スタイリスト 四方章敬さんに監修いただいたJOSEPH CHEANEY(ジョセフ チーニー)のBRITISH MADE(ブリティッシュメイド)別注モデルが発売。今回はこちらの別注モデルの開発秘話をお届けいたします。
別注のテーマ
「ジョセフ チーニーの別注モデルのお話を頂いた際にまず頭に思い浮かんだのはクレープソールのスエードシューズでした。2017年頃より、ビジネスシーンでスニーカー通勤が推奨され始めて、コロナ化でさらに革靴を履く機会が減った方もきっと多いですよね。そういった時代背景の中で外出する機会が増えた現在でもいきなりアッパーはカーフ、ソールはレザー、そして内羽根式といった本格的な革靴を履くことに抵抗ある方も多いのではと感じていました。私自身、ここ数年の足元を思い返してみるとクレープソールのスエードシューズを履く機会がとても多かったです。その理由は幅広いスタイリングに合わせやすく、履き心地も快適だからです」
「個人的に現在市場にあるクレープソールのスエードシューズはポテッとしたシルエットのものが多く感じています。私の感覚ではカジュアルには使いやすいですが、セットアップなど少しドレス要素のあるスタイリングだと足元にボリュームが出すぎてしまうなと感じることもありますので、昔の英国製のクラークスのようなシュッとしたラストのものでセットアップやテーパードしているトラウザーズにも合わせやすいシューズを作れたら良いなと思っています」(四方さん)
Point 1|デザイン
「スエードのクレープソールですとチャッカブーツが定番の形としてあるのでそことも差別化を図りたいです。チャッカブーツよりも、もう一歩ドレス寄りの提案をすることで合わせるスタイリングの幅が広がると思います。また、履きやすさを考慮するとブーツより短靴にしたいですね。ローファーも良いですが、以前よりも多くのブランドでスエードローファーを展開している印象もありますし、クレープソールとの相性やフィッティング面を考慮するとレースアップの方が良いかなと。総合的に考えると外羽根のプレーントゥが良いと思います。この“ALAN(写真中央)”というモデルをベースサンプルとして進めていきましょう」(四方さん)
Point 2|ラスト(木型)
「ラスト選びは革靴における醍醐味の一つですよね。本格的なドレスシューズであれば細身でチゼルやセミスクエアトゥのラストも良いですが、今回は合わせやすさを重視していますのでベーシックな丸みのあるトゥでドレスとカジュアルの中間的なボリュームのラストを選びたいです。そうなると、ジョセフ チーニーのドレスの定番ラストである125ラストとカジュアルの定番ラストである4436ラストの中間的なボリュームで、さらに癖がなく奇麗な丸みのトゥシェイプが特徴の175ラストが今回のモデルにマッチすると思います」(四方さん)
Point 3|アッパーレザー
「素材はスエードにしましょう。柔らかくて履き心地が良いだけでなく、スエードの足元はスタイリングに抜け感を生んでくれるので使い勝手が良く、ワードローブにあると重宝します。また、クレープソールとの相性も良いですよね。今回のジョセフ チーニーの別注モデルもブリティッシュメイドのオリジナルウェアと同様にありそうでないものにしたいのでスエードの色はブラックにします。茶やベージュのスエードとクレープソールの組み合わせは多いですが、黒スエードとクレープソールの組み合わせは探してみると案外ないんですよ。色は黒で締めるけど、素材は抜け感があるスエードの組み合わせがスタイリングに程よい変化を生んでくれると思います」(四方さん)
Point 4|ソール
「今回のシューズは“スニーカー以上、ドレスシューズ未満”というポジションになればと良いと考えていますのでソールに関してはスニーカーに近い、柔らかい履き心地にするためにダブルクレープソールが良いかなと。ただし、コットンスーツなどにも合わせられる守備範囲の広いシューズにしたいので、コバ塗りしたクレープソールが良いです。チャーチのライダーがそうなっていますよね。クレープソールはコバをウェルトと同じ色に塗るだけでもガラッと印象が変わり、大人の上品さが生まれますのでリネンやコットンのセットアップにもしっかりハマると思います」(四方さん)
Point 5|ディテール
「ディテールで全体の印象が左右されることもありますので慎重に詰めていきたいと思います。まず気になったのはハトメ周りですね。ベースサンプルの“ALAN”は5アイレットですが、こちらを4アイレットに変更しましょう。ドレスシューズは一般的に5もしくは6アイレットのものが多いので、4アイレットにすることで少しだけカジュアルにします。5アイレットだとデニム合わせた際に少し気になりそうですし、3アイレットだと逆にグレートラウザーズの際に気になりそうで、4アイレットがベストバランスかと思います。単純に内ハトメを外ハトメに変えるだけでカジュアルな印象になりますが、それではカジュアルになりすぎてしまう気がしますし、あくまでベースの考え方は“ドレスシューズをカジュアルダウン”ですので内ハトメの4アイレットが丁度良いかと思います」(四方さん)
「最後にもう一点こだわりたいポイントがあります。コバ周りです。トゥシェイプ同様にコバやソール周りのボリュームがありすぎると一気にカジュアルな印象になりますので、ここはバランスよく調整していきたいと思います。ダブルクレープソールを選んでおり、ソールにややボリュームがありますので、コバのボリュームは落とす方向で組み立てたいです」
「まず、“ALAN”のサンプルはスプリットウェルトですが、通常のフラットウェルトに変更、そしてコバのウィーリングは無しにして、張り出しはステッチギリギリまで削るデッドクローズでお願いします。ステッチの色もアッパーやウェルトに合わせてブラックが良いですね」(四方さん)
完成したのがこちら
ALAN CR ¥93,500(JOSEPH CHEANEY)
ドレスとカジュアルの垣根を越えたありそうでないレザーシューズが完成しました。スエードとクレープソールの組み合わせが快適性と程よくクラシックで安心感のある印象を与えてくれます。また、ブラックにまとめてコバのハリを極力抑えることとスエードの抜け感が相まって今の時代のドレス、カジュアルの両スタイルにハマる仕上がりとなっています。
完成したサンプルを履いてみて四方さんよりひと言
「絶妙なバランスで見え感が凄く良いですね。狙い通りのレザーシューズを作ることができて一安心です。また、履き心地が圧倒的に良いですね!ここは予想を超えてきました。さすがジョセフ チーニーですね。作りが良く、素材のクオリティが高くないとこういった履き心地が生み出せないのでスタイリングの側面だけでなく、履き心地の側面でも是非ワードローブに加えて頂きたい一足です」(四方さん)
開発秘話いかがでしたでしょうか。こちらのジョセフ チーニー別注モデル発売予定日の2月2日(金)には四方さんによるスタイリングコンテンツも公開予定です。こちらも是非、お楽しみください。