「イギリスにも青紫蘇があるの?!」と、初めてこの国で春を迎えた時にぬか喜びをさせられた植物、それがネトル(nettle)。日本ではイラクサと呼ばれるハーブです。
まだ時々は冬のコートを着てでかけなければならないほど寒い日もあるとはいえ、四月は植物の新芽が伸び、若葉が美しい季節。わざわざカントリーサイドまで出かけていかなくても、住宅街の片隅でさえ、春を感じさせてくれる植物を見ることができますが、青紫蘇そっくりのギザギザした葉っぱをしたネトルは、特に身近な野草です。繁殖力が旺盛な多年草のため、この時期、イギリス中のどこに行っても、簡単に見つけることができます。
現代ほど豊富な食料がなかった時代には、新春の貴重な食材であったであろうネトル。近頃では、ほうれん草やブロッコリーなどの野菜以上に豊富なビタミンCや鉄分などを含む健康食品としても注目されています。
イギリス人は、ネトルに触ってしまってこの痛みを感じると、すぐに「ドック・リーフ(Dock leaf)はない?」と言って、近くを探します。ドック・リーフとは、和名がエゾノギシギシという植物で、この葉をネトルに触れてしまった部分にこすりつけると、痛みが和らぐと言われているのです。面白いのは、この救急療法(?)を知らないイギリス人はいないのではないかというほど、ネトルに触れてしまった時には誰もが同じ行動をすること。「ネトルの棘に刺された時はドック・リーフ」の教えは、世代を渡って受け継がれている言い伝えのようなものかもしれません。
調べてみると、ドック・リーフの葉から出る液には抗ヒスタミン成分が含まれていて、それが痛みを和らげる役目を果たしているという説があるようですが、科学的に証明されてはいないとのこと。一方で、昔から誰もがドック・リーフの効用を信じていることからくる「プラシーボ」効果という説もあります。
そこで今回、我が身を挺して実験しましたが、確かにネトルに触ったあとの「じんじん」としびれるような痛みは、ドック・リーフの葉を強く押し付けたあと、若干和らいだ気がします(でも、完全に痛みがなくなったのは数時間後。皆さんは真似しないように、ネトル採集の際には厚めのゴム手袋などを着用ください)。
なんでも賭けにしたり、競いあうことの好きなイギリス人らしい、何ともばかばかしくて、でも、やっている方も見ている方も楽しむことのできる競争です。
私は生で食べる勇気はありませんが、新芽を摘んでスープを作りました。簡単でシンプルですが、まるで野原の香りがするようなフレッシュな味わいは、イギリスの春を体いっぱいに感じさせてくれるような気がします。
ネトルの葉(なるべく新芽や柔らかい葉を使用)……80g
玉ねぎ……1個
じゃがいも……1個
チキン・ストック……600ml
にんにく……1片
バター……20g
塩、胡椒……適量
作り方:
1、鍋にバターを入れて溶かし、玉ねぎを透き通るまで炒める。
2、1に薄く切ったじゃがいもとにんにくを入れてさらに炒める。
3、2にネトルとチキン・ストックを入れて5分ほど煮る。
4、3をフード・プロセッサーまたはブレンダーなどでスープ状にする。
5、4を鍋に戻し弱火でさらに少し煮て、塩・胡椒をして味を整える。
まだ時々は冬のコートを着てでかけなければならないほど寒い日もあるとはいえ、四月は植物の新芽が伸び、若葉が美しい季節。わざわざカントリーサイドまで出かけていかなくても、住宅街の片隅でさえ、春を感じさせてくれる植物を見ることができますが、青紫蘇そっくりのギザギザした葉っぱをしたネトルは、特に身近な野草です。繁殖力が旺盛な多年草のため、この時期、イギリス中のどこに行っても、簡単に見つけることができます。
ギザギザの葉が特徴のネトル。空き地や歩道の脇など、あちこちで見かけます。
そして、その若葉は、スープにしたりお茶にしたり、食用または薬用として、古くからイギリス人の生活に利用されてきました。それが証拠に、2011年にイングランド東部のピーターバラで見つかった青銅器時代の遺跡からは、ネトルのシチューのついたスプーンが発掘されたのですよ。現代ほど豊富な食料がなかった時代には、新春の貴重な食材であったであろうネトル。近頃では、ほうれん草やブロッコリーなどの野菜以上に豊富なビタミンCや鉄分などを含む健康食品としても注目されています。
日本の春はヨモギ摘みや土筆採りが思い浮かびますが、イギリスの春はネトル摘み。
また、ここ最近のイギリスでは、以前のこの記事でご紹介したように、野にある食用植物などを採集する「フォラジング(Foraging)」が人気となっていますが、簡単に見つけることのできるネトルは、ビギナーのフォラジャー(Forager)にとってはありがたい存在です。誰もが子供の頃から馴染みのある植物なので、毒性のある別の植物と間違えるといった心配もありません。 ワイルドガーリックも春のフォラジングで収穫できる植物。炒め物にしたり、ジェノベーゼ風のソースにしたりできます。
ただし、摘む時に気をつけなくてはならないのが、見た目には目立たない細い毛のような棘。葉っぱや茎にあるこの棘に触れると、思わず叫びだしたくなるほどの、しびれるような鋭い痛みを感じるのです。イギリス人は、ネトルに触ってしまってこの痛みを感じると、すぐに「ドック・リーフ(Dock leaf)はない?」と言って、近くを探します。ドック・リーフとは、和名がエゾノギシギシという植物で、この葉をネトルに触れてしまった部分にこすりつけると、痛みが和らぐと言われているのです。面白いのは、この救急療法(?)を知らないイギリス人はいないのではないかというほど、ネトルに触れてしまった時には誰もが同じ行動をすること。「ネトルの棘に刺された時はドック・リーフ」の教えは、世代を渡って受け継がれている言い伝えのようなものかもしれません。
調べてみると、ドック・リーフの葉から出る液には抗ヒスタミン成分が含まれていて、それが痛みを和らげる役目を果たしているという説があるようですが、科学的に証明されてはいないとのこと。一方で、昔から誰もがドック・リーフの効用を信じていることからくる「プラシーボ」効果という説もあります。
そこで今回、我が身を挺して実験しましたが、確かにネトルに触ったあとの「じんじん」としびれるような痛みは、ドック・リーフの葉を強く押し付けたあと、若干和らいだ気がします(でも、完全に痛みがなくなったのは数時間後。皆さんは真似しないように、ネトル採集の際には厚めのゴム手袋などを着用ください)。
プリムローズの花はこの時期に野原などで見かけるエディブルフラワー。これもフォラジングできます。ケーキのデコレーションなどに使用します。
不思議なことに、ドック・リーフはネトルの生えている近くに必ずと言っていいほど見つかります。
また、素手で触ると大変な痛みを感じるこの植物を、どれだけたくさん生で食べられるかを競う「ワールド・ネトル・イーティング・チャンピオンシップ(World Nettle Eating Championship)」という大会が、毎年、イングランド南西部にあるドーセットで開催されています。これは1980年代に、2人の農夫がどちらの畑にあるネトルが長いかで言い争ったことに由来するイベントだとか。なんでも賭けにしたり、競いあうことの好きなイギリス人らしい、何ともばかばかしくて、でも、やっている方も見ている方も楽しむことのできる競争です。
私は生で食べる勇気はありませんが、新芽を摘んでスープを作りました。簡単でシンプルですが、まるで野原の香りがするようなフレッシュな味わいは、イギリスの春を体いっぱいに感じさせてくれるような気がします。
毎年、この時期になると、新聞や雑誌、ウェブ上で、多くの料理家やガーデナーの人たちがネトルスープのレシピを紹介しています。
ネトルスープの作り方
材料:ネトルの葉(なるべく新芽や柔らかい葉を使用)……80g
玉ねぎ……1個
じゃがいも……1個
チキン・ストック……600ml
にんにく……1片
バター……20g
塩、胡椒……適量
作り方:
1、鍋にバターを入れて溶かし、玉ねぎを透き通るまで炒める。
2、1に薄く切ったじゃがいもとにんにくを入れてさらに炒める。
3、2にネトルとチキン・ストックを入れて5分ほど煮る。
4、3をフード・プロセッサーまたはブレンダーなどでスープ状にする。
5、4を鍋に戻し弱火でさらに少し煮て、塩・胡椒をして味を整える。
マクギネス真美
英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。
ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。
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