リニューアル・オープンした「ガーデン・ミュージアム」を訪ねて | BRITISH MADE

English Garden Diary リニューアル・オープンした「ガーデン・ミュージアム」を訪ねて

2017.07.20

20170720_garden1 博物館一帯が緑で覆われた気持ちのいい空間
2015年10月に一旦閉館し、大規模な改修工事をしていたロンドンのガーデン・ミュージアム(Garden Museum)が6月に再オープンしたと聞いて、さっそく訪ねてみました。

場所はテムズ川沿い。ランベス・ブリッジ橋の南側にある教会で、ビッグ・ベンのあるウエストミンスター駅から徒歩15分ほどです。
20170720_garden2 前庭はこれから整う予定
「博物館なのに教会?」と不思議に思われたかもしれませんね。そう、ここはセント・メアリー・アット・ランベスという古い教会の建物を利用して作られた博物館なのです。博物館としてオープンしたのは1977年。でも、建物自体は11世紀の木造建築に始まり、14世紀には石造りのタワー(その後改修されて残存)が増築されたという、大変古い歴史があります。
20170720_garden3 ステンドグラスの手前にしつらえられたシェド(ガーデニング道具などをしまう小屋) Photo:©︎Garden Museum
ここが庭園博物館になったというのは、イギリスの庭園史において重要な役割を果たしたジョン・トラデスカント親子に由来しています。

彼らは16~17世紀に活躍した庭師で、当時、ロシア、アメリカ、アフリカを含む世界各地で植物収集を行っていました。そして、ロンドンのランベス地区にあった自宅に「方舟(The Ark)」と呼ばれる博物館兼植物園を開設していたのだそうです。

没後、二人とも、自宅近くのセント・メアリー・アット・ランベス教会に埋葬されました。1970年代になって、教会が取り壊されそうになったとき、ローズマリー・ニコルソンという人物が、イギリスの庭園史に欠かせない人物たちを記念する場所を失くしてはならない、とトラディスカント財団を立ち上げ、この場所を守ったのです。

それを考えると、この教会が現在、庭園博物館としてイギリスの庭園史を伝える場所になっているというのは、とてもふさわしいことに思えます。
20170720_garden6 「The Ark Gallery」にはオックスフォードのアシュモリアン博物館から貸し出されているトラデスカント親子の収集品が展示されている Photo:©︎Garden Museum
さて、わたしが以前この博物館を訪ねたのは確か十年以上前。当時は中が薄暗かったのを覚えています。

今回、博物館の中に入ると、クリーム色のトーンで彩られた壁と照明のおかげか、以前に比べてずいぶん明るい印象です。また、前にはなかった二階部分が増えているのが大きな変化。これらは常設展と特別展の両方が展示できるスペースになっています。

展示スペースは改修前の約3倍になったということで、以前が約140点程度だったのに対し、1000点以上もの物を展示することが可能になったそうです。
20170720_garden5 芝刈り機などの展示も Photo:©︎Garden Museum
展示物には、昔の園芸書や雑誌、ガーデニング道具や、シェドと呼ばれる庭の隅に置かれる小屋まであります。教会のステンドグラスを背景に、これらの品が展示されているのがユニーク。

ひとつひとつ解説を読みながら見ていると、イギリス人のガーデニニグに対する熱意に感心せずにはいられません。たくさんの展示物を見た後では「イギリスは『ガーデナーの国』と呼ばれています。」という一文に思わずうなずいてしまうことでしょう。
20170720_garden4 展示品のひとつひとつからイギリス人のガーデニングに対する情熱が伝わってくる
ほかに改修前と大きく変わった点は、建物内にあったカフェが、ガラス張りの空間として別の建物になり、おしゃれに生まれ変わったこと。博物館の入り口とは別の出入り口もあるので、カフェだけの利用にも便利です。
20170720_gm9---1 ショップにはお土産によさそうなものがたくさん並んでいる
20170720_garden10 ガーデニング関係書籍も豊富に揃っている
また、以前あったノット・ガーデンと呼ばれる、美しく刈り込まれたツゲの植栽をメインとした華やかな庭は、今回、世界的に有名なガーデン・デザイナー、ダン・ピアソン氏によるデザインで生まれ変わりました。まだ若い庭なので、これから植物が成長してくるのが楽しみです。
20170720_garden7 ダン・ピアソン氏デザインのガーデンは、博物館の歴史や成り立ちにふさわしい『エキゾチック』な植物を集めたという
取材時にはまだ出来上がっていませんでしたが、博物館の前庭は、ランドスケープ・アーキテクトのクリストファー・ブラッドレイ・ホール氏によるものだそうで、こちらも完成するのが待ち遠しい。

また、館内の「The Ark Gallery」では、トラデスカント親子の収集品を特別展示していたり、今回あらたに教会のタワーに上ることができるようになったり、とリニューアル・オープンによって、さらに訪ねる楽しみが広がりました。
20170720_garden8 トラデスカント親子にちなんで名付けられた植物のコレクション展示も
イギリスの庭めぐりやガーデニングの歴史に興味のある方におすすめの博物館です。

ガーデン・ミュージアム(Garden Museum)
住所:Lambeth Palace Rd, London SE1 7LB
TEL:+44 (0) 20 7401 8865
http://www.gardenmuseum.org.uk/
開館時間:
10:30~17:00(日~金曜)、10:30~16:00(土曜)
休館日:第一月曜
Photo&Text by Mami McGuinness

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マクギネス真美

マクギネス真美

英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。

ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。

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