ブリティッシュメイドオリジナルウェアはスタートから3年の月日が流れました。現在、年間通して一番人気となっているアイテムはパンツです。今回、パンツ製作の裏側を1本の動画にまとめると共に改めてブリティッシュメイドのパンツについてディレクションを行うスタイリスト四方さんにインタビューを敢行。本コンテンツではインタビューの全容を掲載します。
Q. ブリティッシュメイドでパンツをつくろうとしたきっかけは?
A.「スタイリストという職業柄、パンツを含め様々な洋服を見る機会があり、ここがこうだったらなと感じることがありましたので、それを形にしてみたいという想いがありました。市場を見たときにパンツはイタリア系のスリム、ドメスティック系のゆったりなどいくつかの傾向がありましたのでそれとは異なる今の時代にちょうどいい、大人が穿けるありそうでないパンツをつくりたいなと」「ブリティッシュメイドオリジナルウェアをディレクションしていく中でパンツはシャツ、コートをリリースした後の第三弾として制作に取り組み、2021年の12月にオフィサーパンツをローンチすることができました」
Q. ブリティッシュメイドのパンツをつくるうえでのこだわりは?
A.「クオリティ。そしてスタイリングの組みやすさ。また、ブリティッシュメイドらしさを表現する上で欠かせない部分としてイギリスにルーツがあるデザインやディティール、素材などを取り入れつつ、大人が穿ける、市場にありそうでないものをつくれればと考えています」Q. 具体的にそのこだわりをどうやってアイテムに反映させている?
A.「まずアイテムを作るうえでテーマやコンセプト、ポジションを決めます。それに合わせて適切な仕様、生地、シルエットなどを選んでいきます。単純に良い生地を使う、良い工場に依頼するということだけでなく、目的に対して最適解を出せるように総合的に組み立てていきます。組み合わせや相性によって服の印象は大きく変わりますので全体を考えて目的に対して理想的なものをつくる様に心がけています」Q. 大人が穿けるパンツとは?
A.「シルエットが綺麗であること。この部分は生地やパターンを緻密に詰めたうえで、仕立てが良いパンツ工場でつくっていただくことが重要になってきます。クオリティに関わる部分ですね。だらしなく見えない、シーンにマッチするということも大切です。華美なデザイン、シルエットではないのによく見えると大人だなと感じる人も多いのではないでしょうか。そういったパンツは大人が穿くのに適していると思います」Q. パンツづくりで難しく感じる部分は?
A.「シルエットが綺麗で穿き心地も良い。そしてスタイリングも組みやすく、時代に合っている、さらにプライスも納得できるものに組み立てていくことが一番難しく感じる部分です。バランス良く、過不足なく取捨選択していくには最終的な完成系のイメージが無いとその過程で判断していくことが難しいです。クオリティを求める上で良いものを選ぶことは大切ですが、目的に対して本当に良いものとなっているかを考えることが重要です。デザインや仕様に関しても同様で必要な仕様は必ず取り入れるべきですが、無い方が良い仕様を取り入れてしまうとデザインとしての洗練度が下がることもありますし、工程数が増えれば当然コストも上がります。良いもの、使いやすいものをつくる前提でやりすぎにならない、過不足ない状態にできる様に心がけています」Q. オフィサーパンツ「ポーツマス」について
A.「究極のグレースラックスというテーマで最初に作ったパンツがウールのオフィサーパンツでした。普通のドレスパンツではちょっとヒネリがない。そこでイギリスのヴィンテージを色々とリサーチして、’60年代のロイヤルネイビー(英国海軍)オフィサーパンツに着目しました。もともとは白のコットンドリルで作られているのですが、英国らしく2インプリーツ仕様で、シルエットは太すぎず細すぎずの微テーパード。ドレス感もスポーティ感も兼備したバランスが絶妙で、これをグレーウール素材に置き換えて細部をアレンジしたら、今の時代にちょうどいいパンツができるのではと思い立ちました。一見クラシックに見えますが、もとがミリタリーパンツだけにビジネスだけでなく、カジュアル使いにも無理なく対応できるのがポイントです。何でも合わせやすい一番ベーシックなパンツです。好評いただき今ではコットンなど素材の種類も増えていますが、英国っぽい生地を選んでいるのがポイントです。ベルトループモデルも展開しています」Q. オフィサーパンツのこだわりは?
A.「モチーフとしたオフィサーパンツはミリタリーものゆえ簡素な作りでしたが、『ポーツマス』は上質さを追求するため、本格的ドレスパンツの仕立てでつくりました。大きな特徴のひとつが、ウエスト内側の構造。マーベルトと呼ばれる内布を取り付け、さらにプリーツを入れた高級ドレスパンツ仕立てを採用しています。これにより、かがんだときにタックインしたシャツがはみ出しにくくなったり、可動性がアップして着用感がよくなったりするメリットが生まれます。ウエストバンドの内部には芯地も仕込んでいるため、腰周りへ立体的にフィットし、見た目の美しさにも貢献してくれます。ワタリにゆとりをもたせつつ、裾はほんの少しだけテーパードさせています。ありそうでないシルエットで、ジャケットからTシャツまで幅広く合わせられます」Q. グルカショーツ「ホワイトホール」について
A.「1980年代に英国軍で採用されていたグルカショーツに着目しました。グルカショーツといえば、ウエストバンドから伸びたストラップをフロントでクロスさせて留めるデザインで知られていますが、そのタイプはアイコニックである一方、脱ぎ穿きが面倒だったり見た目に独特なクセがあったりして、穿きやすさという面では少々難あり。そこであえて、シンプルなウエストデザインの’80年代仕様を採用しました。グルカ特有のヘリテージ感が薫りつつ、ショーツ初心者の方も挑戦しやすいアイテムになっていると思います。原型はかなりたっぷりとしたシルエットで、裾が膝下まであるロング丈になっています。対してブリティッシュメイドのグルカショーツは、裾に向かって広がるボリューム感は踏襲しつつ、全体的に程よくすっきりとしたバランスに設定。丈も膝上に裾がくるようモディファイしました」Q. グルカショーツのこだわりは?
A.「原型の8タックといった特徴を残しつつ、着脱しやすく、合わせやすいボリューム感に調整しました。普通、シルエットを現代的にスリム化するとお尻周りが薄くなってしまい、横から見たときにどこか物足りない印象になってしまうのですが、後ろ側のプリーツによってその問題を解消しました。ダボつかず、それでいてボリューム感のある絶妙な塩梅だと思います。トップスをタックインしたときの見え方も大変美しいですね。それから、裾幅は原型に従ってある程度太さを残していますが、脚を包み込むような形でほんの少しだけ内側にカーブするようなシルエットに設定しています。これによって、ボリュームがあってもダボついて見えず、大人っぽい佇まいになります」「原型はウエストバンドの上にアジャスターを縫い付けた簡素な仕立てでしたが、『ホワイトホール』はウエストバンドの中に潜り込む形としました。英国のドレスパンツなどにも採用される、高級感ある作り方です。また、原型はアジャスターを前側に引っ張って調節する設計でしたが、現在の主流に合わせて後ろに引っ張る形に変更しました。原型に比べてスムーズな調整が可能になっています」
Q. ドレスワイドパンツ「セントアイヴス」について
A.「上質な素材で大人が穿けるワイドパンツ。すでにあるオフィサーパンツがベーシックなシルエットのパンツなのでそれに対してもう少しファッション寄りのものをつくりたいという想いで開発したパンツです。程よいカジュアル感やリラックスした優雅な印象にしています」Q. ドレスワイドパンツのこだわり
A.「まず、こだわったのは、シルエット。イメージは、オフィサーパンツのテーパードを緩やかにしたシルエット。狙ったのはワイドとストレートの中間のバランス。裾幅に関しても、ワイド感はありつつボリュームが出過ぎないように調整しました。また、ワイドパンツに関してはアウトタックにした方が理想的なラインが出せるのでアウトタックの1プリーツにして必然的にオフィサーパンツとキャラクターを変えています。デザインとして一番のポイントはベルトループ。’60年代の英国軍No.2 ドレスパンツをベースにしつつ、特徴的なベルトループのデザインを活かし、ベルトループの数は6本に増やしています」Q. 工場とモノづくりの関係性
A.「パンツづくりにおいて工場はとても重要です。ブリティッシュメイドではミリタリーをルーツに持つものをドレスアップしていくことが多いのでドレスパンツを上手につくれる工場と相性が良いと感じていますが、そういった工場は少ないです」「さらに王道のドレスパンツではなく、ドレス仕立てを取り入れつつもカジュアル要素も残すという難解な部分がありますので、そういったことに対応していただける技術力の高い工場となるとさらに絞られます。オフィサーパンツの3㎜玉縁、グルカショーツのサイドアジャスター、ドレスワイドパンツのベルトループなどなど、こういった特殊な仕様も対応いただける長野アルプスさんにはとても感謝しています。ステッチや細かいディティールも上手く、完成したパンツは凄く奇麗です」
Q. ブリティッシュメイドのパンツを端的に表すとどういったものでしょうか?
A.「最高のベーシックパンツだと思います」パンツ製作の裏側はこちら
■ 四方章敬さん
■ BRITISH MADE ORIGINAL WEAR COLLECTION