「茶」か「黒」か。革靴を選ぶ際に多くの人がふと立ち止まる色選び。どちらも対応力が高く優れた選択肢でありながら、経年変化を経て生まれる個性は異なります。革靴の色選びは一瞬の判断でなく、自分のライフスタイルや着用シーンに寄り添って長い目で選ぶべきもの。そこで今回は、履き込んだ先で出会える「エイジング」という視点から、それぞれの色の魅力をお届けします。
01|茶靴を育てる
自分好みのニュアンスへと導ける柔軟性
モカ、エスプレッソ、バーガンディなど、色の深みや濃淡、赤みにより多様なカラーが存在する「茶靴」。黒に比べて経年変化が分かりやすく、大切に履き込まれた風合いはぐっと洒脱な印象を与えます。また、元の色味から自分好みの濃淡やニュアンスへと変化させながら育てられるのも茶靴ならではの醍醐味です。◆ 茶靴のエイジング
半年間、週3日履き込んだ一足。手入れは二ヶ月に一回のペースでニュートラルのクリームを塗布。元の濃淡を生かしたシックな表情に。 あまり手入れをせずにガシガシ履き続けたという一足。元のカラーよりも、全体的に赤みのある濃いブラウンへ育てており、コバのフェード感と相まってより重厚感を感じさせる顔つきに。
同じモデルでも、着用歴や履き方で表情は大きく異なります。こちらはトゥ部分の光沢感を強めた一足ながら、アッパーに味のある濃淡が生まれており、アンティークのような貫禄のある顔つきに。
月に1回のペースで履き込み、3ヶ月に一度手入れをしているという一足。ニュートラルクリームでケアすることで、やわらかな色合いに育っているのが特長。全体的に光沢感が生まれているのもポイントです。
パンチドキャップトゥのデザインを生かし、トゥ部分のブローグを強調。バンプ部分に比べて光沢感を出すことで、ドレッシーな雰囲気に。月に一度、ブラウン系のクリームを塗り込み色の深みを増しています。
月に2回程度のペースで履き込まれたタッセルローファー。メンテナンスは、アッパーのカラーに近いブラウン系のクリームで、3ヶ月に一度。元のカラーより深みが増し、味のある表情に。
グレインカーフの雰囲気を存分に味わうことができるミリタリーブーツ「ペナイン」。ブーツならではのレザーのヤレ感が味を感じさせます。ニュートラルのクリームにより、自然な色ムラ感が出ているのも魅力。
29年間、週に数回、大切に履き続けているという貴重な一足。ナチュラルカラーのクリームで月に一度手入れを行うことで、革の状態を良好にキープ。歴史を感じさせる佇まいと美しさがこの靴の上質さを物語っています。
月に一度、バーガンディのクリームを塗布し、さらに二週に一度、ブラックのワックスで磨き上げるという丁寧なケアで育てられた一足。新品時よりも濃淡が強まりアンティークのような美しい佇まいに。
02|黒靴を育てる
より深く、艶やかな風格を刻むブラック
スマートで品のある印象から、冠婚葬祭などでも使用される「ブラック」は革靴の王道とも言える色。黒靴は履き込むほどに、革の表面に凹凸が生まれ奥行きのある色合いに育っていきます。さらに手入れにより光沢を増した艶やかな色合いは、大人の足元をより一層魅力的に見せてくれます。◆ 黒靴のエイジング
カジュアルなコインローファーを、上品な顔つきに育てあげた個性的な一足。月に4〜5回のペースで履き込み、月に一度ブラックカラーのクリームでケア。しなやかな光沢感と、深く重厚なブラックカラーが魅力的です。 ドレッシーなタッセルローファーを、さらに上品に育てあげた一足。週2回のペースで履き込み、月に一度ブラックカラーのクリームを塗布することで深みのある黒に。また、全体に強くポリッシュをかけて光沢感を演出。
着用歴:6年
ASTWELL *現在取り扱いなし/ Col. BLACK
カーフレザー
半年に1度、フォーマルなシーンで着用。履いた際にきちんとケアすることで、歳月を感じさせないほど美しい状態をキープ。ニュートラルクリームを塗布することで育った自然な光沢感が、洒脱な印象を醸し出しています。 ASTWELL *現在取り扱いなし/ Col. BLACK
カーフレザー
着用歴:10年
Oxford Brogue *現在取り扱いなし/ Col. BLACK
カーフレザー
10年間愛用されているという、内羽根式のウイングチップシューズ。長年履き込むことで光沢感が生まれ、随所にブローグがあしらわれたトラディショナルなデザインをより美しく、重厚な雰囲気に見せています。 Oxford Brogue *現在取り扱いなし/ Col. BLACK
カーフレザー
ミリタリーシューズながら、靴紐をドレスシューズに使われる平紐に替え、トゥに薄くポリッシュをかけることで上品かつ個性的な表情に。手入れは、3ヶ月に一度ブラックのクリームを塗布。
レースアップブーツらしいレザーのタフな風合いが個性を感じさせる一足。 1年と愛用歴は浅いものの、定期的にニュートラルクリームを塗布して磨くことで、グレインカーフの表面に自然な光沢が生まれています。
季節を問わず、週1ペースで履き続けているという一足。革のシワやシボの伸びなど、随所に経年変化がありながらも全体的に光沢があり美しい状態を保っています。靴紐をオリーブグレーの平紐に替えることで軽やかな印象に。
英国靴を育てるということ
ジョセフ チーニー
英国靴を育てるということ。それは単なるファッションとしての選択だけではなく、自分自身がどうありたいかという姿勢の選択とも言えるかもしれません。