生を敷き詰めて、サッカーゴールやトランポリン、小さなブランコなどを置き、周辺に大小様々な木々や草花などをバランスよく植えてあります。
あるいは一面バラ尽くしのローズ・ガーデンには、アンティーク風の木製ベンチが置かれていたり。
仏頭や灯籠が紅葉などと一緒にディスプレイされていることもあります。
ガーデニング雑誌で特集されてもおかしくないような、丹精を尽くしたデザインの庭もあります。
そこは、ちょっとおすましした表玄関からは伺い知ることのできない、イギリス人ガーデナーのクリエイティビティとパッションを表現した場所。見かけは礼儀正しくおとなしいのが、親しくなるにつれ、本来の茶目っ気や大胆さを見せてくれるようになるイギリス人気質にも通じるところがあるかもしれません(?)
庭にはガーデン・テーブルと椅子も揃えてあります。いつまでたっても明るい夏の夕べには、そこで庭を見ながらバーベキューをしたり、ワインを飲んでおしゃべりをしたり……。そんな風に、バック・ガーデンはイギリス人たちのプライベートな憩いの場でもあるのです。
とはいえ、イギリス人の知り合いでもいない限り、バック・ガーデンを見ることはなかなかできません。
でも、友人や知人でなくても、一般家庭のガーデンを訪ねるチャンスがあります。
「ザ・ナショナル・ガーデン・スキーム」(The National Garden Scheme)がそれです。これは、個人宅の庭や、普段一般公開されていない庭園がオープン・デーを設け、入場料をチャリティに寄付するというもの。
また、1931年には「イエローブック」と呼ばれるハンドブックが発行されました。そこには、オープン・ガーデンを開催する場所と日時が記載されていて、それを頼りに、人々は見学に行きたい場所を容易に選ぶことができるようになりました。
同書の内容をロンドンあるいは各地方のエリア毎にまとめた薄い小冊子については、各地の観光案内所やガーデンセンター、図書館などで無料で配布されています。
また、ザ・ナショナル・ガーデン・スキームのウエブサイト上でもエリアや公開日に合わせた庭を探すことができるので、日本からイギリスを訪れる前に調べることが可能です。
一般公開している庭の中には、見学客のためにケーキや紅茶などを準備してくれているところもあり、それらをゆっくりと楽しみながらオーナーから庭についての話を聞くのも楽しみのひとつ。
すでに今月オープンしている庭もありますが、おすすめはやはりイギリスの庭が最も美しい時期といわれる5~7月です。今年はイングランドとウェールズで約3800ものガーデンが公開予定。イエローブックを頼りに、イギリス人のプライベート・ガーデンを訪ねてみませんか。
*The National Garden Scheme ウェブサイト:http://www.ngs.org.uk
また、春から秋まではドアのそばにハンギング・バスケットが飾ってあるお宅も多くあります。バスケットからこぼれ咲く花々は「welcome」と、ゲストをあたたかく迎えるシンボルのようにも思えます。
通りを行き交う人の目に触れるフロント・ガーデンですから、どこの家でも手入れが行き届いているのが普通。観光でイギリスを訪れた方たちは、こうした前庭を見て「さすがガーデニング好きのお国柄」などと感心することでしょう。
花が溢れるガーデンは見るだけでウキウキしてくる
でも、イギリス人が自慢する本当のガーデンは、家の奥を抜けた先にあるバック・ガーデンだというのをご存知でしょうか。家に案内されて入っていき、ダイニングやキッチンの窓越しに見える、(たいていは)縦に長く広がった庭がそれ。そこには、玄関からは想像もしなかったような個性あふれる風景を見ることができます。
子どものいる家庭では一面に芝生を敷き詰めて、サッカーゴールやトランポリン、小さなブランコなどを置き、周辺に大小様々な木々や草花などをバランスよく植えてあります。
あるいは一面バラ尽くしのローズ・ガーデンには、アンティーク風の木製ベンチが置かれていたり。
ベンチに座ってゆっくり庭を眺めるのも楽しい Photo: ©The National Garden Scheme
庭の一角に「ヴェジ・パッチ(Veg Patch)」と呼ばれるスペースをとって、トマトやズッキーニなどの野菜、ハーブ類を育てている人もいます。仏頭や灯籠が紅葉などと一緒にディスプレイされていることもあります。
ガーデニング雑誌で特集されてもおかしくないような、丹精を尽くしたデザインの庭もあります。
そこは、ちょっとおすましした表玄関からは伺い知ることのできない、イギリス人ガーデナーのクリエイティビティとパッションを表現した場所。見かけは礼儀正しくおとなしいのが、親しくなるにつれ、本来の茶目っ気や大胆さを見せてくれるようになるイギリス人気質にも通じるところがあるかもしれません(?)
庭にはガーデン・テーブルと椅子も揃えてあります。いつまでたっても明るい夏の夕べには、そこで庭を見ながらバーベキューをしたり、ワインを飲んでおしゃべりをしたり……。そんな風に、バック・ガーデンはイギリス人たちのプライベートな憩いの場でもあるのです。
とはいえ、イギリス人の知り合いでもいない限り、バック・ガーデンを見ることはなかなかできません。
でも、友人や知人でなくても、一般家庭のガーデンを訪ねるチャンスがあります。
「ザ・ナショナル・ガーデン・スキーム」(The National Garden Scheme)がそれです。これは、個人宅の庭や、普段一般公開されていない庭園がオープン・デーを設け、入場料をチャリティに寄付するというもの。
ザ・ナショナル・ガーデン・スキームには、それぞれに個性のある庭が登録されている
Photo: ©︎The National Garden Scheme
この制度が設立されたのは1927年です。この年には609ヶ所の庭が一人につき1シリングという入場料で公開され、8000ポンドの寄付を集めたといいます(2016年には270万ポンドが各種チャリティ団体に寄付されたそうです)。Photo: ©︎The National Garden Scheme
また、1931年には「イエローブック」と呼ばれるハンドブックが発行されました。そこには、オープン・ガーデンを開催する場所と日時が記載されていて、それを頼りに、人々は見学に行きたい場所を容易に選ぶことができるようになりました。
今年で90周年を迎えるザ・ナショナル・ガーデン・スキームの2017年版カタログ
表紙が黄色だったことから「イエローブック」と名付けられたこの本は、今年も3月上旬に発行されました。昨年までは写真が使われていた表紙が、今年からはイラストになり、タイトルも「ガーデン・ビジターズ・ハンドブック」と変更。見た目のイメージは変わりましたが、イギリスのガーデナー、庭園愛好家にとって必携のガイドであることに変わりはありません。同書の内容をロンドンあるいは各地方のエリア毎にまとめた薄い小冊子については、各地の観光案内所やガーデンセンター、図書館などで無料で配布されています。
また、ザ・ナショナル・ガーデン・スキームのウエブサイト上でもエリアや公開日に合わせた庭を探すことができるので、日本からイギリスを訪れる前に調べることが可能です。
一般公開している庭の中には、見学客のためにケーキや紅茶などを準備してくれているところもあり、それらをゆっくりと楽しみながらオーナーから庭についての話を聞くのも楽しみのひとつ。
ジャングル・ガーデンと名付けられた庭の眺め Photo: ©︎The National Garden Scheme
有名な「チェルシー・フラワー・ショウ」で受賞した、プロの手による庭はもちろん素晴らしいですが、ガーデニングに熱心な一般のイギリス人宅の庭からもインスピレーションや感動を受けることはあるはず。そしてその庭訪問がチャリティ参加にもなるというのですから、ますます素敵です。すでに今月オープンしている庭もありますが、おすすめはやはりイギリスの庭が最も美しい時期といわれる5~7月です。今年はイングランドとウェールズで約3800ものガーデンが公開予定。イエローブックを頼りに、イギリス人のプライベート・ガーデンを訪ねてみませんか。
*The National Garden Scheme ウェブサイト:http://www.ngs.org.uk
マクギネス真美
英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。
ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。
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