イギリスでも、日本の桜とお花見は大変有名です。先日はBBCで「Springwatch in Japan: Cherry Blossom Time」という番組が放映され、日本の桜についての歴史や、花見の様子が特集されたほどです。
そのせいか、日本に興味のある人だけに限らず、わたしが日本人だとわかると「日本の桜は素晴らしく美しいのですよね? いつか見てみたいです。」と、熱っぽく語りかけてくるイギリス人がたくさんいます。
一方、イギリスで春に人々がその開花を待ち焦がれるものといえば「ブルーベル」です。詳しくはイングリッシュ・ブルーベル(学名:Hyacinthoides non-scripta)といい、青紫、または紫色をした花。細長い釣鐘形で、先の部分がくるりと反り返っているのが特徴です。
イングリッシュ・ブルーベルの花。茎がお辞儀をするように垂れ下がっているのが特徴です。 日本で桜前線を天気予報と同時に伝えるほどとはいきませんが、ブルーベルの咲く時期には、テレビでも新聞でも青紫色のこの花の咲く様子が必ず紹介されます。たいていは4月末から5月上旬が花の見頃ですが、桜と同様に、毎年必ずしも同じ時期に咲くわけではありません。そのため人々は「今年のブルーベルはいつ咲き始めるだろうか」と、4月に入るとそわそわし始めるのです。
そして、テレビや新聞、インターネットで「ブルーベルが咲き始めた」という情報が出始めると、たくさんの人たちがお花見にでかけます。ブルーベルが咲くのは森の中。そのお花見は「ブルーベル・ウォーク(Bluebell walk)」などと呼ばれ、ブルーベルの咲く森林を歩きながら楽しむのが一般的です。
森の木々の下にブルーベルの花が広がっています。 花を見上げる日本の花見と違い、ブルーベルは目の前に青紫色の絨毯のような景色が広がります。木々の間にふわふわと浮かぶように、遠くの方まで一面に咲いているので、まるでそこに青い霧がかかっているようにも見えます。
草丈は膝の高さほどですから、その愛らしい花姿をよく見るために、しゃがんで近づいてみました。花からは柔らかな芳香が感じられ、気づくと頭上ではたくさんの鳥たちの歌声も聞こえます。それほど深い森というわけでもないのに、周りには人もおらず、高い木々と青い花がさざなみのように広がっているだけ……。
見渡す限りに青紫の色が続いています。 ブルーベルの咲く森には妖精が住んでいる、と言われますが、ここにいると、ほんとうに木陰や花の下に妖精が隠れていそうな気がしてきます。
さて、このように見る者を夢心地にさせてくれるブルーベルの森ですが、実はイギリスの各地で危機にさらされていると言われています。
というのも、スパニッシュ・ブルーベル(学名:Hyacinthoides hispanica)という繁殖力旺盛な外来種が増えて、それとの交配により、純粋なイングリッシュ・ブルーベルが減ってきているというのです。
葯がクリーム色というのがイングリッシュ・ブルーベルの見分け方のひとつ。 茎がすらりと細く、繊細な印象のイングリッシュ・ブルーベルに比べ、茎は太くてしっかりしていて、葉も大きく、花もどっしりとしたベル型のスパニッシュ。姿形を見ても、確かにスパニッシュのほうが強健に思えます。
スパニッシュ・ブルーベルも美しいのですが、イングリッシュ・ブルーベルにとっては脅威となる存在です。 そうした状況を受け、王立園芸協会 (Royal Horticultural Society)やウッドランド・トラスト(Woodland Trust)などは、スパニッシュ·ブルーベルや、スパニッシュとイングリッシュによる交配種であるハイブリッド・ブルーベルをブルーベルの森林近くのガーデンで育てないように、と注意を呼びかけています。
そうでないと、いつかイングリッシュ・ブルーベルの森はスパニッシュ・ブルーベルやハイブリッドにのっとられて、あの魔法にかかったような美しい風景は見られなくなってしまうかもしれないのです。
また、ブルーベルの人気が高まりすぎ、森林を訪ねる人が増えたことも問題となっています。道のない森の奥へ奥へと人が入り込んだり、写真を撮るために花を踏みつぶしてしまったり、と人間による被害も増えているともいいます。
ブルーベルの咲く時期、森ではワイルド・ガーリックも花をつけています。 とはいえ、一度あのおとぎ話の世界のような景色を見てしまったら、毎年見たくなるというのは当然のこと。わたしたち日本人が毎年桜の花見をせずにはいられないのと同じです。
遠くの方はまるで紫の霧がかかったよう。 イングリッシュ・ブルーベルの森がこれからもずっと、イギリスの春のお花見の場所として存続してくれるように、と願わずにはいられません。
ブルーベールの森を探すことのできるナショナル・トラスト・ウェブサイトのページ
→ www.nationaltrust.org.uk
イングリッシュ・ブルーベルとスパニッシュ・ブルーベルの違いについて
→ www.woodlandtrust.org.uk
Photo&Text by Mami McGuinness
そのせいか、日本に興味のある人だけに限らず、わたしが日本人だとわかると「日本の桜は素晴らしく美しいのですよね? いつか見てみたいです。」と、熱っぽく語りかけてくるイギリス人がたくさんいます。
一方、イギリスで春に人々がその開花を待ち焦がれるものといえば「ブルーベル」です。詳しくはイングリッシュ・ブルーベル(学名:Hyacinthoides non-scripta)といい、青紫、または紫色をした花。細長い釣鐘形で、先の部分がくるりと反り返っているのが特徴です。

そして、テレビや新聞、インターネットで「ブルーベルが咲き始めた」という情報が出始めると、たくさんの人たちがお花見にでかけます。ブルーベルが咲くのは森の中。そのお花見は「ブルーベル・ウォーク(Bluebell walk)」などと呼ばれ、ブルーベルの咲く森林を歩きながら楽しむのが一般的です。

草丈は膝の高さほどですから、その愛らしい花姿をよく見るために、しゃがんで近づいてみました。花からは柔らかな芳香が感じられ、気づくと頭上ではたくさんの鳥たちの歌声も聞こえます。それほど深い森というわけでもないのに、周りには人もおらず、高い木々と青い花がさざなみのように広がっているだけ……。

さて、このように見る者を夢心地にさせてくれるブルーベルの森ですが、実はイギリスの各地で危機にさらされていると言われています。
というのも、スパニッシュ・ブルーベル(学名:Hyacinthoides hispanica)という繁殖力旺盛な外来種が増えて、それとの交配により、純粋なイングリッシュ・ブルーベルが減ってきているというのです。


そうでないと、いつかイングリッシュ・ブルーベルの森はスパニッシュ・ブルーベルやハイブリッドにのっとられて、あの魔法にかかったような美しい風景は見られなくなってしまうかもしれないのです。
また、ブルーベルの人気が高まりすぎ、森林を訪ねる人が増えたことも問題となっています。道のない森の奥へ奥へと人が入り込んだり、写真を撮るために花を踏みつぶしてしまったり、と人間による被害も増えているともいいます。


ブルーベールの森を探すことのできるナショナル・トラスト・ウェブサイトのページ
→ www.nationaltrust.org.uk
イングリッシュ・ブルーベルとスパニッシュ・ブルーベルの違いについて
→ www.woodlandtrust.org.uk
Photo&Text by Mami McGuinness



マクギネス真美
英国在住22年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物、人物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。ポッドキャスト"The Real You with Mamita"および音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。
ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』ではコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。
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