メンズファッションの数少ないアクセサリーであるベルト。最近ではベルトレスで穿けるトラウザーズが注目を浴びたり、オンオフで使える1本をどんなシーンでも着回すことが多くなり、ベルトは後回しにされがちです。しかし、ブリティッシュメイド 銀座店の中川店長に話を聞くと、「ベルトはその日の着こなしを変える要素」だといいます。「シーンごとにベストマッチのベルトを持っておくことで、手持ちのファッションの着こなしが広がりますよ!」
中川店長のそんな一言から始まったベルト談議。今回は、ベルトというアクセサリーの魅力を改めて見直し、ベルトの楽しい取り入れ方をご提案します。
中川店長のそんな一言から始まったベルト談議。今回は、ベルトというアクセサリーの魅力を改めて見直し、ベルトの楽しい取り入れ方をご提案します。
トレンドはベルトレスが主流!?
ー ベルトレスのトラウザーズというのはいつ頃から流行しているんですか。
中川:僕もはっきりとは覚えていないんですが、気づいたらSNSでインフルエンサーの人たちがベルトレスのトラウザーズを着始めていた印象です。ただ、その兆候は GINZA SIX が開業した2017年頃にはあって、グルカショーツのようにパンツにベルトが付いているものを穿く人が増えてきたのが5、6年前だったように記憶しています。その流れで、普通のスラックスとして穿けるベルトレスのトラウザーズが増えたように思います。
ー ベルトレスのトラウザーズというのは、本来どのようなシーンで穿かれるアイテムなのですか。
中川:畏まったシーンのときですね。ベルトを使わずに、サイズがぴったりと合った仕立てのものを穿かないといけません。よりドレスアップしたいときに選ばれるパンツだと思います。
実際、センタークリース入りの折り目のついたパンツに使われることが多く、最近ではビジネススタイルでも着用されるようになりました。その流れでベルトをしないスタイルが増え、ジーンズでもあえてベルトをせずに穿く人がいるくらい、ベルトへの興味が薄くなっているように感じます。
ー ベルトレスが広まりを見せるなか、ベルトは必要のないアイテムになってしまうのでしょうか。
中川:そんなことはありませんよ(笑)流行に敏感な人たちは、シーンによって使い分けることがお洒落だという感覚になっていると思います。一時期は「ベルトレスのパンツを穿くこと=おしゃれ」みたいな風潮もありましたが、最近では「使い分け」がポイントになっていて、ベルト使いに幅がある人ほど、お洒落で洗練されている印象を与えます。
「着用するのに相応しい場面」はアイテムの“ルーツ”が教えてくれる
ー 中川さんは「メンズファッションはルールにのっとって選ぶべき」とよく言われますが、それはなぜですか。
中川:大昔だと、洋服はただ身を守るためのものに過ぎなかったと思いますが、皆が着るようになってからは、作業着やユニフォームが登場したり、高貴な方々が着飾るための装飾品が作られたりして、それぞれに生まれた背景・理由が違ってくるようになりました。そうした洋服がもつルーツこそ、私たちに「どういうシーンで着用すべきものなのか」といったことを教えてくれると思います。
ー なるほど。アイテムが生まれた背景を知って、相応しいシーンで着用しようということなんですね。
中川:そうですね。特に英国ファッションは、相手を気遣って一つ一つのアイテムを選ぶことを大切にしています。社交場に集まるなら一定の基準で洋服を選んで集まりましょうよとか。結婚式なら、結婚する2人を引き立てるために、彼らより地味な格好にしましょうよとか。
ー 最近では、ファストファッションの流行で、ルールやルーツを知らないまま、外し方だけを最初に覚える人も多いと思います。ベルトにもルールやルーツといったものはあるのでしょうか。
中川:ルールでいくと、フォーマルなシーンにはあります。タキシードやモーニングを着用した場合などは基本的にはサスペンダーを使用しますが、ダークスーツ(略礼装)の場合はブラックでシルバーの金具というくらいシンプルなものが理想です。また、ルールと同じくらい大切なのがルーツかなと思います。どういう人たちが使ってきたアイテムか考えながらスタイリングを決めていくと、全体に統一感が生まれます。そのスタイリングをどういうシーンで着たらいいかというイメージにもつながりやすいと思います。
ー お客さまはきっと全部のモノのルーツを知らないと思います。中川さんは洋服のルーツをどうやって知りましたか。
中川:着方のルールやルーツに関する書籍があって、10代後半から読んで勉強したんですが、読むだけでは分からなかったり、頭では理解できても実感がともなわないこともありました。当時は、先輩から「おい中川、こういう時にこのアイテムは合わせないぞ」と言われて初めて、そういう視点があることに気づきました。人にどう見られているかとか、先輩に教えてもらうとか、そういう人とのつながりのなかで勉強していくといいかなと思います。
ー ファストファッションであっても、何かのルーツには当てはまります。ミリタリー、カレッジ、乗馬文化に由来しているなど……。若い人たちは、そうしたルーツを気にせず着るという自由さや軽快さがあります。その一方で、「このアイテムのルーツは何だろう」、「今日はこんな気分で選ぼう」と考えることができたら、日々のコーディネートがもっと楽しくなりそうですね!
中川:そうですね。知らず知らずに外してしまっていることでも、「今、自分は外して着ているんだな」と認識できるようになると、ファッションがますます楽しくなる気がします。何も知らずにアイテムを合わせるのも楽しいかもしれませんが、理由を知っているとスタイリングに奥行きや深みが出てきますね。
ー 本人がそういうことを考えて組んだスタイリングで今日を過ごしているんだなと思うと、大人の男性として知的だなと感じます。
中川:はい。そう感じてもらえるといいかなと。シーンやスタイルに合わせてベルトを使い分けられるような人は、大抵のケースで洒落者でしょう。
グレンロイヤルの定番ベルト3つのルーツを知ろう
ー アイテムのルーツを知り、シーンに合わせて使い分けるためには手持ちのバリエーションを見直さないといけませんね。ブリティッシュメイドではどんなベルトを取り扱っていますか。
中川:ブリティッシュメイドでは、グレンロイヤルのベルトを取り扱っています。グレンロイヤルには定番モデルが3つありますので、今回はこの3つを紹介していきたいと思います。
GLENROYAL - ハーネスベルト ¥25,300(税込)
中川:まず、ハーネスベルトは一番ドレスアップに使用できるベルトです。バックル部分は適度に柔らかな丸みを帯びたスクエア型で、ベルト穴もシンプルな丸だったりと、どんなスーツスタイルに組み込んでも何の違和感もありません。自然なドレスアップができるベルトなので、一番汎用性が高いのではないかと思います。
GLENROYAL - スティラップベルト ¥22,000(税込)
中川:スティラップベルトは、乗馬で使われている馬具の部品をバックルに採用しています。また、ティアドロップ型のベルト穴は1〜5までナンバリングされています。これは馬具である鐙(あぶみ)の高さを調節するために使用されたディテールの名残り。乗馬の雰囲気のある着こなしに使っていただけると面白いかなと思います。
GLENROYAL - ファイアーマンバックルベルト ¥24,200(税込)
中川:ファイアーマンバックルベルトは、名前のとおり消防士が使っていたバックルを採用したベルトなので、働く男の、ワークマンのベルトだと思います。ドレスアップというよりはユニフォーム的なニュアンスでお使いいただくとハマるかなと。スーツスタイルでも、コットン地やコーデュロイなど、ドレスアップするスーツではなく、カジュアル感のある素材で動きやすいものに合わせていただくと似合うと思います。
中川店長が提案するベルトのコーディネート 3選
都会的なビジネススタイル
コーデのポイント:ハーネスベルトは一番シンプルでオーソドックスなベルトなので、洗練された雰囲気のあるスタイルで組みました。足もとはもちろん紐靴でもいいですが、あえてタッセルローファーを合わせることで軽快な印象に。乗馬ルーツを意識したアクティブスタイル
コーデのポイント:スティラップベルトが乗馬ルーツのアイテムということで、イギリス人が乗馬をするとき、どんなものを着るか考えながら組みました。キルティングジャケットは馬に着せていたホースブランケットがルーツなので、このテーマにぴったり。足もともブーツにすることで、全体をスポーティなスタイルに。ファイアーマンから着想を得たワークスタイル
コーデのポイント:このゲームブレザーのように、カジュアルな赴きで、がしがし着倒してナンボなジャケットスーツに、ファイアーマンバックルベルトのような堅牢な仕立てのものはよく合います。足もとはあえてミリタリーテイストの革靴で外してみました。1つ1つが男らしい雰囲気のアイテムでまとまっています。 中川:銀座店には、365日ベルトがちがうスタッフがいるんですよ!ちょっと話を盛り過ぎたかな(笑)永田さんっていうんですけれど、銀座店にはそういうお洒落を楽しむスタッフがおりますので、ぜひ遊びにきてください!
BRITISH MADE 銀座店
東京都中央区銀座6丁目10番1号 GINZA SIX 5F
TEL:03-6263-9955
営業時間:10:30-20:30
銀座店 instagram:@britishmade_ginza
中川 instagram:@naka1127
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