スタイリスト四方章敬さんがディレクションを務めるブリティッシュメイド オリジナルメンズコレクションから、初のショートパンツが登場! 英国にルーツをもつヴィンテージアイテムを現代の視点で再構築するというコンセプトはこれまでと同様ですが、加えて四方さんが今回テーマにしたのは、ショーツ初心者も挑戦しやすい“穿きやすさ”でした。
「実は僕、これまでショートパンツをあまり穿いたことがなかったんです。周りを見ても、とにかく涼しくて夏には欠かせない!という声がある一方で、『合わせるのが難しそう』『ラフになりすぎてしまいそう』といった苦手意識を感じている人も多い。なので、そういった人にもトライしやすいショーツにしたいという思いがありました」と話す四方さん。その実現のため、今回も試行錯誤を重ねながら様々な工夫を凝らしました。その一部始終をご紹介しましょう。
「実は僕、これまでショートパンツをあまり穿いたことがなかったんです。周りを見ても、とにかく涼しくて夏には欠かせない!という声がある一方で、『合わせるのが難しそう』『ラフになりすぎてしまいそう』といった苦手意識を感じている人も多い。なので、そういった人にもトライしやすいショーツにしたいという思いがありました」と話す四方さん。その実現のため、今回も試行錯誤を重ねながら様々な工夫を凝らしました。その一部始終をご紹介しましょう。
’80年代の英国軍グルカショーツを穿きやすくモディファイ
グルカショーツ 「ホワイトホール」
1857年に起こったインド大反乱の際に英国軍へ加わり戦果を上げたグルカ兵のユニフォームとして有名になったグルカショーツ。裾幅の広いゆったりしたシルエットと独特なベルトレスウエストを特徴とし、近年ヴィンテージ市場でも人気を高めているアイテムです。今回モチーフとしたのは、1980年代に英国軍で採用されていたモデル。
「グルカショーツといえば、ウエストバンドから伸びたストラップをフロントでクロスさせて留めるデザインで知られていますが、そのタイプはアイコニックである一方、脱ぎ穿きが面倒だったり見た目に独特なクセがあったりして、穿きやすさという面では少々難あり。そこで今回はあえて、シンプルなウエストデザインの’80年代仕様を採用しました。グルカ特有のヘリテージ感が薫りつつ、ショーツ初心者の方も挑戦しやすいアイテムになったと思います」と四方さん。S・M・Lの3サイズ展開ですが、サイドアジャスターにより幅広い体型にマッチするのも特徴。 サイドアジャスターで左右合わせて約6cm、2インチ強ウエストサイズ下げることが可能です(Mサイズなら77〜83cm)。
ちなみに本作の名前は「ホワイトホール」。ロンドンのシティ・オブ・ウエストミンスター内に走る道路に由来し、同地にグルカ兵の銅像があることからモデル名に採用しました。
ヴィンテージの雰囲気を忠実に再現したチノクロスを採用
「ホワイトホール」に採用した生地は、リアルヴィンテージに極めて近い武骨なチノクロス。’40年代のミリタリーウェアに使用されていた生地を研究して生まれたもので、紡績の撚り方向を通常の逆にするなど糸からこだわって開発されています。また、普通のチノクロスは生地の綾がくっきりと直線的になっているのに対し、こちらは綾がランダムによろけているのが特徴。「VAT」という昔ながらの染料を使用していることとも相まって、濃厚なヘリテージ感を漂わせています。
「今回はシルエットを大きくモダナイズしているので(下で解説)、生地は“本気感”にこだわりました。近年、多くのブランドがグルカショーツを提案していますが、ここまでヴィンテージテイストが強い素材を採用することは稀だと思います。色は’80年代グルカに近いベージュと、汎用性の高いネイビーの2種類を選びました。ちなみに仕上げの段階でウォッシュなどの加工を施す案もありましたが、あえてほぼ無加工にしています。これだけ味のある素材なので、ご自身で穿き込んで味を出していただきたいという意図を込めました」(四方さん)
シルエットは原型から大きくモダナイズ
ここで、モチーフとなった’80年代グルカ(左)と「ホワイトホール」(右)を比較してみましょう。大きな違いはシルエットのバランス。原型はかなりたっぷりとしたシルエットで、裾が膝下まであるロング丈になっています。対して「ホワイトホール」は、裾に向かって広がるボリューム感は踏襲しつつ、全体的に程よくすっきりとしたバランスに設定。丈も膝上に裾がくるようモディファイしました。
「原型のショーツも所有しているのですが、雰囲気としては大変気に入っている一方でシルエットのバランスには難を感じました。どうしてもダボっとした印象に見えてしまい、かなり気を配らないと大人っぽくスタイリングできないのです。そこで『ホワイトホール』では、原型の雰囲気を残しつつ誰にでも穿きやすいようアレンジを加えました。シンプルにTシャツを合わせてもラギッドになりすぎず、上品な大人の装いとして成立するようデザインしています。とはいえスリムにしすぎるとイタリアンテイストになってしまうので、あくまでブリティッシュな顔つきを崩さないよう気を配りました」(四方さん)
加えて、ウエストバンドを原型より若干細くしたり、ボタンを水牛製にアップグレードしたりするなど細部もモディファイ。また見えないところでは、原型がボタンフライであるところをジップフライに変更し、機能面もアップデートしています。
大ヒットした「ポーツマス」のDNAも継承
実は本作、先だって発売し大好評をいただいていたオフィサーパンツ「ポーツマス」のエッセンスも注入しています。プリーツの深さや間隔、股上の深さといったパンツの顔となる部分のバランスを継承しつつ、’80年代グルカのデザインと融合させているのが特徴。
「手前味噌ながら『ポーツマス』のデザインはかなりよく出来たと思っていて、実際に高い評価もいただいていましたので、『ホワイトホール』にもその魅力を継承させることにしました。両者とも英国のミリタリーパンツをモチーフにしているので、すんなりと違和感なく調和してくれましたね」(四方さん)
最大の特徴は、前後合わせて8本のプリーツ
「ホワイトホール」のデザインで最も特徴的なのは、前だけでなく後ろ側にも左右それぞれ2本のプリーツが入っている点。これは原型となった’80年代グルカにも採用されていた仕様で、パンツの可動域を広げ動きやすさを高める目的で考案されたものといわれています。フロントはインプリーツ、バックはアウトプリーツとした点も原型から踏襲しました。
「比較的シンプルな’80年代グルカですが、この8本タックが独自性として光っています。ですので、ここは是非とも再現したいポイントでした。それから、プリーツの上部を縫い留めず仕立てることにより、プリーツがふんわりと広がるよう設計しているのも特徴。シルエットも立体的になっています」(四方さん)
サイドアジャスターは現代的に改良
ウエストを調節するサイドアジャスターは、見映えや利便性を考慮してアレンジ。原型はウエストバンドの上にアジャスターを縫い付けた簡素な仕立てでしたが、「ホワイトホール」はウエストバンドの中に潜り込む形としました。英国のドレスパンツなどにも採用される、高級感ある作り方です。また、原型はアジャスターを前側に引っ張って調節する設計でしたが、現在の主流に合わせて後ろに引っ張る形に変更しました。原型に比べてスムーズな調整が可能になっています。金具はアンティークブラスをチョイス。
「言われないとわからないような変更点ですが、こういう細かい部分も見映えや穿きやすさに影響しますので、しっかり吟味しながら作り込みました」(四方さん)
360°美しい、立体的なシルエット
8プリーツはデザイン上のアクセントだけでなく、シルエットの美しさにも貢献しています。後ろ側にもプリーツをとることで、ヒップラインがより立体的になっているのがわかるはず。
「普通、シルエットを現代的にスリム化するとお尻周りが薄くなってしまい、横から見たときにどこか物足りない印象になってしまうのですが、後ろ側のプリーツによってその問題を解消しました。ダボつかず、それでいてボリューム感のある絶妙な塩梅だと思います。トップスをタックインしたときの見え方も大変美しいですね。それから、裾幅は原型に従ってある程度太さを残していますが、脚を包み込むような形でほんの少しだけ内側にカーブするようなシルエットに設定している点にも注目。これによって、ボリュームがあってもダボついて見えず、大人っぽい佇まいになるのです」(四方さん)
素朴に見えて、実は贅沢な作り
一見シンプルで素朴な印象の「ホワイトホール」ですが、実はかなり贅沢な作り方をしています。
「8本のプリーツは美しいシルエットを描き出せる一方で、使う生地の量が一般的なショーツと比べてかなり多くなります。しかも『ホワイトホール』はそれぞれのプリーツが深いので、ほとんどロングパンツなみの生地が必要になりました。そのうえ、生産を依頼したのはオフィサーパンツ『ポーツマス』と同じ長野アルプス社。本来は高級ドレスパンツを手がけるファクトリーのため、カジュアルなショートパンツの生産は基本的に行わないのですが、特殊な8プリーツをバランスよく仕立てるためにはここの技術力が必要だったのです。なので、生地面でも生産面でも贅沢な仕様になっているのですが、ショートパンツなのにロングパンツと同じ価格……とはしたくなかった。ですので、今回も関係各所にかなり頑張っていただいて、できる限り価格を抑えました。これは相当なコストパフォーマンスだと思っています」(四方さん)
四方さんが実演!「ホワイトホール」の着こなし4スタイル
トラッドの定番配色をシャツ&ショーツで表現
ショーツ:BRITISH MADE ー グルカショーツ 「ホワイトホール」
シャツ:BRITISH MADE ー オフィサーシャツ「プリマス」
シューズ:JOSEPH CHEANEY ー CAIRNGORM H R
シャツ:BRITISH MADE ー オフィサーシャツ「プリマス」
シューズ:JOSEPH CHEANEY ー CAIRNGORM H R
「ネイビーブレザーにベージュチノという合わせはトラッドの大定番ですが、その配色をリネン×レーヨンのオフィサーシャツと『ホワイトホール』で夏仕様に表現しました。ゆったりしたシルエットのシャツとグルカショーツは相性抜群の組み合わせで、清涼感あるリラックススタイルとしておすすめです。足元はサンダルやスニーカーだと軽すぎるので、スエードの紐靴を合わせました」 (四方さん)
ローゲージニットで上品なサマースタイルに
「コットンのケーブルニットを合わせて、上品なトップスとラギッドなパンツのコントラストを効かせました。グルカショーツは普通のショートパンツよりも存在感があるので、ざっくりしたローゲージニットとの相性もいいですね。袖は無造作にたくし上げてニュアンスを加えました。非常にシンプルなコーディネートですが、『ホワイトホール』の存在感が効いてこなれた感じに見えると思います」 (四方さん)
ネイビーワントーンでシックな夏スタイルに
「最近、再び気になっているネイビーワントーンのスタイルを、ミドルゲージニットとグルカショーツで表現。夏のダークトーンは重苦しく見えがちですが、ショートパンツのおかげでシックさと軽快感を両立できていると思います。首元にチラリと覗かせた白Tシャツで抜けを作っているのもポイント。都会に似合うショートパンツスタイルですね」 (四方さん)
洗いざらしのシャツを合わせて無造作に
「Tシャツの上にジャケット感覚でシャツを羽織りました。シャツは洗いざらしで、無造作な雰囲気を演出しています。靴はジョセフ チーニーの名作ミリタリーシューズ『ケンゴン Ⅱ R』。ふと思ったのですが、『ホワイトホール』はジョセフ チーニーと非常によく合いますね。英国由来で、ラギッドさと上品さを融合させたデザインという共通項を持っているからでしょう。ですので、ジョセフ チーニーを普段愛用している方にも是非おすすめしたいパンツです」 (四方さん)
気楽に穿きたいショートパンツだからこそ、シンプルなコーディネートでもサマになり、脱ぎ履きもノンストレスな“穿きやすい”パンツにしたい。そんな思いのもとで生まれた「ホワイトホール」。四方さんは「とにかく一度、試着だけでもしてほしい」と力を込めて話します。
「百聞は一見に如かずといいますが、とにかく一度穿いていただければ魅力を感じていただけるパンツだと思っています。アウトドアでもリゾートでもない、大人のタウンウェアとしてのグルカパンツ。そして、ヴィンテージとも現行品とも違う“ありそうでない”顔つき。僕自身、“これはいい!”と自画自賛してしまいました(笑)。これまでショートパンツを敬遠してきた方でも、きっとお気に召していただけると思います」
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