イギリスの冬。ガーデンで「シェアすること」の喜びを知る | BRITISH MADE

English Garden Diary イギリスの冬。ガーデンで「シェアすること」の喜びを知る

2018.01.18

クリスマスという、一年で最も盛大なイベントを終えた1月。イギリスでは例年通り、ダイエットのすすめやスポーツ・ジムの入会案内などが、雑誌やインターネットの記事や広告に満載です。

あの賑やかで毎日がお祭り騒ぎのような気分から一転。どっしりとソファに腰掛け、紅茶を飲みながらほっと一息つき、クリスマスの出来事を思い返す時期でもあります。

イギリスのクリスマスというのは、日本のお正月に相当するような位置付けで、一年に一度、家族が一堂に会する機会です。クリスマスプレゼントを交換しあい、「クリスマス・ディナー」と呼ばれるごちそうを揃って食べるのがメイン・イベント(「ディナー」とは、 正餐の意で、必ずしも夕食というわけではなく、ランチ時や遅い午後にこの食事をとる家庭もたくさんあります)。

とにかく「たくさん飲んで、たくさん食べる」。そして、たくさんのプレゼントを贈り合う。そんな様子に、「マーケティングに踊らされた消費行動だ」と最近のクリスマスを批判する人もいます。

ここでは、子どもたちだけでなく、大人も皆そろってたくさんのプレゼント交換をするので、その量は膨大なものです。それを見ていると、確かに「商業主義、マーケティングに踊らされている」という感じは否めない面もあります。
20180119_3 野鳥たちへのクリスマス・プレゼント
一方で、人々の優しさや思いやりにふれることが多くなるのも、この国のクリスマスの特徴です。

この時期のイギリスでは、チャリティー団体による寄付募集のポスターがいつも以上に多く目につくようになります。雑誌に織り込まれたチラシや地下鉄内の広告などにも、ありとあらゆるチャリティ団体の名前を見かけます。

というのも、クリスマスには「シェア」をするということがいつも以上に意識されるのがこの国のありようだから。自分の持っているものに感謝しつつ、それをなんらかの形でほかの人々と分かち合おうという気持ちを持つ人が少なくないのです。

たとえば昨年は、ロンドン内の主要鉄道駅のひとつであるユーストンが、クリスマスの日にホームレスの人々にクリスマス・ディナーを振る舞う場所として解放され、200人分の食事が用意されたことがBBCのニュースで伝えられました。これは一例にすぎず、イギリス各地で、同様のチャリティ活動が行われていました。

あまりにたくさん募金があるので、もちろん、すべてに寄付をすることはできません。でも、私はこの国に来て、ほんの少しであっても、自分のできる範囲で寄付をしたらよい、ということを周りの友人や家族の行動から学びました。

そんなこともあり、クリスマスは私もいつもよりも少し多くチャリティに参加するようになりました。そして今年は、庭にくる鳥たちにも、クリスマスのプレゼントを作りました。

普段からバード・テーブルとバード・フィーダーとよばれる餌置き場に野鳥用の食べ物を置いているのですが、クリスマスにはそれに加えて、バード・ケーキ(Bird cake)を手作りすることにしました。家族揃ってクリスマスを迎えられることに感謝しつつ、その喜びを庭に来る野鳥たちともシェアできれば、と思ったのです。
20180119_4 イギリスのクリスマス・カードのモチーフとしてよく登場するロビンもバード・ケーキ(スーイット・ボール)がお好みのよう Photo: ©️RSPB
イギリスでは私と同じように、野生動物たちにもクリスマス・ディナーをあげようと考える人が多くいるようです。そういう人たちのため、19世紀から続く自然保護チャリティー団体の「王立鳥類保護協会(RSPB)」では、クリスマス・ディナーを鳥たちとシェアしようとする人への注意を呼びかけていました。
20180119_5 イギリスでは、庭や公園など、どこでもたくさんの野鳥の姿を目にする Photo: ©️RSPB
というのは、七面鳥を料理した油は、野鳥の羽につくとベタついて、汚れが取れず、鳥たちの命に関わる問題となってしまう可能性があるからです。また、サルモネラ菌などによる食中毒の原因になるようなクリスマス・ディナーの食べ残しをあげるのも危険。野生動物への親切があだにならないように気をつけなければいけません。
(詳しい内容はこちらの記事をご参照ください)。

RSPBのアドバイスを念頭に、私はスーイット(ケンネ脂)と野鳥の餌、チェダー・チーズ入りのバード・ケーキを準備。サンタクロース気分で、クリスマス・イブの夜、庭の枯れ木にこのケーキを吊るしておきました。翌日のクリスマスには、まだ鳥たちに知られていないせいか、ケーキを食べた形跡はありませんでしたが、5日後には、残り1/3ほどに小さくなっていました。鳩やロビン、ブラックバードといった野鳥たちが食べてくれたようです。

昨年のこの時期にご紹介したこちらの記事のように、冬のガーデンでは、野鳥たちを眺めるのが楽しみのひとつ。
20180119_6 冬のガーデンは寂しい印象だが、鳥たちが目を楽しませてくれる Photo: ©️RSPB
そして、やって来てくれる野鳥のために庭の木に吊るした小さなケーキは、鳥たちへのプレゼントというよりも、「シェアすること」の喜びを教えてくれる、私にとっての贈り物という気がします。

バード・ケーキの作り方については、RSPBのウェブサイトや、様々な書籍、雑誌などで紹介されています。また、RSPBによるビデオも公開されているので、作ってみようと思われる方は参考になさってください。

バード・ケーキの作り方

◯ 材料

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・野鳥用の餌、ひまわりの種、ピーナッツ、チェダー・チーズなど……300g
・スーイット(牛脂)またはラード(豚油)……150g
・紙コップ(ヨーグルトの容器などでも)、タコ糸

◯ 作り方

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1. 紙コップに穴を開けて糸を通しておく。
2. スーイットを鍋に入れて溶かす。
3. 他の材料をすべて2に入れてよく混ぜる。
4. 用意してあった1の容器に3を入れ、数時間冷やし、固まったら出来上がり。

*王立鳥類保護協会(RSPB)のウェブサイト
https://www.rspb.org.uk

Photo&Text by Mami McGuinness

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マクギネス真美

マクギネス真美

英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。

ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。

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