各ジャンルで活躍する3名の著名人とグレンロイヤルのアイテムを共同開発する企画がスタートしました。今回は大阪の“THE WAY THING GO(ザ ウェイ シングス ゴー)”と靴修理専門店“ユニオンワークス”の1号店である渋谷店“TWTG(THE WAY THINGS GO)×UNION WORKS”のオーナー兼靴磨き職人の石見豪さんにインタビュー。別注のコンセプトを含めた制作裏話をご紹介します。
Meeting Day 01.
ー今回はよろしくお願いします。まず始めに、グレンロイヤルの第1印象を聞かせてください。
「グレンロイヤルといえば、やはりブライドルレザー御三家として誰でも知っている有名な英国ブランドだと認識していました。英国製品にはシンプルなデザインでもカジュアル過ぎず、威厳を感じさせてくれるような上品さがあります。グレンロイヤルも同様に由緒ある英国としての『箔』がある反面、そのバランス感覚が魅力的だと思っています。実際に私も“3 COMPARTMENT BRIEF CASE”を勝負鞄として愛用しています。そんな時にブリティッシュメイドとの別注企画があると聞いて、作ることがとても好きな身としてぜひやってみたいと惹かれました。」 THE WAY THING GOのオーナー兼靴磨き職人の石見豪さん。10年間のサラリーマン生活を経て、2012年9月から出張のみの靴磨きサービスを開始し、2015年に大阪の登録有形文化財である船場ビルディングに靴磨き専門店『THE WAY THINGS GO(ザ ウェイ シングス ゴー)』をオープン。2018年1月、銀座三越店で初開催となった『靴磨き日本選手権大会』で優勝。2019年1月には靴修理専門店ユニオンワークスの1号店である渋谷店を『TWTG(The Way Things Go)×UNION WORKS』として、リニューアル・オープン。
ー以前からご愛用いただいているグレンロイヤルですが、今回はどういったものを作る予定ですか?
「私は仕事中スーツを着ることが多く、お店にお越し頂くお客様もスーツスタイルで働かれている方が多いです。しかし、世の中にはジャケットの内ポケットに入れてスマートに持ち歩ける財布が少ないのが実情です。また、お金が逃げる(金運が下がる)ということでお札を折りたくない方も多くいらっしゃいます。そのような背景もあり、見た目もスマートで使いやすく、スーツの内ポケットに入れてもシルエットを崩さない長財布が作れたら理想です。それでいて、アイテムを持つ人の洗練された雰囲気を上げてくれるようなアイテムに仕上がれば良いなと思います。」 渋谷にある『TWTG(The Way Things Go)×UNION WORKS』ではジョセフ チーニーやトリッカーズといった英国靴から、石見さん自身のオリジナルブランド“KINKOU”などシューケアグッズも販売。
ー具体的な形のイメージをお聞かせください。
「1つは極力薄さにこだわった長財布です。私は靴磨き職人として所作の美しさという部分を普段から意識しています。今回作る長財布に関しても同様に会計時もたつかず、サッとお札やカードが取り出せて支払いがスムーズに行なえる仕様にしたいと考えています。もう1つはシンプルな小銭入れです。長財布とセットで使用してもらえるよう、同様にスリムなサイズ感、そして使いやすさが備わるよう目指します。」ー今回のアイテムはどんな方に持ってもらいたいですか?
「普段からジャケットを着用するような方に手にしてもらえれば良いですね。スーツスタイルと合うようにシンプルさを重視したいので、機能面に合わせてカラーも落ち着いたブラックの色味で統一し、よりデザインにおいても使いやすさを突き詰めたいと思います。」Meeting Day 02.
初回打ち合わせの後日、製作されたサンプルを持って再度インタビューへ伺いました。グレンロイヤルから今回上がってきたファーストサンプルを並べて比較してみました。 上がファーストサンプル、下がアーカイブモデル。カードスロットなどを斜めにカッティングするよう細部を変更。
長財布はアーカイブモデルの良さを活かしつつ、薄さを重視するためにレザーを1枚省略し、さらにカードスロットとお札入れの取り出し口は斜めのカッティングを採用しています。とことん上品になるようにステッチは細いピッチで縫い、コバ周りをターンエッジ(内巻き)処理で仕上げています。ほんの小さな変更点でコンパクトさ、取り出しやすさといった機能面も大きくアップデートしながら一層の高級感を放っています。そして、お札の出し入れがスムーズとなることで美しい所作が実現できた使用シーンまでも洗練された、靴磨き職人である石見さんらしい逸品です。レザーのカラーもブラックのみの展開で、シンプルさに拘っています。
左がアーカイブモデル、右がファーストサンプル。ポケットを取り除くことで更に薄さを洗練。取り出し口も丸型に変更し、使いやすさを考慮。
コインケースは内側の取り出し口を大きくするよう仕様変更されています。また、あえてポケットを取り除くことで、シンプルさと薄さの両面を追求した仕上がりに。長財布とセットで持つことを提案したシンプルなコインケースの変更点については、ファーストサンプルの段階でほぼこの2点。そんなミニマムな修正を施しながらも、使いやすさがさらに向上しました。
「率直に格好良いと思いました。」
ーサンプルをご覧になって、いかがでしょう?
「バランスがとても良いです。細部にまで自分のこだわりが全て投影されています。シンプルでいて高級感がある、そんな英国製品らしい仕上がりで、率直に格好良いと思いました。特に長財布はほとんどパーフェクトです。薄マチなのに収納力も抜群で、こんなに収納力があるんだと驚きました。日本円でもしっかりと対応してくれます。そしてスロットのカッティングを斜めにしたことも正解でした。開いた時の視認性が高く、滑りも良くて本当に取り出しやすいし所作の面でも満点ですね。これは…売れますよ。(笑) コインケースも同様に収納力があり、手に収まりやすいサイズ感なので手軽に持ち歩けます。これならセットで使いやすいですね。どちらもしっかり考えられた“意味のあるデザイン”に出来て良かったです。」
ー具体的に何か改善点はありますか?
「長財布に関しては一番下のカードスロットの深さだけ変えられませんか?今の仕様だと一番下だけカードが出る面積が他と違うので…深さを揃えて全体的に収納した時の見え方を統一したいです。それ以外は何も無いくらい気に入っています。」「コインケースは取り出し口が可愛すぎるところが気になっています。(笑) なので耳のような部分を無くすよう、楕円形のような形状に変更したいです。それなら使いやすさを考慮した丸みは活かせつつ、よりシンプルさに磨きが掛かると思います。また、ライニングがないとせっかくのブライドルレザーなのに少々安く見えてしまうかもしれないので、黒のレザーライニングに変更すればより高級感を加えられるのでは?と思いました。突き詰めてシンプルなアイテムなので、ライニングにレザーを採用して見え方も美しい仕上がりになれば良いですね。」
ー他に何か追加したい点はありますか?
「できれば型押し(エンボス加工)のブライドルレザーのタイプも作りたいです。今回の別注モデルはとてもシンプルなアイテムなので、人によっては通常のブライドルレザーだと、あまりに普通に見えてしまう人もいるのでは?と気になりました。そういった時に、選択肢の1つとして型押しのモデルもあれば、もう少し飾りが欲しいという方には良いのではと思います。それとブライドルレザーでエンボスって見たことないんですよ。調べてみても『ブライドルレザーに型押しは無い。』と出てくることがほとんどなので一般的にも認知されていないのでは?そんな時にブリティッシュメイドでブライドルレザーに型押し加工を施したレイクランドコレクションが展開されているのを見て、ぜひやりたいなと。単純にシボ革のブライドルレザーは珍しいし、高級感もグッと出まるので自慢できるような仕上がりになるのではと思っています。」「また、ロゴも素押しから金に出来ますか?単純に黒と金の組み合わせが好きなんですよ。自社のブランド“KINKOU”のブラシでもその組み合わせ採用しています。今回のアイテムはロゴが内側に来るので、あえて見えないところ金のロゴのような適度な装飾感を施すことでイギリスらしいアンダーステイトメントさも意識したいです。」
次回は完成された“スタイリッシュに使える薄マチ財布”をご覧頂く回となります。すでに完成形に近い形が石見さんによってどのように磨き上がられたのでしょうか?乞うご期待ください。
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